○谷委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 社会保障を立て直す国民会議、重徳和彦です。
アイヌ新法について質問させていただきます。
この新法の目的ですけれども、先住民族であるアイヌの人々が誇りを持って生活でき、その誇りが尊重される社会の実現を目指すということなんですけれども、これは、先ほど来、北海道選出の先生方は大変その重みというものを感じておられて、この委員会においても大変学ぶことの多いさまざまな御意見を主張されておりましたけれども、ただ、多くの日本国民は、一体アイヌの人たちってどこにどれぐらいいるのという、これが本当にそのスタートラインだと思うんですね、まだまだ。
それで、今お配りしております北海道のアイヌの人々の人数に関する資料、これが政府の方から出てきているんですけれども、平成二十九年、一万三千百十八名なんですが、これは四年前から三千六百六十八人も減っているんですね。さらに、これは地図に落としてありますので見ていくと、日高支庁管内だけで二千七百人減っている、こういうことなんです。
これは、統計としても大丈夫かなと思うんですけれども、大丈夫ですか。
○橋本政府参考人 ただいま委員の方から御紹介いただきました計数につきましては、北海道庁が調査を実施したものでございますけれども、その北海道庁が、人数が減少した市町村にその理由を確認しております。
その中では、アイヌ協会会員には高齢者が多く、死亡した者が多かったであるとか、都市部への転出がふえ、その後の動向が不明となった者が多かった、また、個人情報保護の意識が浸透しつつある中で、市町村が把握できない方や調査に協力を得ることができない方がふえたなどの回答を得たと。北海道庁はそういった回答を得たというふうに承知しております。
中でも、個人情報保護の意識が浸透しつつあります。市町村が把握できない方、調査に協力を得ることができない方がふえたという回答の市町村がこれもまた最も多かったというように聞いているところでございます。
○重徳委員 特に日高の、これは四二%減っているということですけれども、これはやはり数字として自然じゃないですよね。
高齢者が多くて死亡したんだとか、転出したんだとかいうようなことは、少なくとも、四年前のというか、平成二十五年の時点の高齢者の割合が日高には物すごい多かった、本当に、年齢でいえば七十代、八十代の人たちが物すごいたくさんいて、たくさんお亡くなりになったんだとかいうことならわかるし、実際、札幌でしょうか、本州でしょうか、転出された方がこの日高地方はほかの地域よりも格段に多いとか、そういうことが分析できていれば、ここはある程度説明できると思うんですけれども、個人情報の意識がこの四年間でめちゃめちゃ日高地方だけ高まったなんということはなかなか考えにくいと思うんですけれども、もうちょっと分析されていないんですか。
○橋本政府参考人 この件に関しましては、北海道庁の方に聞いたところ、日高振興局管内の町村におきまして、その人数の減少理由については、個人情報保護の取扱いを理由に把握できなかった人が多かったというように回答があったと。北海道庁はそのように受けとめているというように承知しております。
○重徳委員 そんな曖昧に言っていると、この法律の立法事実も危うくなってしまうのではないでしょうか。
別に道が調査することはいいですけれども、その資料に基づいて国で法案を出して審議する以上は、誰が見ても、ちょっと見れば、これはおかしい、おかしいというか、何か大きな要因があるんじゃないかということは疑問に思いますよね。それを調べる当事者が今の法案提出者自身であるでしょうから、これはもっとちゃんとしないと。あらゆる、ヘイトスピーチを招くとまで言いませんけれども、アイヌの人が存在しないんだと言う方々までいるわけですよね、世の中には。そういうことに問題意識を持っているのであれば、やはりこういう数字の大幅な増減はせめてちゃんと把握しておかないと。今、はっきり言って答弁になっていませんので、そこはしっかりしないといけないと思います。
今はこれ以上聞いてもこれ以上出てこないということでしょうけれども、これは改めてちょっと確認してください。私も法案は賛成するんですけれども、これはやはり不思議な数字なので、もうちょっときちっと調査をしていただけることをここで約束していただけませんか。
○橋本政府参考人 この調査につきましては、法令に基づく調査ではないことから、回答を義務づけることはできないため、調査には限界があるものと考えておりますが、御指摘のとおり、政策立案に重要な調査と承知しております。
調査方法の改善につきましては国も協力してまいりたい、そのように承知しております。
○重徳委員 ぜひしっかりと協力して、よりよい調査にしていただきたいと思いますし、まさに個人情報で出さないというのも、一般論としての個人情報というよりは、やはり残念ながらまだまだ自分がアイヌであるということを申し出ることをちゅうちょするという要素もあるのではないかというふうに推察されます。
この法律は、そういう意味でも、そういう皆さんにも、まさに誇りを持って堂々と、アイヌの血を引く方なのであるということは日本じゅうの人たちが、世界じゅうの人たちが認めてくれる、こういう環境をつくる法案だということでありましょうから、そういう意味でも、国がしっかりとこういう法案をつくって、皆さんの尊厳をしっかり守るんだ、こういうこともあわせて主張していただきたいというふうに思います。
次に、先ほど荒井先生の御質問にもありました北海道旧土人保護法、一八九九年に制定をされた法律です。それから百年近くたって、ようやくこの法律は一九九〇年代に廃止されたということなんですけれども、この北海道旧土人保護法の制定されたときの帝国議会の議事録をちょっと見ますと、政府側の答弁としてこう言っています。アイヌは、同じ帝国臣民でありながら、内地の者が事業を進めるに従い生活の道を失う、こういう情勢は皆さん御承知のとおりだと思います、こんなような内容の政府側の答弁があるんですね。
この旧土人保護法は、目的はいろいろとあるんですけれども、土地を多く失ってしまったアイヌの皆さんに対して、土地を付与して農業を奨励する、こんなような内容だそうなんです。しかし、百年近くたって振り返ってみれば、そうはいっても、既に和人がたくさん移住して土地を全部とっちゃったものだから、アイヌの人たちに良好な土地をもはや付与できなかった。こういう総括をされているような説明文書もいただきましたけれども、こういった経緯、そして、百年近くを経て今回の法律の前のアイヌ文化振興法が制定された、こういう歴史というものは、やはり立法府に籍を置いている我々国会議員はきちっとこうした経緯、歴史について認識をするべきだと思うんです。
当時は、当時というのはアイヌ文化振興法が制定されたそのときは、閣法ではありましたけれども、しかし、参議院議員であられた萱野茂さん、アイヌ出身の方、この方の活動、動きも大きかったんじゃないかなということも推察はいたしますけれども、この九〇年代に制定されたアイヌ文化振興法の経緯とか背景について、あるいはこの歴史の重みといいましょうか、そういったことについて、大臣、どのように認識されているでしょうか。
○石井国務大臣 昭和六十三年に、地元の北海道、当時の北海道ウタリ協会などから新法制定の御要望を受けて以来、政府として大きな課題と受けとめ、検討を重ねてきたと承知をしております。
平成七年の三月には、五十嵐内閣官房長官の私的懇談会といたしまして、ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会が設置をされ、各界の権威の先生方に幅広い角度から御議論をいただき、平成八年四月に報告書を提出していただいたところであります。
政府といたしまして、この報告書の指摘にある、アイヌの伝統やアイヌ文化を受け継ぐ人々が少なくなり、消滅の危機にあるとの状況を踏まえ、法律案として取りまとめ、第百四十回国会における御審議を経て、アイヌ文化振興法が制定されたものであります。
平成九年四月の参議院内閣委員会の審議において、アイヌ出身の萱野茂議員が質疑を行うなど、法案成立に大きく寄与されたものと承知をしております。
○重徳委員 この九〇年代の文化振興法ができたときにも、やはりアイヌの人たちの数が減ってきているということを踏まえてやってこられたということなんですよね。
それは、やはり最初の問いに立ち返っても、じゃ、今どうなんだということももう少し踏み込んで国として把握していく必要があるんじゃないかと私も思います。
先般、この委員会の委員の先生方とともに白老町に現地調査に行ったときに、その場で、有識者として広瀬健一郎准教授、鹿児島純心女子大学の先生がおっしゃっていたことがあります。それはアイヌの人たちが利用していた土地をいわば収奪されたということなんですけれども、この土地に関する権利、土地権について、この重み、これをどのように回復するのかというのが一つの論点として提起されていたわけなんです。
今回の法律、この土地権に関しては、じゃ、アイヌの関係の人たちに土地をお渡ししますなんということは、現実問題、できることではないと思うんですが、これはアイヌの皆さんからの要望に応えたという形ではありますが、国有林に共同権を設定して、自由にというか、希望のとおり、希望に沿う形で木々の伐採をすることができるようにする。
こういう、まあちょっとささやかな権利のような感じがするんですけれども、これは、アイヌだということを名乗り出られない状況の中で、つまり、アイヌの人たちがすごく名乗り出ている方々が少ないというふうに見た場合に、これからこの法律ができて、本当に誇り、尊厳を回復していく、こういう中で、自分もアイヌの血を引くんだという人たちがもっとたくさん出てきて、もっと声が大きくなったときに、何かもっといろいろなことをやってあげられるのかななんということも思うんです。
この間の有識者の方々に言わせれば、アイヌの人々というのは、古来、非常につつましくて平和的でという方々だ、そういう民族なんだというようなお話もありました。今回の要望も、もしかしたら、非常につつましくて、ちょっと木を刈らせてよということぐらいしかおっしゃらなかったのかもしれない。
これからどんなような要望が出てくるかわかりませんけれども、やはり、こうした重い歴史を踏まえて、できる限りのことは政府としてもしてあげたいという立場に立ったときに、どんな心意気で今大臣がおられるかということをお聞きしたいと思います。
○石井国務大臣 アイヌの方々のみを対象として土地の利用権を設定するなど特別の措置を講ずることは、憲法第十四条に定められた法のもとの平等に反するおそれがあること、国民の理解が得られず新たな差別につながるおそれがあることなどの問題があり、委員御指摘のとおり、適切でないと考えております。
他方、本法案におきましては、アイヌの方々の御要望などを踏まえまして、国有林野における林産物の採取に関する特例措置を規定しておりまして、これを活用することにより、アイヌ文化の振興等に活用するための林産物を、近隣の森林に限らず広く国有林野から採取することが可能となります。
政府といたしましては、この当該特例措置や、また本法案に基づく交付金も活用しながら、アイヌの方々のさまざまな御要望に応えることができるよう支援をしてまいりたいと考えています。
○重徳委員 余りこれからのことは語っていただけませんでしたが、オリンピックのことは、各委員、要望されているとおりで、私も、歴史ある日本という国が寛容なる成熟国家として国際社会と連帯しながらリーダーシップを発揮していく、こういう意味でも非常にメッセージ性のあることだ、意義のあることだと思いますので、最後に要望だけ申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。