H27.4.15
「児童虐待の被害者や性犯罪被害者への聞き取りを何度もするのは被害者の傷を深くするだけ!」-司法面接に関する審議ー
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○奥野委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。
裁判所職員定員法の一部改正についての審議でございますが、二割司法という言葉がありまして、本来救済を受けるべき国民の中で、実際に司法による手続あるいは救済を受けているのは二割しかいないのではないか、こういう言われ方がされております。
今回裁判所の定員をふやすということもそれを解決する一つなのかもしれませんけれども、先ほど階委員の御質問に対する答弁をお聞きしておりましても、事案が複雑困難化しているとか、審理期間が長期化しているんだ、こういう問題があるからと。裁判所、裁判官、判事が大変なんだということは、それはそれで理解するんですけれども、そうした司法の体制の充実によって、本来救われるべき人たちが実際に救われるという状態になることが大事だと思うんです。
それで、最近の新聞ですが、資料の三をごらんいただきたいんです。
自治体による後見申請が急増しているという話がございます。つまり、身寄りのないお年寄り、親族が協力的でない、そういう場合には自治体の首長部局が手助けをして、そして裁判所での手続をとってもらう、そういうことによって成年後見制度を活用するに至る。認知症のお年寄りの数が非常にふえている、そしてこれからもふえていくということが見込まれる中で、自分自身では、あるいはその親族だけでは解決できない。
そして、その次の資料四にありますように、成年後見関係事件は、市区町村長申し立て件数が実際に物すごい勢いで平成二十五年にかけて急増している、平成二十五年には五千件になっている、こういう数字が出ております。
私は、裁判所の判事さんが大変だとかいうのは、それは大変なんでしょうけれども、だから、今までどおりの仕事をより多くの人数でやるというだけじゃなくて、例えば成年後見を首長部局が、つまり自治体が手伝っているのであれば、そういう中で課題がいろいろあるというのはこの新聞記事に示されています。「首長申し立てには手続きのノウハウが必要で、手間もかかるため、同じ人口規模の自治体でも申立件数はばらつきがある。」と。つまり、ここでもやはり本来助けられるべき認知症の高齢者などが救われていない、こういう状況があると思うんです。
裁判所の側からももう少し自治体にアプローチするなりして、もう少し手続を簡略化するとか書類を簡素化する、こういった取り組み、手を差し伸べる、こういったことができないものかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
後見等の開始の審判は、御本人の行為能力を制限するという重大な効果をもたらすものでございますので、裁判官において十分な資料を収集した上で適切に判断される必要があると考えられます。したがって、申し立ての際には必要な書類をそろえていただくなど、一定程度の御負担をお願いしているところでございます。
もっとも、裁判所といたしましては、成年後見制度の利用を考えておられる方一般に対しまして、できる限り利用しやすい手続とするための努力というのは取り組みを続けていかなければいけないというように考えております。
そこで、委員の御指摘にもあったところでございますけれども、例えば、次のような取り組みをしておるところでございます。
申し立て書等の作成の負担を軽減するために、あるいは追加で事情をお尋ねするといったことをなるべく少なくするために、申し立て書類については定型の書式を整備しているところでございます。また、申し立てに際して添付を求める書類についても、必要最小限のものに限定するように努めております。また、最高裁で作成、配付しておりますパンフレットやDVD、あるいは各家庭裁判所が独自に作成いたしました質問応答、QアンドA集などを利用いたしまして、成年後見制度の利用を検討している方にわかりやすく手続を説明するように努めているところでございます。
いずれにいたしましても、裁判所としては、引き続き、成年後見制度につきまして利用しやすい手続となるよう工夫を続けてまいりたいというふうに考えております。
○重徳委員 裁判所というのは、一般の市民にとって身近かと言われると、残念ながら、いまだそんなに身近とはとても言えない存在だと思います。自治体が一番身近といえば身近だと思います。
ですから、やはり住民の窓口になっております自治体との連携あるいは情報交換というものをもっと適切というか、こういう状況ですから、これから成年後見制度の関係で裁判所も忙しくなっていくということは当然認識されているわけですから、この手続の第一歩である自治体との連携をもっともっと強めていただきたいと思います。
それから、二割司法と言われる問題は過去から当然ありまして、平成十四年には閣議決定で、現在の法曹人口が我が国社会の法的需要に十分に対応することができていない状況にあるという認識から、平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度にすることを目指すということですね。
ですけれども、これについても、実際には二千人に届いたか届かないかみたいな数字でありまして、二年前、平成二十五年七月には、法曹養成制度関係閣僚会議決定におきまして、三千人という数値目標を掲げることは現実性を欠くものであり、当面、このような数値目標を立てることはしないものとする、閣僚会議のもとで、法曹人口についての必要な調査を行い、その結果を二年以内に公表する、こういう決定がなされております。
この経緯だとか、その二年後というのがことしの七月に当たるわけですが、今後の方向性についてどのようにお考えでしょうか。
○大塲政府参考人 今委員が御指摘のとおり、平成二十二年ころには新司法試験の合格者数三千人の達成を目指すという平成十四年三月の閣議決定は、平成二十五年七月に、法曹養成制度関係閣僚会議決定によりまして事実上撤回されまして、あるべき法曹人口について提言すべく、法曹人口についての必要な調査を行うことになっております。
この決定に従いまして、私たち内閣官房の法曹養成制度改革推進室におきまして、法曹有資格者の活動領域の拡大状況、法曹に対する需要、司法アクセスの進展状況、法曹養成制度の整備状況などを検討の観点といたしまして、広くアンケート調査を実施したほか、さまざまなデータを収集して、法曹に対する需要、法曹の供給及び法曹養成課程の状況という大きな観点から、調査結果の分析を進めているところであります。
この結果につきましては、私たち、七月十五日までの設置期限がございますので、まずはその調査結果をその期限までに出せるように検討を進めているというのが現在の状況であります。
○重徳委員 つまり、まだ調査がまとまっていないので、現段階ではちょっと七月まで待ってくれというような話かもしれません。
一般市民の感覚として、この十数年における司法制度改革、取り組んでいるんだろうなというのはわかるんですが、決して身近になった感覚はなくて、逆に、弁護士さんからすれば、弁護士になったものの、何か、仕事がないじゃないかと。東京でもなかなか仕事がないから、最近は地元へ戻ってきてそこで仕事を見つけてやっているとか、これは私自身の見聞きした範囲での話なので、ちょっと全体像はよくわからないんですが。
弁護士さんが実際に活動領域を、弁護士側の立場からして活動領域を拡大するための国としての取り組みについて、ちょっと教えていただけますか。
○萩本政府参考人 弁護士など法曹の資格を有する者が、その法的素養を活用して、国や地方自治体、企業などにその活躍の場を一層広げていくということは、法の支配を全国あまねく実現するという観点からも重要であると考えておりまして、委員御指摘の司法制度改革で法曹人口の増加の必要性がうたわれた際にもそのことが期待されたところでございます。
実際、司法制度改革による法曹人口の増加は、法曹が国や自治体、企業などにおいて広く活動する足がかりとなっておりまして、法曹有資格者の活動領域は広がりつつありますし、法曹有資格者に対する需要やその活躍の可能性も認められるところでございます。
もっとも、その広がりはまだ限定的と言わざるを得ない状況にありまして、法務省におきましては、そのような問題意識のもとで、有識者懇談会を設けまして、国、自治体、福祉の分野、企業の分野、海外展開の分野、それぞれの分野におきまして、法曹有資格者の活動領域の拡大の具体的な方向性について現在検討を進めているところでございます。
○重徳委員 広がりが限定的であるという御認識でございます。
二割司法、司法アクセス障害なんと言われるようですけれども、こういったことは、実際に全体的にどのぐらい解消されたのか。ADRとか、法テラスとか、国選弁護人も拡充していくとか、そういった制度改正をいろいろやっておられますけれども、その辺、全体的にどのように捉えて、どのように評価をされていますか。大臣にお尋ねします。
○上川国務大臣 これまでの司法制度改革によりまして法曹人口の拡大が図られておりますし、また、御指摘のように、認証ADR制度の整備でありますとか、法テラスが設立されるというような改革が随時行われてきたところでございます。
認証ADR制度につきましては、既に百三十以上の民間事業者がこの認証を取得されまして、国民の皆さんの多様な紛争解決ニーズに対応できる体制については整いつつあるというふうに思っているところでございます。
また、法テラスにつきましては、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的として設立されたということでございまして、国民の司法アクセス障害ということの解消、そして身近で利用しやすい司法制度の構築ということについて寄与しているものというふうに考えております。
二割司法という言葉に象徴されるような司法アクセス障害につきましては、相当程度改善されているというふうに考えております。
○重徳委員 供給側というんでしょうか、体制をつくる、準備をする、人員を増強する、そういう面では司法アクセス障害は少し解消されてきたという御認識かもしれませんが、きょうは、前回も少しテーマにさせていただきましたけれども、その二割司法の最たるものは、恐らく、泣き寝入りをしてしまっているケースで、特に、性犯罪、児童虐待といったものについては、司法の世界で本当は裁かれなきゃいけない加害者がそこらじゅうにいるのではないか、こういう認識でおります。
私、皆さんにも資料を配付しておりますが、最近、ある映画を見ました。水井真希さんというモデルさんなんですが、その方が監督をした「ら」という映画であります。連続少女暴行拉致事件、水井監督みずからの体験をもとにした映画で、小さな映画館で短期間やっている、全国でロードショーをやっておりますので、東京渋谷でも三月に十日間ほどやっていたので、私も見に行きました。来週あたりは名古屋で数日間、その後は大阪とか松山とかでも上映するようです。
本当に陰惨な内容の映画でありまして、実際にあった性犯罪で、三人の女性の方が被害者であります。その映画に登場する一人目の方は、アルバイトからの帰りがけの夜道で、目や口をガムテープで塞がれて、手足をぐるぐる巻きにされて、車で拉致をされるという事件。そして、同一犯人なんですけれども、二人目は女子高生、顔面を殴打して車の中で犯行に及ぶ。それから、三人目の方は、駅から自転車に乗って、アパートの前でおりて、アパートに入ろうとしたところをナイフで顔面を切りつけられる、こういうような事件。
これを描写した映画でありまして、かつ、主人公のPTSDの状況を描写した場面もあります。森の中で被害女性が倒れ込んでいるんですけれども、足にガラスの破片のようなものがたくさん埋め込まれている、それを取り出そうとして非常に痛むとか、リストカットをする場面とか、そういうものが出てくる、本当に陰惨、陰うつな気分になるような映画であります。
男性にとっての性犯罪に対する受けとめ方とそれから女性にとっての受けとめ方、これは全然違うと思うんですね。だから、私は男性ですから、PTSDを描写した場面なんというのも、そういう映画を見て、性犯罪の被害を受けた女性というのはこんな思いになるんだなということを感じるわけであります。
男ですから、別に夜道を一人で歩いていても怖くないんですよね。女性の方は怖い。鍵をあけっ放しで家の中にいて、風呂に入ろうと何しようと、男は平気なんですけれども、女性はそうではないと思います。本当に感覚がやはり男と女では違いますので、水井監督は、男性の方にもぜひ見てもらいたいという思いでこの映画をつくったというようなことでございます。
そして、資料には、水井真希さんのインタビュー記事なんですけれども、その中には、御本人が実際に被害を受けた、その後警察に連絡をしたら、住んでいる市の警察署から事件があった市の警察署の方に回された、そっちでもまた細かく話をしたら、今度は刑事課の方でその話はしてくれとそちらにたらい回しになりまして、そして話をしたら、今度は親と相談してからまた来てくれと言われて、また来たということ。今は、県によってはワンストップセンターというものが警察にも設置されているところもあって、ですから、同じ話を四回も五回もしなければいけないということも、その回数を極力減らしていけるように支援をしてくれる、そういう仕組みも少しずつできているので、性犯罪被害者はワンストップセンターを利用してほしいというようなことが書いてあるわけなんですね。
そして、水井さんは、とにかく、被害に遭った方に、あなたは何も悪くないんだということを伝えたいんだということをおっしゃっています。被害者が悪いのではない、全ては性犯罪を犯した加害者側が悪いんだということ、これをまさに社会が認めること、これが裁判での有罪判決だと思うんです。
ですけれども、実際には、そんなプロセス、司法プロセスに入るまでに、この間申し上げましたように、子供の場合は児童相談所もかかわる、そして警察の捜査、取り調べもあり、そしてさらに検察、そして裁判という、何度も何度も、繰り返し繰り返し供述を求められ、それでもあなたは何も悪くないんだなんという気分にはならないと思うんですね。そして、最後、判決が出たら、それはそれでもちろん社会によって裁かれたということになると思うんですが、そこに至るまでが余りに長く、また負担が大きいということだと思います。
そういう意味で、性犯罪被害者の手続上の負担の軽減、これに全力を挙げるべきではないかと思うんですけれども、上川大臣、いかがでしょうか。
〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕
○上川国務大臣 今、先生の方から、水井監督によりましての映画の御紹介がございましたけれども、性犯罪の被害を受けた方々につきましては、本当になかなか人にお話しすることができないような状況の中でということでございまして、そういう中で勇気を持って行った先で何度も何度も同じような話ということになる実態があるということについては、こうしたことがないように、手続面でもしっかりと対応していく必要があるというふうに思います。
犯罪被害者等基本法をつくらせていただいたあの時期におきましても、あの当時も、性犯罪のみならず、一般にさまざまな犯罪の被害者の皆さんが二次被害、三次被害で大変苦しめられているという状況がございまして、そうした負担をできるだけ少なくするという形の対応については、これは絶えず改善をしていかなければいけないことだというふうに思っております。
そういう意味でも、性犯罪の被害者の皆さんの今置かれている状況につきましても、よくよくその声に真摯に耳を傾けながら、運用の改善については、手続の改善も含めまして、丁寧に対応していく必要があるというふうに考えます。
○重徳委員 後ほど司法面接と絡めて今の話は続けたいと思いますが、ちょっと一点、この水井真希さんのインタビューの中で、インタビュアーが、なぜ彼らは性犯罪に走ってしまうのかと問いかけたことに対する答えとして、性犯罪が犯罪であることを知らないんだと思いますと言うんですね。テレビのニュースで、強制わいせつ罪のことを痴漢とか、未成年者へのレイプをいたずらと表現することもあるじゃないですかと。その言い回しが性犯罪への意識を低くさせていると。そして、彼女は、女性に対して性的な暴行をするのは罪が軽いと思っている、男イコール人間、女イコール人間以下と思っている人が多いと私は思いますとおっしゃっています。これはいじめでも同じだと。いじめられている側は、物を隠されたり机の上にごみを置かれたり、何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのだと思いますが、いじめている側からすると、ちょっと遊んだだけじゃんという意識があるということで、加害者側と被害者で非常に意識が違うんじゃないかと。
私も、これを読んで、確かにそうですよね、性犯罪というのはいたずらではないと思うんですよ。いたずらというのは犯罪じゃないじゃないですか。軽犯罪でしょうかね、何か簡単な犯罪。だけれども、重大な犯罪なんですから、これは犯罪抑止の観点からも、この報道の今のあり方というのはおかしいなと思うんです。
強姦罪とか強制わいせつ罪というのは非常に量刑の重い、あるまじき犯罪だということを世に知らしめる必要があるんですけれども、今のような報道一つとっても、何か、ちょっとしたいたずら、あるいは暴行というふうにちょっとぼかして言ったり、こういうことというのは私はいかがなものかと思うんですが、ある意味、女性の立場から上川大臣、男性の立場から葉梨副大臣から、このあたりを伺ってみたいんですけれども、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 社会の中でどういう言葉が使われるかということについて、今、いたずらというような表現がありますけれども、それは、受け取る相手がどういうふうに考えるかということを想像できる力を持つということが非常に大事ではないかというふうに思います。
一つの言葉でも、それに対して非常に厳しく、また、そういう現実がもしあるとするならば、さらに重い言葉になりますので、本当に今のような状況の中で、簡単に使われていくような言葉では語れない実態があるということについては、それぞれ一人一人が想像力をしっかりと働かせていくような、お互いに思いやることができるような社会になってほしいなと思います。
そういう意味では、言葉によって傷つくということも含めまして、また実態を正確にあらわしていないということも含めまして、この使い方につきましては丁寧に対応していかなければいけないことだなというふうに考えます。
○葉梨副大臣 大臣と全く一緒でございますけれども、ただ、私自身、個人として考えると、まだ十分とは言えないかもわからないですけれども、例えば、痴漢は犯罪ですみたいな広報はかつてと比べると相当進んできてはいるなと。性犯罪というのが被害者の心身に大きな傷跡を残す重大なものである、そういうような広報啓発というのはまたさらに進めていかなきゃいけないなと。
現実に、私もきょうも電車で通勤していたんですが、座れないときは、痴漢と間違われるといけないので、両手をつり革にかけるような、男性としてもそういう注意をやはりしなければいけない、そういう時代になってきたと思いますし、また、それ自体が私は別に悪いことだとは思いません。やはりこういった性犯罪についてしっかりと対応していくということは本当に大事なことだというふうに思います。
法務省におきましても、性犯罪の罰則強化ということで、検討会を立ち上げました。そういうような検討会での議論がさらに性犯罪に対する認識を社会に広めることにもつながっていくのではないかというふうに思っています。
○重徳委員 ありがとうございます。
それでは、前回少し議論させていただいた司法面接についてなんですけれども、司法面接、改めて少し解説いたしますと、児童虐待、特に性犯罪のようなものに対しましては、それが未成年の幼い被害者であればあるほど、児童相談所、警察、検察という別々の機関から、それぞれの目的が違うという理由によって同じことを何度も聞かれる、こういうことによりまして、精神的、心理的被害、二次被害というものが被害者の中で生涯傷となって残るということを強いてしまっている、これを解決するために、聞くのであれば、複数の機関が一緒になって合同で一発の司法面接と呼ばれることを行って、それに基づいてその後の裁判手続を進めるということであります。
先日も添付しましたが、資料の二に、日本初の子どもの権利擁護センターの資料を添付いたしました。子供が司法面接室で、静かな部屋で一対一で事情聴取を受けて、それをビデオカメラで別のモニタールームに映し出し、そのモニタールームの方に関係者がみんなそろって、必要な質問があればインターホンを通じて面接室にこれも聞いてくれと追加することをもって一度でヒアリングを済ませる、こういう仕組みであります。
大臣、前回、最後の最後で一言だけコメントをいただいた、そのコメントでも、児童に寄り添う形の仕組みはさらに研究を進めて、子供目線でしっかり対応する必要があるという御趣旨の答弁をいただきました。
それで、前回の質疑の中で、やはり、厚労省と警察庁の間で、例えば児童相談所が聴取した内容は警察に提供はしますよということはおっしゃっていました、答弁がありました。だけれども、警察側からすれば、それを参考にしてもう一回事情聴取をしっかりやるということでありますから、情報を共有しても、やはり自分は自分で聞かなきゃいけないんだというのが各機関の思いであります。思いというよりは、児童相談所は子供の権利保護とか福祉的な支援というものが組織の目的でありますし、警察は事件を立件するんだということでありますし、検察はそれを起訴するのか不起訴とするのか、こういった判断を行わなきゃいけない。
それぞれ組織のミッションが別々だから、それぞれがそれぞれの目的でもう一度聞かなきゃいけないんだ、これが今までのやり方だったと思うんですが、先ほどから申し上げております性犯罪に対する負担、そして、とりわけそれが子供である場合の本当に心の傷として一生残る影響、これを緩和するために、何としても、やはり縦割りを超えた連携チームというものをつくっていかなくちゃいけないと思うんですよ。
これは、今の現行制度を前提とする限りは、それぞれ役所の人間が勝手にそののりを越えて、児童相談所の人が捜査のための取り調べをしたり、立件のための、あるいは起訴のための取り調べをするなんということは越権行為になりますし、そもそもやりようがないわけでありまして、これを乗り越えるのがまさに政治の役割ではないかと私は思うんですが、そうした縦割りを超える取り組みについて、大臣、リーダーシップを発揮していただきたいんですが、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 先回の御質問におきましても、委員の方から司法面接の導入についての意見を質問されまして、お答えしたところでございます。
御指摘の連携チームによる手法を含めまして、民間等におきまして司法面接について研究あるいは環境整備の取り組みということでなされているということにつきましては、御紹介いただいたケースも含めて、大変大事だというふうに思っております。その上で、児童に寄り添うということの中でさらに研究を進めていくことが必要ではないかというふうにもお答えをしたところでございます。
そこで、取り組みの検討を行うということに当たりましては、現行の法制のもとでの仕組みでございますけれども、事案の内容とかあるいは被害に遭ったお子さんの心身の状態などによっては、一回の事情聴取で被害の全てを語るということにつきましては大変困難な場面もあるのではないかというふうにも考えますし、また、被害を受けた子供さんからの事情聴取の後に被疑者の取り調べや裏づけ捜査等が行われまして、再度、被害を受けたお子さんの事情聴取、事実確認もしなければいけないというようなこともございますし、また、起訴、不起訴の判断をしっかりとするということ、そのために必要なことにつきましてはやはり確認とかさらなる事情聴取も生じてくるというふうにも思うわけでありまして、聴取が必ず一回限りということにつきましてはなかなか難しいのではないかなというふうにも思うところでございます。
先ほど、児童相談所の職員、そして警察官、検察官、縦割りの中で、ある意味ではそれぞれのミッション、役割を果たすためにということがございまして、そこのところについては、被害に遭ったお子さんの目線、立場に立った形で負担をできるだけ軽減していく措置ということについては、これまでも不十分ではあるかもしれませんけれどもやっているということでございまして、私としても、そうした方向がさらに運用段階の中でも成果が上がるようにしてまいりたいというふうに思っております。
司法面接の制度そのものを直ちに導入するということについては、今申し上げたようなこともございまして、慎重な検討を要するものではないかというふうに思いますが、その上で、負担軽減のためのさまざまな施策につきましては、あくまで子供の目線で、寄り添う形で対応していく。二次被害、三次被害によって立ち直ることができないような状態になってしまうということについては極めて大きな問題だというふうに思いますので、そういう取り組みにつきましての検討は進めてまいりたい、また、実態におきましても十分な配慮をしてまいりたいというふうに考えます。
○重徳委員 今の御答弁の中で、一回聴取をしたけれども、その後の捜査で新しい事実が出てきて、それを確認すると。これはしようがないと思うんですよ。だから、そういう意味で一回じゃないというのはやむを得ないと思うんですね。
だけれども、複数の機関が、目的が別だからといって、自分で聞かなきゃいけないんだということで、組織の論理で被害者の方に二次被害をもたらすことはやめようよということが主眼であります。
大臣は、今、これまでもやっているというようなことをちらっとおっしゃいましたけれども、関係機関の連携というのですか、この間、連携というのは単なる情報提供であって、それはそれとして、もう一回警察は警察で聞くんだというような印象だったんですけれども、その部分も負担を軽減するようなこともこれまでやっているという御趣旨の答弁だったんでしょうか。
〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕
○上川国務大臣 今申し上げたことでございますが、もちろん、情報につきましては、子供の負担にならないように丁寧にそれぞれの役割の中で必要な情報を収集していく、こういう方向の中でできるだけ負担がかからないようにしていくという配慮をしているという趣旨で申し上げたところでございます。
検察におきましても、事情聴取に当たりましては、事案の性質に応じまして、事情聴取の場所とか回数とかあるいは方法につきましても配慮をしてきたということでございます。
このような配慮につきまして十分であったかどうかということについては、まだまだ改善する余地があるというふうに思いますので、さらに子供目線という形の中で、引き続き行ってまいりたいというふうに考えております。
○重徳委員 まあ大してやっていない、そういうことですね。司法面接というようなレベルのこととは随分レベルの違う話だと思います。
これはまた検討していただきたいですし、我々も立法府の議員として、これは前回も申し上げましたけれども、各党、関心をお持ちの議員さんもふえてきましたので、こちらからもいろいろと提言をさせていただきたいと思います。
それで、多機関連携もそうなんですが、特に、法務省、裁判ルール、刑事訴訟法上のルールでハードルになるかもしれないこととして一つ指摘をしたいんです。
刑事訴訟法の三百二十一条で、伝聞証拠というものは原則禁止とされています。その例外として、検察官の面前で聴取した調書であれば証拠として採用できるよというような規定があるわけなんです。
司法面接、今、伊勢原にできている子どもの権利擁護センター、ここでやるケースを仮に想定した場合に、司法面接室に検察官の方が代表として一人入るのであれば、それは検察官面前調書、これまでどおりのものになり得ると思うんです。仮に、司法面接室に入って直接子供から事情を聞くのは検察官じゃない方がやるんだけれども、それをモニタールーム、観察室でモニターを検察官が見て、足らざる部分はインターホンでこれも聞いてくれともちろんやるわけなんですが、そういうことによって作成された調書というものは刑事訴訟法三百二十一条に言う検察官面前調書に該当するのかどうか。つまり、それを証拠として、検察官面前調書と同様の扱いが裁判所、法廷においてなされるのかどうかについて御答弁をお願いします。
○林政府参考人 お尋ねの検察官面前調書、刑事訴訟法三百二十一条一項二号に規定されておりますが、これは、検察官の取り調べにおいて、その面前における供述を録取した書面を言うものと解されておるところでございます。
委員はいろいろな場合を設定されて、これが当たるかどうかということでございますけれども、やはり個別の事情によるところが大きくて一概には申し上げられないんですけれども、お尋ねのような検察官以外の者が事情聴取を直接行っているといった場合には、やはりその際に作成された供述調書というものは通常は検察官面前調書には該当しないものと考えられます。
○重徳委員 今の御答弁、趣旨はわかりましたので、これからいろいろな課題があると思いますので、そういったことも一つ一つ検討して改善できるものは改善していきたい、こういう活動を続けてまいりたいと思っております。
どうもありがとうございました。