H25.4.11 消費者問題に関する特別委員会
「国民目線の消費者行政を!」
========================================
○吉川委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 引き続き、日本維新の会、重徳和彦が質問させていただきます。
残りの時間で最大限質問をさせていただきたいと思いますが、まずは森大臣、私は二年ほど前の愛知県知事選挙で自民党愛知県連推薦という形で、その当時は森大臣にも大変応援をいただきまして、まことにありがとうございました。
人生いろいろあって、不条理なこともありますし、いろいろなことがございます。そういう中で、現在、野党の日本維新の会の一員でございますけれども、私は繰り返しいろいろな場で申し上げておるんですが、足を後ろに引っ張る野党ではなくて、政府をもっと前に引っ張っていく、そういう野党たりたい、そういう気持ちで今仕事をさせていただいております。
また、私はもともと総務省という役所で働いておりましたけれども、当時、私がいろいろな地域に転勤をさせていただいたときに、公務員としての仕事だけじゃなくて、例えば地域の町おこしに参画する、お祭りをみんなで立ち上げようとか、NPOを立ち上げようとか、交通問題に取り組もう、あるいは、おやじの会を結成して子供たちにいろいろなことを教えてやろうとか、いろいろなことの、一市民の立場から活動をしておりました。
そして、そういう中で非常に実感したのが、やはり役所の中から見た社会、あるいは役所の型にはめた社会というものは、かなり実社会とは違うということなんです。
わかりやすく言うと、先ほど大臣もおっしゃっていたような趣旨なんですけれども、例えば、農林水産省という役所がある、農林水産省から見ると農業者というのは農業者でしかないわけなんですけれども、しかし、農業をやっている方というのは、当然ながら生活者であって、家庭に帰れば、もしかしたら介護をしなきゃいけない親御さんがいるかもしれない、子育て中かもしれない、子供たちは子育てとともに教育だってやらなきゃいけない、そして、当然、買い物をすればそれは消費者でもあるということで、人間というのは本当に多面的なものなんですよね。
そういう中で、この消費者特別委員会は、まさに大臣が最初に言われたように、消費者であるけれども仕事の場では生産者でもあるということを、それを一つの消費者という切り口から捉えた日本においては初めての役所だということで、消費者庁が立ち上がったのは非常に画期的、歴史的なことであったと思うし、それだけに、これまでのほかの役所とは大きく違う立場からいろいろな局面に挑んでいただきたいという思いがございます。
滋賀県に野洲市という市がありまして、そこの市役所は、一言で言うとワンストップサービスということなんですけれども、実は、消費者問題ということを切り口に、その窓口から、縦割りを超えたいろいろな問題解決に当たっている。
つまり、消費者の問題、トラブルがあるんだ、契約トラブル、多重債務、こういったものを何とかしてほしいといって窓口に飛び込んできた一人の方が、実際にはほかにもいろいろな問題を抱えておられるということが往々にしてある。こういうケースに対して、普通の役所というのは、いろいろな課が縦割りにあって、そこに来たい人は来てちょうだい、自分の課と関係ない問題であれば、それはよその課に行ってくださいといってたらい回しにする、こういう風潮が、ともすると役所というのはあるんですね。
それに対しまして、野洲市のワンストップというのは非常にすぐれていまして、一つの問題を抱えているといって消費者窓口に飛び込んできた方が、実はよくよく聞いてみると、税金を滞納している、家賃も滞納せざるを得ない状態、あるいは、その背景としては、失業中で仕事がなかなか見つからないとか、何か障害があったり、病気だったり、家庭の問題があったり、人間はいろいろなことで困窮、困っておられる方というのはいるわけで、そういう人が一人来たら、役所の消費者窓口の担当の方が、それだったら税務課の人間にも来てもらおうとか、家賃は公営住宅に住んでいたら公営住宅の担当課にも相談に乗ってもらおう、あるいは就労支援のセクションの担当にも来てもらおう。みんなでその本人を取り囲んで、その方の生活再建を総合的に支援していこう、こういう体制ができているわけでございます。
この議論をするに当たりまして、まず、役所として把握しているデータとしては、通常、税金を滞納しているとか、公共料金、水道料金を払っていないとか、こういうことは役所として一番把握のしやすい情報だと思うんですが、一つの事例、サンプルとしまして、多重債務者が債務の問題で悩んでいる、だけれども、一緒に税の滞納をしている、あるいは公共料金を滞納している、こういう複数の問題を抱えている方の割合というのは、もし把握していらっしゃったら、どのぐらいあるのかということについて御答弁いただければと思います。
○森国務大臣 私は多重債務担当の課長補佐だったんですけれども、貸金業法というのができまして、貸金業規制法を改正して貸金業法にしたときのたった一人の担当課長補佐であったわけでございます。ですので、多重債務者がさまざまな点で、例えば税金、公共料金も家賃も滞納している、それが役所の縦割りの中でなかなか救済されないということをよく存じております。
野洲市にもスーパー市役所職員がいまして、彼女が頑張って今のような仕組みをつくりました。その前には、奄美大島の奄美市にやはりスーパー市役所職員がいまして、退職したかな、彼が多重債務の本を出しまして、私はそこに推薦の言葉も書かせていただきましたけれども。
奄美市は、一番最初に縦割りを打破する仕組みをつくりました。ソフトもなかったので、本人が、市役所職員がつくって市長にかけ合って、とにかく、多重債務だけではなくて、税金でも公共料金でも家賃でも、学校でも何か滞納していたり、そういうことがあったら全て連携して連絡がとり合えるようにする。つまり、人に注目をするという、縦割りの業務じゃなくて、人一人に注目して、みんなで救い上げていくという制度がございました。
現在、消費者庁の方で把握している数字でございますけれども、多重債務相談は今三万九百二十六件ございますけれども、その中で、相談者から詳しくヒアリングを行った結果、税金や公共料金の滞納が判明するといった事例があることは消費者庁でも把握をしております。
○重徳委員 正確なデータ、数値までは仮にお持ちではないにしても、もちろん誰よりも森大臣御自身が、そういう状況が現によくあるということは御存じのことかと思います。
おっしゃる、人に注目した仕組みというのは、これは私も役所にいたときにかかわっていたのですが、パーソナルサポートという民主党政権のもとで始まった仕組みですけれども、内閣府だとか厚生労働省が中心に取り組まれたことでありまして、今申し上げました役所のワンストップサービスだけでなく、NPOだとか弁護士さんとか司法書士さんとか社会福祉協議会とか、役所以外の方々も含めた連携体制をしっかりとつくって、本人に寄り添う、一番困っている本人に寄り添って、そして後押しを、背中を押す、あるいは伴走していく、一緒に走っていく、そういうサポートシステムというものを構築しつつある。全国的にモデル地区が幾つかあって、そういう取り組みが今進んでいるという状況なんです。
私自身も実は、横浜市において、若者の就労支援という一つの切り口からだったんですけれども、就労の問題で困っている、貧困の問題で困っている、障害とか病気のある方だとか、いろいろ複数の問題で困っている方を何とかみんなでサポートしていこうという取り組みを、これも、一公務員としてというよりは一市民、一NPO人として、国に対して構造改革特区の提案をしたりして、半分役所の人間、半分民間の人間というような形で、少し特殊な仕事の仕方を私は一時期していたんです。
そういうことで、また野洲市に話を戻しますが、野洲市の場合は町内の連携が非常に進んでいるものですから、消費者の窓口に訪れてくる方は年間五百人ぐらいいらっしゃるようですが、そのうち三分の二は、ほかの部署の方が消費者問題もあるから一緒に考えようやということで話を持ち込んでくるということもかなり多いわけであります。それから、相談者一人当たりの問題の領域、つまり、一つだけの問題じゃなくて、一体幾つあるのかというと、平均すると三つぐらい抱えている。借金だけじゃなくて、ほかの問題を抱えているというような統計があるようでございます。
そういう意味では、消費者庁が真に消費者目線に立った役所というものを目指しているということが大臣の所信の中でもお話がありましたけれども、本当にそういうふうに機能するためには、今きちんと正確に細かい数字は把握されていないようですけれども、しかし、それは実際に感覚をお持ちの大臣御自身はいいかもしれませんけれども、組織として消費者庁がオールラウンドで真に消費者の目線に立ち、そして司令塔として各省庁を引っ張り込んでいくというためには、やはり数字的なものもきちんと押さえていく必要があると思うんですが、その必要性について、大臣はどのようにお考えでしょうか。
〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕
○森国務大臣 おっしゃるとおりであると思います。まず数字を把握して、人に注目した救済ができるように検討をしてみたいと思います。
○重徳委員 検討というか、もう少し前向きな御答弁がいただけないものでしょうか。非常にこれは大事なところだと思うんです。
消費者問題、これは正直、消費者庁という名称そのものも、実はきのう事務方の担当の方と打ち合わせをしていたときに、例えば、市町村の職員の研修をやります、その中のメニューの一つとして消費者行政についての研修項目があるから、各自治体から希望者があればというふうに募ったそうなんですけれども、一人も応募がなかった、だから結局その講座はなくしてしまったという話も聞いております。
これからまだまだ消費者庁も大臣のもとで頑張っていくという強いお気持ちを持っておられると思います。しかしながら、例えば一首長さんが、消費者の問題ということが、やはり首長さんというのは一人ですからね、どのぐらい大きな問題として、今いろいろな問題がある中で消費者の問題というのが極めて重要だ、あらゆる分野の問題よりも本当に五本の指に入るぐらい重要なんだというところまで認識が多分いっていないと思うんですね。
野洲市も、消費者の窓口を担当している課の名前が、それまでは消費生活相談室という名前だったところを、今申し上げましたように、狭い意味での消費者問題というよりは、あらゆる問題があるものですから、市民生活相談課という名前に名称を変更したぐらいに、やはり一つだけの、これまた結局縦割りになってしまっていると思うんです。確かに、生産者側じゃない、国民目線だということはあると思うんですが、それにしても、やはり消費者と言ってしまうと非常に狭く捉えられてしまうと思うんですね。
消費者が抱えている問題というのは、実は、いわゆる消費者問題、多重債務とか契約問題ということだけじゃなくて、貧困の問題から教育の問題からいろいろな問題があるんだということを世に問うていくためにも、これは非常に重要なところだと思うものですから改めてお聞きします。
消費者の抱えているいろいろなほかの問題、滞納している問題とかいろいろな問題をどのぐらい抱えているのかというのを、数値的にきちんとデータをとるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕
○森国務大臣 地方自治体のトップが消費者問題の深刻さについて認識をもっと深めていただくということは、大変重要であると思っております。従来から思っております。国から基金なり交付金なりを地方自治体に支援しても、それがなかなか有効に使われなかったり、雇いどめ等の現状がなかなか解決しないということの根幹の問題だと思っております。
その意識を喚起するためにも、今のような多重債務問題一つだけではなくて、その人に注目すると、ほかのところも問題であるよという点を把握してもらうための数字の把握というものは重要だと思います。
たしか、自治体は忘れましたが、仙台だったか、そのような横串の取り組みをした結果、地方税の徴収率が上がったというようなことを報告されている自治体がございました。そういう先駆的な取り組みも御紹介しながら、今の把握という点について検討してまいりたいと思います。
○重徳委員 現段階、この場でどこまで踏み込んで御答弁いただけるかという問題もあると思いますので、そこはぜひとも事務方の皆さん方ともよく御相談いただきたいというふうに思います。
要は、消費者問題というのは消費者問題にとどまらないんだということを本日は申し上げたくて、名称にこだわるわけじゃないんですけれども、私は、消費者庁というのは、本来、生活者庁ぐらいのものを究極的には目指すべきであって、今の縦割りで、それぞれ施しを与える側の役所というのは結構あるんですけれども、そうではなくて、消費者、生活者が本当に自立して、いい社会の担い手となっていけるように、そういう社会をみんなでつくっていけるような、そういう役所をぜひとも目指していただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。