○渡辺委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 重徳和彦でございます。新党、民進党に参画をいたしました。改めまして、よろしくお願いいたします。
まず初めに、熊本の大地震で亡くなられた皆様方に心から冥福を申し上げますとともに、一日も早く災害復旧復興が進みますように、心からお祈りを申し上げますとともに、全力で取り組んでまいりたいと思います。
さて、きょうの法案は児童扶養手当法についてでございます。野党の側から再三、提言、提唱、そして対案も出させていただいております支給回数を毎月にしたらどうかということに対しまして、最終的には修正協議がうまくいっていないということでありますけれども、こういう要望の声というのはやはり非常に強いと思います。
大臣にお尋ねしますが、こういった要望について、いつ、どのように応えていこうとされているんでしょうか、それとも応える気がないんでしょうか、お尋ねいたします。
○塩崎国務大臣 これは先ほど初鹿議員の御質問に対しましてお答えを申し上げたように、実際に担っていただいているのは地方公共団体でございますので、この支払い方法につきましては、地方公共団体における手当の支給実務の負担などをよく考慮して、一人親家庭の利便性の向上、それから、家計の安定を図る観点からどうすべきなのか、あるいは支給回数をどうするのかを含めて、所要の改善措置を検討していかなければならないということを申し上げたところでございます。
いずれにしても、これはどういうやり方にするにせよ、一人親家庭の家計管理、この管理の支援というものを同時にやっていかなきゃいけないということは、どういう場合でも言えるんだろうというふうに思います。
○重徳委員 私は地方分権派でありますので、やはり現場に一番近いのは自治体であります。国がやたら現場のことをおもんぱかるよりかは、自治体が直面している現場に一番よい方法を見出し、それを応援していくというのが国のあるべき姿ではないかと思います。
そこで、ちょっと細かいんですけれども、支給回数、これを例えば国で決め切らずに条例で行えるように、決められるようにするということを考えた場合に、児童扶養手当というのはいわゆる法定受託事務と位置づけられておりますが、法定受託事務であるがゆえに条例に委ねることができないという問題はあるんでしょうか。
○香取政府参考人 答弁申し上げます。
今の地方分権の話でございますが、御案内のように、もともと児童扶養手当は機関委任事務として各自治体に支給の事務をお願いしていたものでございますが、平成十年の閣議決定で、地方分権、今の機関委任事務とか法定受託事務の整理を全部したときの分権計画ですが、その中で、自治事務と法定受託事務の制度上の取り扱いという規定がございまして、「法定受託事務については、国の法律又はこれに基づく政令により事務を処理することが原則である」という規定がございます。
その上で、法律において、特にこれを条例に委ねるという規定を法律に置くということがあれば、その法律の範囲内で条例を定めることができる。そういう形で、条例で定めることを法律で受託をするという形をとればそういうことができる、その場合には、その法令の範囲内で条例を定めることができるということになってございます。
私ども、これについてちょっと調べてみましたが、法定受託事務で、その内容について条例に委任をしているという規定を持っている事例は、私どもが調べた限りでは承知しておりません。
○重徳委員 例がないけれども、法律上は書けばできる、私寄りに解釈すれば、今の御答弁もそういうことだと思うんです。
やはり、地域によって差異が生じるのはおかしいとかいろいろ言われますけれども、金額が違うとか対象者が違うとかいうことであれば、それはナショナルミニマムに反するかもしれませんが、支給回数がナショナルミニマムとは私は思えないんです。
したがって、地域によって支給回数が異なることが問題だなんということを論じるよりは、やはり地域、現場の実情に応じて、しかも現況調査をする云々という事務、手間についても、それは自治体の問題でありますから、その自治体自身がやるべしと判断できるのであれば、支給回数はいかようにも柔軟にできるはずではないでしょうか。そして、その方が地方分権の観点、よりきめ細かな現場に即した対応としてふさわしいんじゃないか、こう思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 今、ナショナルミニマムの考え方について先生のお考えをお示しいただきましたけれども、何度も申し上げておりますけれども、地方自治や地方分権の観点は重要であって、一方で、児童扶養手当というのは、低所得の一人親家庭の支援としてのやはりナショナルミニマムを確保するというところは、支給も含めて、私どもは全国一律であるべきではないのかというふうに考えているところでございます。
国民年金、児童手当、障害児福祉手当などの他の制度でも、全国一律の基準で行うべき事務については、法律で支給回数及び支給月が規定をされております。
さらに、これはもう何度も言っておりますけれども、現行の年三回よりも支給回数をふやすことについては、さまざまな調査をするなりの手間がかかることと、それから、転居した場合の混乱についての配慮もしなければいけないのではないかということで、今申し上げたようなことでありますが、先ほど申し上げたとおり、今後いろいろ検討していく所存であるということを申し上げたところでございます。
○重徳委員 同僚議員の皆さんが同様の主張をされていることを、ぜひ重く受けとめていただきたいと思います。
ほかに例がないとかいうことよりも、現にニーズがあるということの方がよっぽど重要なことであります。まして、国が一律、年十二回、毎月というふうに決めるわけではなく、条例に委ねるというやり方というのは法律上も禁じられていないという今香取局長のお話でありましたし、自治体がやれるんだ、やるんだと言っていることを国が妨げる必要は全くないと思っておりますので、改めてこの点を申し上げたいと思います。
さて、次に、熊本地震に対する対応について、とかしき副大臣に、ちょっと女性の観点も含めてお答えいただきたいと思うんです。
さっき、中島委員からもトイレの問題を取り上げていただきましたけれども、私は、十二年前の新潟県中越地震に、当時は総務省消防庁の職員として現地派遣をされたという経験がございました。あのとき、崖崩れの現場から四日ぶりに二歳の男の子を救助した東京消防庁ハイパーレスキュー隊、あれの連絡調整をしたり、そして、その後の被災者の生活支援を、現場をとにかく回って歩いて、いろいろな声を聞いて、国がこう動くべきだ、県として生活再建支援をするべきだ、さまざまなことを現場から伝えていくという活動を行っておりました。
その中で、特に重要だな、しかも意外と盲点だなというふうに思ったのが、やはり水分補給ですね、先ほど中島委員が言われました、水分を補給しないと。そして、新潟中越地震は冬に向かっていく時期だったんですね、十月。でも、熊本地震は、今四月ですから暑い時期に向かっていく、水分補給はいよいよ重要です。
そのときに、トイレが仮設トイレのままであると、男性の場合はまだ抵抗感がない方が多いと思いますが、女性はやはりそのトイレに行きたくないという心理的なものがあります。
したがって、そういった健康管理の面からも、仮設トイレを、下水管、よく、ライフラインは電気、ガス、水道、上水道というイメージがあるんですが、実は下水道もちゃんと整っていなければ、トイレの仮設から本設に切りかえることもできません。したがって、そういったことも含めたトイレの設置、そして、それによる被災者の皆さんの健康維持につきまして、とかしき副大臣からの御答弁をお願いします。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
委員御指摘のとおり、避難所においてのトイレ、特に女性はかなりトイレに対しての悩みが深くて、かなり配慮してあげないと、ちゅうちょしてしまう原因になってしまいます。
先ほどエコノミー症候群のお話もいただきましたけれども、やはり女性がトイレをちゅうちょしてしまいますと、また、血流にも影響が出てまいりまして、また、いろいろな症状を誘発することも考えられますので、なるべく、女性とかだけではなくて、皆さんがちゅうちょなくトイレを使えるような環境を整えていくこと、これがとても大切だ、このように考えております。
できる限り速やかにトイレの復旧が図られるように関係省庁に相談するとともに、避難者の方々の心身の健康を維持しながら生活できるように、しっかりとその声をいただいて、寄り添っていくように、そして、特に女性の場合は、プライバシーが守られていくこと、我慢しないで済むようなこと、こういう環境をつくっていくことがとても大切だと思いますので、きめ細やかな配慮ができるように対応していきたいと思っております。
○重徳委員 ぜひ、よろしくお願いいたします。これは男が言っても説得力がないことが多いものですから、ぜひ、女性の副大臣として、しっかりと物申していただければと思っております。
もう一点、被災者を支援する観点から、今回の場合でいうと、熊本県庁に即刻、国の職員が現地対策本部を置くんですが、そこから先、市町村への職員の配置というのが後手後手に回ることが多いし、小規模市町村になればなるほど、国からの情報だとか、初めての経験ですから、職員自身が何をしていいのかわからない、どうしていいのかわからない。そして、いまだに、私は分権派なので市町村と国は対等だと思っておりますが、それにしても、やはり国に、県に物申すというのはなかなか市町村からするとやりにくい、やりなれない、こういうこともありますので、その点にちゃんと国の職員が手を差し伸べていくということが必要だと考えております。
このほど、被災者支援チームというのができたと聞いております。また、特に国交省は市町村にいち早く職員をきちんと配置しましたという話を聞いておりますが、残念ながら国も縦割りなものですから、国交省の職員に医療とか衛生とか健康とかいう相談をしても、なかなか自分の仕事だと思わない、思えない、こういう現状もあります。
ですから、厚労省として、本当にこれから被災者支援、一番大事なのは健康面でございます、メンタルも含めてですけれども。そういう意味で、厚労省の職員をきちんと市町村の現場、そして、さらにそこから、避難所周りも含めて、機動的に厚労省の職員が現場に近いところに常にいる、こういう体制をとっていただきたいと思うんですが、現状、いかがでしょうか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
今般の熊本地震におきましては、厚生労働省は地震発生翌日の四月の十五日午前中に現地対策本部を立ち上げまして、現在、十五名の職員が現地で活動させていただいております。
そして、現地の対策本部では、県庁や県外の関連機関との調整、さらに、急性期や、慢性期へ移行するということで、被災地の状況の変化に応じた保健医療体制の構築の支援、そして、県域では対応できない保健師や看護師などの人材を全国的に調整して人を送り込んでいく、そして、県庁でも連絡がつかない施設、ここには積極的に出向いていって現場の状態を確認していこう、こういうふうに動いております。
ですから、県庁がなかなか手が届かないところをなるべく俯瞰な形で見ていて、そこに手を差し伸べていくというのが厚生労働省の仕事ではないか。もちろん、医療チームとかをいろいろ皆さん御協力いただきますので、それがしっかり機能しているかどうかということで、現地に赴くだけではなくて、全体的に見て、それが落ちているところがないか、抜けているところはないかというのをしっかり見ていきたい、このように考えております。
今、インターネットとかも随分普及してまいりましたので、いろいろな形で書き込み等もございますので、しっかりその方も、多分県庁ではそこまで見ている余裕がございませんので、しっかりこれは厚生労働省の方で見させていただいて、県庁が抜け落ちているなという情報がありましたら、厚労省の方から逆にいろいろ情報を流させていただいたり、自治体の方に連絡をさせていただいたりということで、なるべく現地のニーズと要望を集約して、現場の対策の方に情報を流していって、そして現場が動くように、そのような体制を構築させていただいております。
今後も、こうした体制を通じて、被災者のニーズを丁寧に把握しながら被災者の生活を支援していきたい、このように考えております。
○重徳委員 ちょっと答弁漏れなのかな。
市町村に職員を配置するということについてはいかがでしょうか。今、熊本県庁に職員を置く、これはもう既にやられているということは私も承知しておりますけれども、ネットで情報をとるのももちろん構わない、構わないというかどんどんやっていただきたいんですけれども、市町村にお願いしたいんですよ。
○とかしき副大臣 今お答えさせていただいたつもりでございましたけれども、失礼いたしました。
市町村に配置をするのではなくて、そこに、現場に全部厚労省の職員をつけるという方法ではなくて、先ほど言いましたように、少し全体的に見て、抜け落ちているところがないかという形でサポートさせていただくというやり方を今厚労省はとらせていただいております。
○重徳委員 それでは私は足りないというふうに感じております。新潟県における経験上もそうです。
市町村、市町村といったって、熊本市というレベルから町村までいろいろありますけれども、大きければ大きい市の強みもあれば弱みもありますけれども、逆に、小さな町村は町村で、さっき言ったように、いろいろとノウハウもないし、なかなか、これは感覚的な問題ですが、上の組織である国、県に物を申せない、こういうこともあるので、それをサポートするべきだというふうに申し上げているところです。
○とかしき副大臣 ありがとうございます。
現場の声は、保健師の方は全部被災地に張りつけておりますので、保健師の方からは連絡が入ってくるようになっております。
さらに、ちょっと厚生労働省も人員的な配置のことがありまして、なかなか自治体全部に配置するというのが今のところはちょっと難しいんですが、内閣府の方で、被災者生活支援チームということで連絡調整グループができておりますので、こちらの方で多分、現地の様子を見ながらいろいろな形の対策を打ってくるかと思いますので、今委員御指摘のような話も当然検討課題に出てくるかと思いますので、今後、また決断がなされたら、厚生労働省としてもしっかりと対応していきたいと思っております。
○重徳委員 副大臣言われるように、保健師さんは一つの専門的な見地もありますので、そういう専門家の方が現場を回られるというのは非常に意味のあることだと思います。
ですから、内閣府だからオールラウンドだというのも、これも、建前上はそうですけれども、必ずしもという面もありますので、だから、内閣府の方が行くにしろ、これまでちゃんと現場で災害対応をしたことのある、経験のある方にちゃんと責任を持ってやっていただいて、そうすると、少しは縦割りを超えた対応も可能になってくるかもしれません。
人員配置の問題もあるとは思いますが、何よりも大事な仕事だと思いますので、この点ちょっと、現時点ではそこまでの御答弁でしょうけれども、この点はさらなる手厚い対応を求めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、災害対応の話はそのぐらいにしまして、今回は児童扶養手当の法案の改正ではございますが、関連してといいましょうか、少し近い話として、児童扶養手当じゃなくて児童手当の話をしてみたいと思います。
お手元に、ファクスなのでちょっと読みづらいですけれども、資料を用意しましたので、ごらんください。資料一ですね、児童手当。
これは、児童扶養手当の場合と違って、第二子、第三子、第四子、日本は少しだけですけれども、累進的な支給基準となっております。フランス、スウェーデンと比較しておりますけれども、これは明らかに第一子よりも第二子、第二子よりも第三子と手厚くなっております。その点で、今回、児童扶養手当が、二人目、三人目になればその分お金が二倍、三倍とはならないんだ、もうちょっと効率化されるんだという御説明が、児童扶養手当が第一子からだんだん減っていくことに対して、児童手当の方は日本も曲がりなりにもふやしているわけなんですよね。
だから、この趣旨というのは児童扶養手当の説明と明らかに違う説明がなされるのであろうと思うんですが、この累進的な多子加算ということについて、その趣旨はどういうことなんでしょうか。
○中島政府参考人 お尋ねの児童手当制度でございます。
もう委員御承知のことだと思うわけですけれども、児童手当制度につきましては、昭和四十七年の法制定時から、法目的として二つのことを掲げてございます。重なる部分もあるわけですけれども、まず一つは、家庭における生活の安定に寄与するということ、それからもう一つが、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することということでございます。
制度を設計するに当たっては、重なる部分もございますが、これら二つの目的、どちらにより軸足を置くのかというところが、一つの選択のポイントになるのかと。
四十七年の制度発足時におきましては、第三子以降のみを支給対象としていたということでございまして、その理由としては、財政上の制約がある中で、特に多子世帯において養育費が家計の重い負担になっていることを考慮したということで、その意味では、家庭における生活の安定の確保というところに軸足を置いた、制度発足当初の考え方であった。
その後、昭和六十一年の制度改正で、支給対象の児童の範囲が第二子以降になって、平成四年には第一子以降にも拡大されていくということになったわけでございますけれども、その際も、第三子以降については、第二子までよりも高い手当額が支給されていたということでございます。
そして、現行の給付設計については、これももう委員御承知のとおりでございまして、第三子以降は一子、二子と比べて増額、一万五千円という形になっているわけでございまして、これにつきましても、制度発足以降の同様の、従前どおりの考え方に沿った制度設計が、当時の民主党、自由民主党、公明党の三党合意に基づいてなされたものだと考えておるところでございます。
○重徳委員 家庭生活の安定ということと、次世代の健やかな成長というものを目指してということですが、明確に、三人目以降の子供、いわゆる多子世帯であればあるほどそこは支援するよという御答弁は今なかったんですけれども、そういう趣旨はないんですか。
フランス、スウェーデンと比べますと、フランス、とりわけスウェーデンは、どんどん累進的に多子世帯にはふえていくわけなんですよね。日本も、第三子を境にではありますが、上乗せされています。これは、経緯からいってそうだったんだということでありますが、第三子以降を手厚く、第三子以降を応援するという趣旨は、その中に明確に目的として位置づけてはおられないんでしょうか。
○中島政府参考人 済みません、私の説明が不十分で御理解いただけなくて。
基本的に、第三子以降を重点的に支援するという考え方は、しっかりこの児童手当制度の中に盛り込まれている。それは、制度創設以降、第三子以降の部分については額をふやしているというところにあらわれていると思っているわけでございます。
○重徳委員 はい、わかりました。
第三子以降重点的にということでありますが、ここでちょっと、我が国では、あるいはこういう委員会の場では余り問われたことがないのかもしれませんが、所得制限が日本にはあるんですよね。この制度では比較的、よくある所得制限とは違って、九百六十万円ということですから、相当高所得者でない限り支給するよという仕組みには一応なっていると思いますが、フランス、スウェーデンには所得制限がありません。ですから、推測をすれば、第三子以降を重点的にという意図が非常にはっきりとしているのがフランス、スウェーデンの仕組みではなかろうかと思います。
日本、もちろん、所得が幾ら高くてもどんどん出せばいいじゃないかという単純な思いであるわけではないんですが、それにしても、別に所得が、よくあるのは二百万円とか四百万円とかそのぐらいのものであるところが、九百六十万円まで来ているわけですから、そこよりも上の人たちは第三子以降を重点化することとは趣旨が違いますという説明にもならないと思いますし、そういう意味では、はっきり言えば、ここの所得制限というものも抜きにして、とにかく日本は、子供の数が減っていくことは本当に深刻なことである、国を挙げて第三子以降を重点的に応援する、こんなような姿勢をとることができないかというのが、あえて今ここで申し上げたいと思うことなんです。
当然ながら、高所得者、高額所得者ということは、それだけ納税もたくさんしているわけですね。これから税負担はどうなっていくでしょうか。消費税も、延期するという議論もありますけれども、それにしても、そういった税負担というもの、これは消費税だけじゃありませんが、国民の負担というものをこれから重くしていかなくちゃ財政がもたない、こういう局面にあって、負担をする人と受益を受ける人が本当に分断されていく、こういうことというのは、世の中の統合といいましょうか、納得感、安心感、そういったものと相反する方向に向かいかねないんじゃないか。
だから、所得の高い人は税金を払ってくれればいい、所得の低い人には給付を渡すんだ、こういう分断する線というものを引くことによって、この世の中が、お互い恨み合うというか、そういうような不思議な、おかしな感情がこの日本という国において起きていく。これを、制度ですから、これは人為的にそういう要因をつくっていることになるわけですから、この点についてちょっと問題提起をしてみたいと思います。
この点は問題提起にとどめたいと思うんですけれども、今度は出生率の話をしていきたいと思います。
地方創生の長期ビジョン、たしか去年の初めごろに策定されたと思いますが、その中での出生率、二〇四〇年に人口置換水準と言われる二・〇七を目指します、こういうことが明記されました。そこにたどり着くためのラインというのは、二〇三〇年には出生率一・八になっていないといけません。そして、二〇三〇年というとまだ先のような感じがしますが、二〇二〇年に一・六にたどり着かないといけないんですよ。もう四年後です。四年後に一・六、これはたどり着けるんでしょうか。これが果たせないままにそのまま延長線上に行けば、二〇四〇年、まだまだ先のように見えますが、二・〇七というラインにはとてもじゃないけれども到達できない、こういう感覚になるんじゃないでしょうか。
今、四年後の一・六に向けてどれだけ本気で取り組んでおられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
○菊地政府参考人 お答えいたします。
長期ビジョンに示されました出生率の向上のためには、若い世代の結婚、出産、子育ての希望の実現という視点がとりわけ重要と考えております。そのため、若い世代の経済的安定に加えまして、妊娠、出産、子育てに対しての切れ目ない支援、ワーク・ライフ・バランスの実現など、幅広い分野にわたりまして施策の実行に取り組む必要があります。
その観点から、現在、国といたしましては、昨年末に総合戦略を改定いたしまして、新たに、少子化対策における地域アプローチの推進、あるいは、地域の実情に即した働き方改革の推進に取り組むとともに、引き続き、少子化社会対策大綱と連携した結婚、妊娠を初めとした各段階での対応、あるいは出産、子育て支援を行うなど、幅広い分野で多様な政策を展開していくこととしております。
また、ほぼ全ての自治体で地方版総合戦略が策定されており、これから事業の本格的な実行の段階に入りつつあります。このような地方の創意ある自主的な取り組みに対しまして、国としましても、地方創生推進交付金あるいは地方創生応援税制、こういったものに加えまして、情報面、人材面でも強力に支援することといたしております。
引き続き、一億総活躍に向けた取り組みとも連携しながら、官民挙げて少子化等への対策を総合的に実施してまいりたいと考えております。
○重徳委員 この問題はもうちょっと時間もかけてやらなきゃいけないと思うんです。
一つ、資料の二ページをごらんいただきたいんですが、これは国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査でございます。
この下を見ますと、ちょっと驚くべき数字が出ております。特にわかりやすく一番差の出ているところを取り上げてみますが、下から三段目の二〇〇二年の調査によりますと、子供がゼロ人または一人という夫婦が、二〇〇二年には一二・三%だったのが、二〇一〇年になると二二・三%にふえているんです。一〇ポイントふえている。一方で、三人以上の方を見ますと、二〇〇二年は三四・四%、まあまあいたんですが、二〇一〇年になると二一・六%という、かなり大幅な変化が見られるんです。
この激増、激減の原因をどのように分析し、対策、細かい話はいいですが、この印象も含めてでいいですけれども、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○塩崎国務大臣 今、社会保障・人口問題研究所の第十四回の出生動向基本調査というのを引用していただきましたが、確かに、二〇〇二年から二〇一〇年にかけて、子供がゼロまたは一人の夫婦というのは一二・三から二二・三に増加する一方で、子供が三人以上の夫婦というのが三四・四から二一・六に減少している、こういう御指摘をいただきました。
他方で、理想とする子供の数の平均というのは、二〇〇二年では二・五六人、二〇一〇年では二・四二人。予定している子供の数の平均を見てみますと、二〇〇二年では二・一三人、二〇一〇年では二・〇七人と、達観してみれば大体横ばいということでございます。
こうした理想と現実の差が生ずる背景には、若者あるいは非正規雇用労働者の経済的不安定さ、あるいは子育ての負担感とか孤立感とか、結婚あるいは子育ての希望を阻害するさまざまな要因が複雑に絡み合っているのではないか。このほかに、恐らく、今の経済的不安定さというか、先行きがよく見えないということもあるんだろうなというふうに思います。
このため、結婚あるいは子育ての希望の実現を阻害する要因を一つ一つ取り除いて、希望出生率一・八がかなう社会を実現するために、働き方改革と総合的な子育て支援を車の両輪で取り組んでいこうということを一億総活躍社会づくりで申し上げているわけで、そうなれば、当然、対策としては大変幅の広いものになって、結婚、子育てあるいは妊娠の支援、あるいは出産後、子育て中の就業であるとか、あるいは子育てが困難な家族、子供たちへの支援とか、さまざまなメニューを用意しなければいけないということで、昨年末のすくすくのパッケージのほかに、一億で今プランをつくりつつある、こういうことでございます。
○重徳委員 この数字、本当にびっくりするような数字になっていると思うんですよ。
やるべき対策というのは、そうやってお聞きすると、何か当たり前のような感じがしちゃうんですが。
でも、さっきの所得制限一つとっても、別にお金持ちを優遇するとか、そういう観点というよりは、むしろ国の意思として、フランス、スウェーデンの例を引けば、やはり所得制限なんか設けずにやっているわけですから、だから、いろいろな意義があって、家庭生活の安定とか次世代の健やかな成長、そして第三子以降を重点的にする、何か、並べた一つに第三子以降というふうに言っていないで、私は、とにかく子供を産みたい、育てたいと自然に思えるような、そういう社会をつくっていく、これはもう国を挙げて応援していく、こういうメッセージも非常に重要だと思います。ですから、もちろん財政論、財源論も加味しなきゃいけませんけれども、とにかく国としてのメッセージをもっと強烈に、具体的な政策の中に組み込んでいく必要があるというふうに思います。
本当にこれは、次回以降、少し経済と社会保障の話も塩崎大臣と議論させていただきたいと思いますけれども、根幹的にはやはり人口問題が、日本の今後の先行きに対する息苦しさというものがあるんだと思うんです。経済は伸びない、財政は悪化する、そういう中で、お互いいがみ合うような仕掛けすら出てくるというようなことだと思っております。
最後に、一点か二点、大臣にお聞きしたいんです。
きょうの資料の四枚目、国民負担率ですね。OECDの三十三カ国の国際比較をしておりますけれども、国民負担率、租税と社会保障の負担率ですけれども、合算した水準、対GDP比で見ますと、日本というのは三十三カ国中二十七番目、つまり、かなり低い方なんですね。
これは、やはり基本的には、日本の政府というのは小さな政府。あるいは、逆に言うと、国民の皆さんは、政府から手厚い施しを受けるというよりかは自己責任で、例えば、家を建てるにしろ、医療を受けるにしろ、介護をするにしろ、育児をするにしろ、自己責任の社会だというふうに考えられるわけなんですね。
そういったことについて、しかも、先ほどから子どもの貧困の議論も出ておりますが、いまだに日本が国際的に見て相対的貧困率が高い方だとかいうのは、高度成長期で活躍されてきた団塊の世代の皆さんからすると、ちょっと意外なぐらいの事実じゃないかなと思うんです。
そういったこと、小さな政府、あるいは自己責任社会とでもいいましょうか、こういった社会のあり方について、この方向でいくべきだと大臣は思っておられますか。それとも、簡単に言えば北欧型、こういった方向を少し志していくべきではないか、こういうお考えでしょうか。
○塩崎国務大臣 この国民負担率にいわゆる財政の借金の負担が入っているかどうかはちょっとよくわかりませんが、日本の場合にはそれも加味していかなければいけない部分があろうかと思いますけれども、まあ、ほかにももちろんそういうことがありますが。
いずれにしても、国民が安心して暮らすために社会保障制度を持っているというのはどの国もそうでありますが、スタイルがいろいろある。自助自立を第一に、共助と公助を組み合わせる、そして、弱い立場の方にはしっかりと援助の手を差し伸べるということが私どもは大事だ、重要だというふうに考えています。
社会保障制度のあり方につきましては、国民の価値観などが非常に多様であって、しかし、それに応じて、例えば税金を中心としたり、あるいは市場でサービスを入手することを中心としたりすることなど、さまざまな形がとられておりまして、我が国では、自助を基本に共助と公助を組み合わせた仕組みということを私どもはよく言っているわけであって、社会連帯で社会保険制度を基本としていくという国民的な合意に基づいて医療、年金などの各制度が構築されていると認識をしているわけで、社会保障と税の一体改革というものを自公民で行ったのは、まさにそういうところにあるのかなと。
あのときに、当時の民主党政権でありますが、民主党政権が中心となって、自民党、公明党が、言ってみれば、国の形としての社会保障と税のあり方をお示ししたという意味において、民主党の皆さん方と私どもは、あの時点では、公明党も含めて、一定程度の国家像というものを共有したんだろうなというふうに思います。今の民進党がどういうことなのかは我々から見るとよくわかりませんが、そのうち明らかにしていただけることを期待するわけで。
日本の社会保障給付の対GDP比とか国民負担率というのは、アメリカよりは上回っていて、イギリスと同じ程度、それからフランスやスウェーデンを下回るということになっているのは、先生今御指摘のとおりであります。これは、それぞれの、言ってみれば国民の考え方をバックにでき上がってきている今日の形であって、あらかじめ望ましい水準がどこかにあって、そこを目指すというようなことではないんだろうなというふうに思います。
したがって、国民合意のもとでつくっていかなきゃいけないので、それぞれのお考えをどうまとめ上げていくかということに尽きるんだろうというふうに思います。ですから、国民負担をふやして社会保障もふやす、それも一つの考え方でありますが、今回の消費税でも、今、引き上げることに反対の方が多い中にあってどういうふうにそれを考えるのか、民進党の中でもよく御議論いただければと思います。
○重徳委員 最後に一言だけ。
まさに私も、民進党に参画した以上は、新しい社会モデルというものを構築していくという試みに参画をしていきたいというふうに思っております。
ですから、さっき少しだけ申し上げたつもりなんですけれども、これから、高所得者の人は税金を負担するだけでいいんだ、受益者は一定所得制限以下の人たちだけなんだ、こういう形では、やはり世の中の分断が起こってしまうということであります。
したがいまして、やわらかく言うと、みんなで社会をつくっていこう、みんなが負担者であり受益者である、こういう形に近づけていかないと、これ以上の税負担を上げる話はなかなか成り立っていかないんじゃないかなというふうに思っております。この点、ちょっとこれからさらに深めていこうと思っております。
きょうは若干中途半端でありましたけれども、これからまたよろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
○渡辺委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。
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