司法面接の導入について H27.5.15
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○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。きょうも少しお時間を頂戴します。
先日から私が申し上げております起訴率の低下の問題に入る前に、一昨日、厚生労働委員会の方で私は質疑に立ちまして、以前からこの法務委員会で取り上げさせていただいております司法面接につきまして、塩崎厚労大臣と議論をさせていただきました。
きょうも資料でお配りしておりますけれども、神奈川県伊勢原市にあります子どもの権利擁護センター、この機能も説明しながら議論したんですが、塩崎大臣は、実は、この子どもの権利擁護センターがオープンしたことしの二月の前に話は既に聞いていたよということでございました。そして、こういう問題には正面から立ち向かわないといけないんじゃないか、大変意味がある取り組みであると、前向きな御発言がございました。
私は、以前から申し上げておりますように、日本全国で、児童相談所と警察と検察が一堂に会して子供に対する面接を一発で終えるということを全国に一発で広げていくというのは、なかなか運用も、トライ・アンド・エラーもあるでしょうから難しいかもしれないので、例えば、この伊勢原のセンターがせっかくあるわけですから、ここでモデルケースを試行しながら、必要な見直し、場合によっては法制度の見直し、こういったことをやっていくべきじゃないかなということを考えているところです。
先般の質疑では、林刑事局長に対しまして、私の、検察官面前調書というものは、やはり検察官が直接その被害児童、被害者と面接をしたものしか認められないであろうか、それとも、誰か別の人が面接しているんだけれども、バックモニターで検察官が見ていて必要な追加質問事項を加えていくようなやり方でも検察官面前調書として認められるかどうかということについて、現行制度上はなかなかそこはハードルが高いねという御答弁だったと思います。
ということも踏まえまして、本当はそのハードルも越えなきゃいけないかもしれないんですが、まずは、モデルケースとしてやるとすれば、児童福祉に精通した検察官が、児相、警察、検察を代表して一対一の面接を行ったものを証拠としつつ裁判を行うということについて、何か法的な問題点などはありますでしょうか。その点、確認させてください。
○林政府参考人 こういった司法面接の手法の中で、検察官が代表して被害児童の事情聴取を行うといった場合、そうしたときにつくられる供述調書でございますが、その取り扱い、法的な位置づけについてお答えいたします。
まず、検察官がこういった被害児童の事情聴取を行って、その供述を録取した供述調書については、いずれにしましてもこれは供述調書でございますので、伝聞証拠となります。したがいまして、刑事訴訟法三百二十条一項によりまして、原則として証拠として用いることはできないとされております。
一方で、例えば被告人の弁護人がその当該供述調書を証拠とすることに同意した場合には、刑事訴訟法三百二十六条一項によりまして、証拠として用いることができます。
また、被告人の弁護人が同意をしなかった場合、検察官は、まずは当該被害児童の証人尋問を実施することとなります。証人尋問におきまして、被害児童が精神もしくは身体の故障などの理由によって供述することができないときとか、あるいは被害児童が以前行った検察官の面前における供述と相反するか、もしくは実質的に異なった供述をして、かつ、その検察官の面前における供述が証人尋問における供述よりも信用すべき特別の状況が存するとき、こういったときには例外的に供述調書が証拠となるという形になっております。
以上でございます。
○重徳委員 つまり、特段問題ないということでよろしいでしょうか。私の質問に対しては特段問題がない、つまり、検察官が一対一でやる場合であればほかに問題はないと。
○林政府参考人 問題がないの意味によりますが、要するに、検察官が代表して供述調書をつくった場合にも、その供述調書が全て証拠になるということにつながるとは限らないということでございます。先ほど申し上げたように、それをもって証拠となるためには、さまざまな刑事訴訟法上の要件が満たされないと証拠にならないということになります。
○重徳委員 それは今までの検察官面前調書であっても同じことですよね。だから、司法面接であるがゆえに取り扱いが変わることはないということでいいですね。うなずいておられるので、それでいいと思います。
○奥野委員長 いや、ちゃんと答えなさい。林局長。
○林政府参考人 司法面接の考え方を取り入れて検察官が代表して事情聴取を行って、その結果できた供述調書というものは、これまでの検察官の面前調書と全く法的には異なるものはございません。
○重徳委員 それをお聞きしたかったんです。ありがとうございます。
塩崎大臣はこの間の答弁の中では上川大臣のことにも言及されまして、犯罪被害者基本法をつくったとき中心的にやったのが今の法務大臣の上川陽子さんだとおっしゃいまして、必ずや上川大臣も理解を示してくれるんじゃないか、ここまでおっしゃっておりましたので、ぜひともモデルケースの試行をバックアップしていただきたいと思います。
具体的に、例えば神奈川の地検の理解ある検察官をこの子ども権利擁護センターのモデルケースに協力させていただく、こういうことについて御協力いただけますでしょうか、大臣。
○上川国務大臣 ただいまの司法面接ということでの一連の御質問をこの間いただき続けてまいりまして、大変重要な御指摘でありますし、また、被害を受けた子供たちの目線に立って取り組むという、そうした姿勢でまいりたいというふうに思っておりますので、そういう意味で、より一層工夫しながら取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○重徳委員 ありがとうございます。ぜひ、ともに取り組んでいくことができればと思います。よろしくお願いいたします。
さて、次に、奥野委員長のリーダーシップによりまして、今回、殺人罪等の起訴率の推移に関する報告というものを法務省の方から提出していただくことができました。
正直、十分納得できるだけの情報がない中で、裁判員制度と連動しているとは言いがたいという部分を非常に強調しているという感もあるんですが、まず、この資料の内容について、簡単で結構ですので、ポイントを御説明いただけますでしょうか。
○林政府参考人 御指摘をいただきまして、起訴率の低下について一定の分析を試みたところでございますが、一つには、やはり近年の起訴率の低下傾向について裁判員制度の施行の影響を検討したところ、この低下傾向は、殺人罪、強盗致死傷罪のいずれも裁判員制度施行前から低下傾向が始まっておりまして、裁判員制度の施行と連動しているものとは言いがたいものと考えました。
その他、起訴人員の減少あるいは不起訴人員の増加ということについても裁判員制度の施行前にさかのぼって検討しておりますけれども、特に不起訴人員の増加というところにおきましては、不起訴全体の中で被疑者不詳として処理される事件が非常に大きな割合を占めており、そうして被疑者不詳として処理された事件の増加というものがこういった不起訴人員の増加の一因となっているというふうにうかがわれたと考えております。
○重徳委員 委員の皆様方にもお配りしていただいていますので、皆さん方にもごらんいただきたいんですが、例えば殺人罪の起訴率につきましては、このグラフの赤いラインが示しますように、確かに、見方によっては平成十六年あるいは十八年ごろから低下傾向にある、これはそのとおりだと思うんですが、減少が始まったのが十六年ごろだよという説明をもって裁判員制度と連動しているとは言いがたいという説明なんですが、でも、二十一年以降も低下しているのも事実なんですから、だから、連動しているとは言いがたいとは言えても、連動していないとも言いがたいというのがフェアな言い方じゃないかと私は思います。
また、被疑者不詳のものが非常に多かったという御説明がありますが、皆さん方のお手元の資料でいうと、一枚めくったところに被疑者不詳を除いたグラフが、殺人罪、その次には強盗致死傷罪について起訴率が載っています。もちろん、三〇ポイント、五〇ポイントという極端な落ち方はしていませんが、基本的には低下傾向にあるということも言えると思います。
ですから、これ以上要因分析をする材料が現時点ではないんだというのが実情ではございましょうから、私も別に、裁判員制度が始まったから起訴率が下がったことは間違いないとか、絶対そういうふうに結論づけたいというわけでもないし、そういう確証まで私自身も持っているわけではありませんので、これ以上の言い方はできませんけれども。
いずれにしても、私が今回、この一連の質疑のやりとりの中で指摘をしたいのは、この起訴率低下というのは、裁判員制度が始まる前だろうが後だろうが、起訴率が上がったり下がったりするというのは、これは非常な臆測を呼んでしまうんだと思うんです。まして、この五、六年の間に起訴率が大幅に下がったのを見て、どっちかというと、少なくともぱっと見では、連動しているんじゃないかと思う方が自然だと思うんですよ。
そうじゃないなら、そうじゃないということもきちんと説明をしなくちゃいけないと私は思います。起訴、不起訴の判断権というのは、誰が判断するかというのは、それはもうひとえに検察が判断するわけですから、最近えらく起訴率が上がっているなとか、下がっているな、激しく上下しているな、これを見たら、やはり皆さん不安を覚えても仕方がないと思うんです。だから、こういういろいろな臆測を呼ぶのは当たり前のことだと思います。
したがって、きょう私が申し上げたいのは、法務省として、例えば、毎年出している犯罪白書というのがあるんですね。見てみますと、ちゃんと、起訴、不起訴の人員等の推移とか一応の不起訴人員の理由とか、そういうものが、二十六年版でいうと四十九ページに一ページ使ってあるんです。まだ余白もありますから、そういうところにちゃんと、なぜ起訴率が上がったり下がったりしているのか、起訴人員がふえたり減ったりしているのか、不起訴人員がふえたり減ったりしているのか、これを、わからないなりに、今回一応こういう文書で出していただけたわけですから、一概にはわからないけれどもという前置きを置くなりして何か説明を加えていかないと、これは場合によっては余計な臆測を呼ぶこともあると思うんです。
この点を踏まえまして、大臣、犯罪白書等において、以後、国民にきちんとこの一連の説明を書くべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 起訴率のトレンド、そして要因の分析について、さまざまな条件のもとでという中ではありますけれども、今回こうしてお出しすることができたということについては、この委員会での質疑の上でということでございまして、大変大事な御指摘をいただいたというふうに思っているところでございます。
分析の前提となるデータが、なかなか、過去のトレンドを全て表現するということに足るものではないということを勘案したとしても、これからさらに、そうしたデータ収集も含めまして、分析手法につきましても検討を進めてまいりたいというふうに思っております。白書にどのように表現するかということにつきましても、あわせて検討してまいりたいというふうに思っております。
○重徳委員 ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。期待をしております。よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。