しげとく和彦の国会論戦の会議録
平成26年6月18日 農林水産委員会
「絶滅危惧種のニホンウナギをどう守るか?」
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○坂本委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦です。
農林水産委員会では初めて質問をさせていただきます。関係各位の御理解、まことに感謝を申し上げます。
さて、去る六月十二日木曜日午前九時、国際自然保護連合、IUCNのレッドリストが公表されまして、ニホンウナギが絶滅危惧1B類として掲載されました。これは、近い将来における野生での絶滅の危険が高い種ということでございます。
私の地元愛知県西尾市は、一色ウナギで有名な地域でありまして、これは地域の重要な産品、ブランド品でございます。私自身も、地元議員としてはもちろんですが、多くの皆様方と同じく、ウナギを大好物とする一消費者の立場からも、この問題をきょうは取り上げさせていただきたいと思います。
まず初めに、ちょっとおさらいをいたしますと、この件につきまして、水産庁からは以下のとおりの説明がございました。IUCNレッドリストへの掲載は規制を伴うものではなく、ウナギ漁業及び養殖業に直接的に影響するものではないが、国際的にニホンウナギの資源保護を求める声が高まるものと考えている。また、レッドリスト掲載が直接的にワシントン条約附属書掲載に結びつくものではないが、検討の参考情報になると考えている。また、次回のワシントン条約の締約国会議は再来年、平成二十八年に開催します。早ければ来年、平成二十七年八月にも附属書掲載の提案がなされる可能性があるという指摘でございます。
ちなみに、附属書1は、商業的な輸出入は全面的に禁止、附属書2は、商業的な輸出入に輸出国の許可が必要ということでございますが、これも、種の存続を脅かさないことを輸出国の科学当局が証明した場合のみ許可ということでありますので、既に附属書2に掲載されているヨーロッパウナギにつきましては、EUは輸出許可書を発給していないので、実質的に輸出禁止という状況でございます。
こういう状況に至る前から、ここ数年、シラスウナギが国際的に採捕量が大幅に減っておりますので、ここ二年間、シラスウナギの池入れ量、私の地元では入れ貫という言い方をするんですが、この入れ貫が十六トン、十三トンと、それまでは二十トン台だったんですが、大幅に落ち込んでおります。それに伴いまして、仕入れ値も、一キロ当たり二百万円を超えるという状況でございました。ことしは少し落ちついてきたという状況でありますが、そこへ持ってきて、今回のレッドリストへの掲載という話でございます。
我が国は、国内養殖用のシラスウナギの六割は輸入でありますし、活鰻、かば焼き製品も五割以上輸入ということでありますので、ことしは土用うしの日は七月二十九日ということでございますが、近い将来、日本のウナギ業界、そして、うな丼、うな重、ひつまぶし、こういったものを愛する日本人の和食文化というのが壊滅的な打撃を受けることまで心配される状況になっております。
そこで、幾つかの観点から、この後質問をさせていただきたいと思います。
まず一つ目は、漁業管理による乱獲防止と言われる点でございます。
これは、よく指摘はされるんですが、本当に乱獲が主たる原因なのかどうかすら実は不明ということもあります。ただ、いずれにしても、こういう状況になった以上は、適切な管理をしていることをはっきりさせていかなければならないと思います。
そこで、前提として、その数値を管理しなきゃいけない。シラスウナギ採捕の尾数、トン数とか、仕入れ先、池入れ量など、こういった実態や数値の把握、管理、これを確実にした上で一定の枠を設けるということによって、過去にクロマグロの例もありましたけれども、ワシントン条約の附属書掲載というものを回避できるのではないかと考えますけれども、農水省の御見解はいかがでございましょうか。
ちょっと幾つかまとめてお伺いしたいんですが、その際、やはり日本のように、実際に食生活、食文化、食産業にウナギが欠かせないという状況であることは国際的に訴えていくべきことではないかと思います。ワシントン条約にどれほど有効かどうかはわかりませんけれども、そういった切実さも訴えていくべきだと思いますが、締約国の中にはウナギを実際に食する国というのが何カ国あるのか。さらには、今後、レッドリストそのものから外れる可能性というものはあるのかどうか。このあたりもあわせて御答弁いただけると幸いでございます。
○林国務大臣 まずは、委員もウナギが好物ということでございましたが、そのお話を聞いていて、随分前ですが、知事選の応援に駆けつけたときに、その後、地元でウナギをごちそうになったななんということを今思い出しておりました。
まさに今委員がおっしゃっていただいたように、ウナギを食する文化を有している国、これは正確にはなかなかわからないんですが、イギリス、フランス、インドネシア等々では、広く伝統的にウナギが食されてきているということでございます。また、スペインでは、例のシラスウナギをニンニクオリーブオイルいためにしたもの、これは大変おいしいんですが、こういう食べ方をしているところもある、こういうことでございます。
ニホンウナギの持続的利用を確保していくためには、資源管理の一層の推進が必要でありまして、国際的な資源管理対策として、東アジア地域による資源管理の枠組みの構築、これを我々が主導して取り組んでいかなければなりません。それから、国内においては、まさに、シラスウナギの採捕、親ウナギの漁業、ウナギ養殖業、これが三位一体となって資源管理を進めなければならない、こういうふうに思っておりまして、その一環として、シラスウナギの採捕量や池入れ量の把握の取り組みを強化しているところであります。
今後ですが、先般、衆議院で御可決をいただきました内水面振興法案、今、参議院の方に来ておりますので、これが成立をしますと、この規定を活用してウナギ養殖業の実態把握を行う、それから、ウナギ養殖生産量を制限する方向で国際的な協議が合意に達した場合には、内水面振興法案の許可制度を活用して資源管理を推進していく考えでございます。
こうした資源管理の取り組みについて、まさに冒頭申し上げましたように、ウナギを食する関係国、こういう人たちと協力をしながら、ワシントン条約に関係する国々の理解を得る努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
IUCNの仕組み上、ダウンリスティングは、レッドリスト掲載種の資源状態が実際に回復すれば可能、こういうことでありまして、これまでも、レッドリスト掲載種が絶滅危惧種から外れた例も実際にある、こういうことであります。
ニホンウナギについては、先ほど申し上げたように、資源管理を推進して、関係国の理解を得る努力、これをしっかりしていくことが大事だと考えております。
○重徳委員 お聞きするところによりますと、これまで、日本、中国、台湾、さらに、最近では韓国、フィリピンも参加する形で非公式協議といったものが続いているということでありますし、今後、今大臣が言われたような、さまざまな実態の把握、そして一定の制限というものに取り組んでいかれるということでもございますので、ぜひともこれはしっかりと、日本が特に消費量が多い国でありますので、リーダーシップを持って進めていっていただきたいと思います。
次に、海とか河川の環境改善の点でございます。
例えば、愛知県でいうと、川に上っていくシラスウナギを保護するために、その採捕する許可期間というものを、従来、十二月から四月までという期間だったんですが、これを少しずつ短縮し、少しでもシラスウナギを保護しようという思いでやっているところなんです。
ただ、当のシラスウナギが育っていく環境がなければ意味がありませんので、そういう意味で、乱獲ももちろん問題だと思うんですが、ウナギがすめる環境を守って回復するということも非常に重要なことではないかと思います。
現に、昔はこの辺の川でもウナギが釣れたんだなんということを聞いても、今はさっぱり、そんな情景は見たことがないというような地域もたくさんあります。ですから、コンクリート河岸とか河口堰というものは、人間社会にとっては防災対策上必要なことなんですが、ウナギとかその餌になる生物の生息場所が失われている、これはもう間違いない話でございます。
問題は、やはり縦割り行政なものですから、ウナギの問題というのは主に水産庁、農水省が担当だと思うんですが、河川管理とか改修とか、そういうものは国土交通省なものですから、国交省がどれほどウナギのことを気にかけていただけているかというのは、極めて不安でなりません。もっともっとウナギのことも考えて、川の保全というものをしていただきたいと思います。
ですから、既に恐らく取り組まれていると思いますが、堰が設けられているところでは魚道を整備するとか、いろいろな工夫をして、もっともっと取り組んでいただきたいと思うんですが、このあたり、国交省としてはいかがお考えでしょうか。
○土井大臣政務官 国土交通省といたしましては、河川が本来有している生物の生息、生育、繁殖環境等を重視いたしまして、その保全、創出をする多自然川づくりを全ての川づくりの基本といたしているところでございます。
具体的には、魚類の生息、生育の場となる空隙を確保するための石積みによる護岸の整備や、連続性を確保するための堰への魚道設置など、個別の箇所ごとの状況に応じた中で取り組みを行っております。
今後とも、ウナギを含めまして、多様な動植物の生息、生育、繁殖環境に配慮した多自然川づくりを進めることにより、良好な河川環境の保全、創出に努めてまいります。
○重徳委員 これは、公共事業の受けをよくするアリバイづくりみたいなことでは本当に困りますので、実効性がなきゃいけないと思います。
実際にウナギがどのぐらいすみやすい環境になっているのかということも、少し事務方でデータはないのかとお聞きしたところ、ろくなデータもないということで、そういったこともきちんとデータをとりながら、多自然川づくりの効果というものもはかっていっていただきたいと思います。全ての川づくりの基本だと今政務官がおっしゃっていただきましたので、本当にそういった点を大事にしていただきたいと思います。そういう意味で、省庁挙げて取り組むべき課題であろうと思っております。
次に、同じくウナギの保全という意味では、今度は、下りウナギと言われるんですが、産卵に川から海に出ていって、マリアナ海溝の辺まで行くんだというふうに言われておりますけれども、この下りウナギの漁獲についての質問をさせていただきます。
愛知県では、下りウナギの漁獲というのは、できるだけ自粛するようにという呼びかけを行っております。漁獲、とった場合にも、再放流をするようにというようなことを、自粛を促すというようなことをしておるわけなんですけれども、聞くところによりますと、県によっては、自粛なんというものではなくて、もっと厳しい取り組みをしているところもあるというふうに伺っております。
これも、下りウナギをとって生計を立てている方も現にお見えになると思いますので、何でもかんでも厳しくさえすればいいかというと、その辺もバランスは必要だと思うんです。愛知県は比較的緩い方だというふうに聞いておりますが、一体、他県でどのような取り組みをどうやって、今申し上げましたバランスをとりながら取り組んでおられるのか、御教示をお願いします。
○本川政府参考人 産卵に向かう親ウナギ、下りウナギの採捕制限につきましては、御指摘の愛知県については、漁獲の自粛、再放流について自主的に取り組んでいただいておるということでございますが、例えば、宮崎県、鹿児島県、熊本県及び高知県、こういったところでは、漁業法に基づく海区漁業調整委員会の指示でありますとか内水面漁場管理委員会の指示で、期間を定めて採捕を禁止しているといったような状況にあります。
例えば、宮崎県では、十月から十二月までの河川の内水面における全長二十五センチを超えるウナギの採捕を禁止する。それから、高知県では、高知県内の十月から翌年三月までの河川の内水面における全長二十一センチを超えるウナギの採捕を禁止する。それぞれの県の事情に応じて時期も違ってまいりますので、このような採捕制限を法律に基づいて行っておるといったようなところもございます。
その合意形成に当たりましては、ここのところ、私ども水産庁の職員も各県に赴いていろいろ説明をさせていただいたりしておりますし、海区漁業調整委員会とか内水面漁場管理委員会の決定に先立って、県職員が、関係する漁業協同組合とか漁業者を回って個別に説明して、制限措置によって影響を受ける漁業者を含む関係者の理解を得て、このような決定をしておるといったような背景がございます。
○重徳委員 ありがとうございます。
これからいろいろな取り組みが必要になってくると思いますが、関係者の合意形成にぜひとも国の力もおかりしたいと思います。
それから、また別の観点なんですが、ウナギの放流ということも、これは地元の一色うなぎ漁協なんかでは、放流を一生懸命やっています。特に、毎年十月には、ウナギ供養とウナギ放流祭という、地元を挙げたお祭りのようにやったりして、地元の総意として取り組んでいるところなんです。
ウナギの生態は、本当に謎めいております。養殖ウナギというのは、雄か雌かというと、ほとんど全部雄なんじゃないか、こういう話もありますし、放流した後、育っているうちに雌に性転換することもよくあるんだとか、この辺は生態がつかめておりませんので、明らかなデータがあるわけではないんですが、そういったいろいろな可能性、もちろん実体験に基づいた論拠に基づいて放流ということに取り組んでいるわけでございます。
愛知県には油ケ淵という、ちょうど河口に近いところの湖沼、湖がありまして、そこなんかはちょうど海水と真水がまざった汽水域になっているので、そういうところに放流をしてみたら、ウナギ自身が選んで一番適切なところで生育をして、その後、産卵へと向かうんじゃないかとか、いろいろな取り組みがなされていますが、どうも決定的な科学的根拠というか、やっていることが本当に正しいのかどうか、このあたりも、やっている皆さんも、どうなのかな、でも、多分正しいんだというようなぐあいで取り組んでいる面もあります。
このあたりは、水産庁としてはどのように、このウナギの放流ということについて、意義について捉えられていらっしゃいますでしょうか。
○小里大臣政務官 親ウナギの放流というものは、養殖場でシラスウナギを一定の大きさまで成長させたものを放流するわけでありますが、ウナギ養殖業者による放流、ウナギ漁業者による放流が行われているところであります。愛知県でも、ウナギ養殖業者において、鰻供給安定化事業を活用した取り組みをいただいていると承知をしております。
親ウナギになるまで養殖場で成長させますと、天然のウナギに比べて生存率が高くなるというデータがあるところでございまして、そういった意味から、親ウナギの放流は資源の増大に寄与するものと認識をしております。
ただ一方で、委員からも御指摘がございましたが、天然ウナギは雌の方が多いんですけれども、養殖ウナギはどういうことか圧倒的に雄が多いということでありますから、放流効果を高めるためには、雌の比率を高めるための養殖技術の開発が必要でありまして、そのための研究開発を進めているところであります。
○重徳委員 ありがとうございます。
本当に不思議なもので、技術的に雌をふやすという取り組みが今行われているという政務官の御答弁がございました。
いわゆる人工種苗の生産技術ということについて、関連して、今お手元にも資料をお配りしておりますけれども、つい昨年末になると思いますが、独立行政法人水産総合研究センターというところで、「大型水槽によるニホンウナギ仔魚の飼育が可能になりました!」というプレスリリースがあります。新しく開発した大型水槽で、人工的に生産したニホンウナギふ化仔魚から二百日齢の仔魚、レプトセファルス幼生というんですね、これを九百尾育てて、シラスウナギに変態するところまで育てることに成功した、これによりまして、ウナギ人工種苗の大量生産、完全養殖ウナギの安定生産への道が見えてきましたということでございます。
聞いたところによると、農林水産委員会としても、来月八日に三重県のこのセンターへ視察に伺われるというふうにお聞きしておりますけれども、この人工種苗の生産技術、ぜひとも推進をしていただきたいと思います。
そして、ウナギはかなり技術レベルとしても高度なところだと思うんですが、ウナギならずとも、例えば、浜名湖のアサリも人工的な取り組みをすることでふやしていこう、これも、浜名漁協さんが同じ独立行政法人水産総合研究センターと提携する形で人工種苗生産に取り組んでおられます。それから三重県でも、桑名市のハマグリも物すごく激減しまして、これへの取り組みも、赤須賀漁協が三重県水産研究所との協力のもと、種苗生産技術の実用に取り組んでいる。あとは、これも視察に行かれるようですが、三重県鳥羽市の浦村アサリ研究会というのがあります。
結局、本当に危機意識を持った、そして熱心な地元の漁協と、最先端の研究開発を行っている研究所、ここがしっかりと一致協力して、高度な研究成果というものを実用に結びつけていただきたいと思うんです。
最後に大臣から、今後のウナギの完全養殖技術の見通し、そして、これを熱望している地元漁協とぜひ一致協力して、地元ブランドを守り育てながら進めていただきたいと思うんですが、このあたりの御見解をよろしくお願いいたします。
○林国務大臣 今御紹介いただきましたように、シラスウナギの人工生産については、平成二十二年に水産総合研究センターが実験室レベルでの完全養殖には成功しておりました。今お話しいただいたように、平成二十五年に、新たに開発した大型水槽でシラスウナギの生産に成功したということでございます。
今後ですが、大量生産をやはり実現していかなければなりません。したがって、給餌システムを改良していく、それから飼育水の効率的な交換をする、こういうことをやっていく必要がありまして、本年度から、民間企業、それから大学、水産総合研究センター、水産庁の産学官の連携によりまして、幅広い知見の技術を結集した実証実験に取り組んでおるところでございます。
将来にわたってウナギを安定的に供給するためには、シラスウナギを人工的に大量生産することが最も重要であるということで、この早期実現に向けて努力をしてまいりたいと思っておりますし、その際、この開発された技術が外国に不正に流出しないように適切に対処しながら、官民の連携を図っていきたい、こういうふうに思っております。
○重徳委員 地元との協力についても、一言触れていただければと思うんです。
○林国務大臣 いろいろなところで一緒にやっていただいている方がたくさんいらっしゃると思いますので、地元の皆さんともしっかり連携しながら取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
○重徳委員 ありがとうございます。
大臣にも御縁あって名古屋で食していただいたウナギでございますので、またこれからも全国民が、うな丼、うな重、ひつまぶしを召し上がっていただけるように、農水省、国を挙げて取り組んでいただきたいと思います。
どうもありがとうございました。