○渡辺委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 改革結集の会、重徳和彦です。
本日は、自殺対策基本法改正についての審議でございます。
私は、自殺対策議連の若者自殺対策ワーキングチームの事務局長として活動を行ってまいりまして、若者自殺の原因の一つは、やはり性犯罪の被害者となったことというのが大きいと言われております。
資料一をごらんいただきますと、これはある映画のチラシなんですけれども、「ら」という、拉致されるの「ら」であります、「ら」という映画であります。この映画は、この監督さんみずからが性犯罪の被害者の若い女性なんですけれども、昨年七月十四日に、その映画、国会の中で、院内で上映会も行いまして、きょうの参考人の清水さんとか初鹿委員にも協力いただきまして、上映会をやったという経緯があります。
きょうポイントにしたいのは、最初の第一歩であるホットライン、電話なんですね。この映画の中でも、被害者である主人公が最初に電話をするんです。電話をした先は警察です。ところが、警察は、所轄が違うということで冷たくあしらった。したがって、被害に遭った女性はその場で電話をできずじまい。結局、警察に届け出たのは数カ月後。この数カ月の間に同一犯人が次々と婦女暴行事件を繰り返す。その事態に対しても、被害者であるはずの女性がさらに自責の念に駆られてしまう、こういうような場面があります。
この最初の電話が、本当に本人に寄り添う電話で、相談員につながって、そして関係機関の支援が適切に行われていればこんなことはなかったんじゃないか、こういうことで、これが私の問題意識です。
そこで、よりそいホットラインという制度が平成二十四年から始まっていて、資料二をごらんいただきますと、その実績の推移がございます。
自殺に関して言えば、二十四年度からの三年間で、それぞれ、二万一千件、二万七千件、三万二千件という数字が出ているんですが、このよりそいホットライン、この実績、厚労省としてどのように評価されていますでしょうか。
○石井政府参考人 お答え申し上げます。
よりそいホットラインでは、生活上の悩みや自殺の悩み、DV被害など、さまざまな困難に直面する方を対象に、二十四時間三百六十五日、無料で電話相談に応じるとともに、必要に応じて面接相談や同行支援などを行い、具体的な問題解決につなげていらっしゃいます。
この事業ですが、相談内容を特定しない一般ラインのほか、自殺予防ライン、DVラインなど、各専門ラインを設け、相談内容別の対応を行っています。
平成二十六年度の延べ相談件数、先生が御配付の資料の中に書いてあるとおりでございますが、約二十九万件となっており、このうち、一般ラインに寄せられた相談は約十五万件、そして自殺予防ラインは約三・二万件、DVラインは約二・七万件となっております。そして、このうちの自殺予防ラインでございますが、全体の相談件数がやや減っておりますけれども、この自殺予防ラインに限ってみますと、これは増加をしているということも見てとれるわけでございます。
その意義でございますけれども、電話相談のみならず、具体的な支援を行うつなぎ先を確保する観点から、自治体の自立相談支援機関、社会福祉協議会、病院など、さまざまな関係機関との連携体制を構築しておりまして、各地域における自殺防止関係機関のネットワークづくりにも大変貢献をしているものというふうに考えております。
○重徳委員 ありがとうございます。
まだ三年ですので、これからもずっとこういう体制を充実させていくことができればと思っております。
ここで、参考人の清水さんにコメントをいただきたいんですが、今、意義については石井局長から話がございましたけれども、大体こんな評価かなというふうにも思います。清水さんの目から見てどうかということと、あと、一つ、これは非常に重要なホットラインなんですが、単年度の予算事業で行われているんですよね。だから、相談員さんが、もちろん、研修なんかを行って、気持ちもすごく持ってやっておられる方ばかりだと思うんですが、それでもやはり、来年この事業どうなっちゃうんだろうという状況の中では、いろいろな不安があったり、十分な相談体制とは言えない部分もあるんじゃないか。このあたりについて、清水さんの御見解をよろしくお願いします。
○清水参考人 よりそいホットラインは、自殺対策に資するというよりも、今や日本の自殺対策には欠かせない、そういう存在になっているというふうに思っています。
先ほど少し触れましたとおり、自殺のリスクを抱えた方というのは、多くの場合、複数の問題を抱え込んでいます。その複数の問題を解決しようと思うと、当然、複数の相談機関にたどり着かなければならない。
ただ、実際に、より深刻な問題を抱えている人ほど、支援先を探すという時間や労力をなかなか負担することができないという中で、地域にはさまざまな相談機関があるにもかかわらず、そこにたどり着けないがゆえに自殺に追い込まれていくという人が、今、日本社会ではたくさんいるわけなので、そうした社会資源、相談機関と、問題を抱えている本人との深い溝を埋める、そういう役割をこのよりそいホットラインというのはしているんだと思います。
この実施団体である社会的包摂サポートセンターの熊坂代表がよくおっしゃっていることなんですけれども、自殺でいうと、人が亡くなったときにはどこにかけるか、一一〇番にかけます。では、自殺行動をして、未遂だった場合はどうするか、これは一一九番です。でも、一一〇番や一一九番にかける前に、命や暮らしの危機に陥ったときに簡単にかけることができる、やはりそうした社会の第三のダイヤルとなるような、そうした電話相談が極めて存在として重要だと思いますし、よりそいホットラインはその役割をまさに果たしていく必要があるんだというふうに思っています。
課題でいいますと、まさに御指摘いただいたとおり、これは単年度の事業ですので、来年度、事業が続くのかどうか、それは予算が通ってみないとわからない、あるいは、これが先々予算が安定して確保されるのかどうかもわからないという中で、事業を行う主体あるいはその事業にかかわる相談員は、安定してこのよりそいホットラインに本当にかかわれるのかどうかという不安を抱えながら日々相談に当たることになりますので、ぜひこれは、制度としてしっかりと社会の中に安定させていく、安心して相談員も相談対応できるような体制をつくっていただくという必要があるんだと思います。
○重徳委員 今、清水さんが言われたように、一一〇番、一一九番の前に、まずよりそいホットラインだと。非常にわかりやすいし、筋の通った御意見だったというふうに思います。
また、法制度にちゃんと位置づけるべきという問題について議論してみたいと思うんですけれども、今、いわばワンストップの相談窓口というと、一番近い制度は生活困窮者自立支援制度ではなかろうか。
これは今年度からスタートをして、今一年程度たとうとしているところなんですが、資料三をおつけしておりますけれども、全国の新規相談受け付け件数を見ますと、十八万八千五百九十件、プラン作成が四万四千件、就労支援対象者数は二万三千件というように、一定の数字的なものも出てきていると考えます。
ここで、やはりこれは法律に基づく制度ですから、ちょっと大臣に御見解をお伺いしたいんですが、この生活困窮者自立支援制度、入り口としては経済的な困窮者という切り口から入るんですが、さまざまな関係機関との連携をこの制度も想定をしております。そういう意味で、よりそいホットラインとも共通した部分が非常にありますし、法律上、何かしら位置づけるとすれば、この生活困窮者自立支援法の中によりそいホットラインというものを位置づけていくというようなことが一つの有力な選択肢ではないかというふうに思います。
清水さんが言われた、やはり法制度にきちんと位置づけて安定的な相談体制をしくためにも、その点、御検討されてはいかがかと思うんですが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 今、よりそいホットラインを生活困窮者自立支援法の中に位置づけたらどうだ、こういう御提案だというふうに理解をさせていただいております。
幅広く相談を受け付けるというのがこのよりそいホットラインの特徴だという話があったと思いますけれども、生活困窮者に対して包括的な支援を行う生活困窮者自立支援制度の相談支援機関が連携するということは、自殺対策の体制強化のためにも極めて重要だと思います。両者が連携をするように、繰り返し自治体にも周知をしているところでございます。
一方で、このよりそいホットラインを生活困窮者自立支援制度に位置づけることについて御提案でございましたけれども、これは、対象者を生活困窮者に限らず、自殺やDV被害の悩みを初め、幅広く相談受け付けができるこの事業の目的がやや見えにくくなるという課題もあるのかなというふうにも考えられるわけでございます。
いずれにしても、生活困窮者自立支援制度との連携を進めて、よりそいホットラインがより一層効果的に活用されるように、その改善について絶えず検討はしていかなければならないというふうに思うところでございます。
○重徳委員 大体予想された御答弁なんですけれどもね。やはり、生活困窮者自立支援制度というと、経済的な生活困窮者がまずは対象だよと。
でも、そういうことを言っていると、全ての制度は、まずは何かの対応なんですよ。失業してしまった人、今の生活に困っている人、DVを受けた人、いじめを受けた人、犯罪に遭った人、そういうそれぞれの別々の切り口でしか、基本的には制度というのはつくりにくいんです。
だけれども、その先に、さまざまな関係機関と連携する、そういうネットワーク的な広がりを持った制度を構築していかなきゃいけないという意味では、これは全ての制度共通なんですよね。
資料四、おつけしておりますのでごらんいただきたいんですが、生活困窮者自立支援制度のことです。
やはりあらゆる制度と結びつかなきゃいけないということで、今まで、これは通知という形だそうですが、この生活困窮者自立支援制度という核から十四本の通知が出ているというんですね。十四の関係機関との連携をちゃんとつなぐように、こういう議論がこれまでもされて、全国に通達が出されているわけであります。
ここを法制度としてどういうふうにしていくかというのは一つの大きな課題だと思いますが、いずれそういうことにも踏み込んで、よりそいホットラインも法制度に位置づけるべきだというのは、私はこれからも主張し続けようと思いますけれども、まず、きょうは自殺対策基本法の議論でありますので、この生活困窮者自立支援制度、これは、図を見ると、自殺対策というところにはまだ結びついていないというふうに見えます。
今回の基本法改正を機に、生活困窮者自立支援制度、この各種十数本ある連携通知の一つに、自殺対策というのを加えるお考えはありますか。
○石井政府参考人 お答え申し上げます。
既に厚生労働省では、生活困窮者自立支援制度とよりそいホットラインとの連携のための通知を発出いたしているところでございますが、御指摘の自殺対策施策との連携通知、これは現状において発出いたしておりません。
ただ、生活困窮者の方の中には、メンタルヘルスの課題を抱え、自殺を図るおそれのある方もおられます。自殺対策分野との連携は重要と考えておりますので、今後、この分野との連携のあり方についても通知でお示しをしてまいりたいと考えております。
○重徳委員 今局長から、明確に、通知を出されるということでありますので、さらに一歩前進ということだと思います。ぜひお願いします。
それからもう一つ、自殺対策、今度は大臣にお尋ねしますが、今回の自殺対策基本法、この大きなポイントは、各都道府県、市町村が自殺対策計画というものをきちんとつくって、そして、今は、生活困窮者自立支援制度の中では、さまざまなところと連携するようにというような仕組みをどんどんどんどん充実させていっていると思いますが、自殺対策においても、各都道府県、市町村においてそういった連携体制をきちっとつくっていく、これを計画に盛り込んでいく、そして実行していく、これが今回の改正の最大のポイントの一つだと思うんですね。
その意味で、きょう議論してまいりましたよりそいホットライン、そして生活困窮者自立支援制度、こういったものをきちんと位置づけて、そして、生活困窮者自立支援制度は、その制度においては、今局長が御答弁されたように、自殺対策とも連携するという通知を出されるということでありますが、自殺対策の計画の中にも、生活困窮者自立支援の制度と自殺対策、そしてよりそいホットラインというものをきちんと結びつけて連携させていく、こういったことを位置づけていくということを、主体はもちろん自治体ですが、厚労省としてもその取り組みを促していく、こういうお考えがあるかどうか、お尋ねいたします。
○塩崎国務大臣 自殺総合対策大綱におきまして、生活困窮者への支援や、よりそいホットラインも含めた無料電話相談支援について、自殺を防ぐための社会的な取り組みの一環として掲げられております。自治体においては、この大綱の内容も踏まえて、今お触れをいただきました自殺対策計画、これを策定するということになるというふうに考えております。
厚生労働省としては、こうした自治体の計画の策定を支援することが今後とも重要と考えておりまして、地域自殺対策推進センターの全ての都道府県、指定都市への計画的な設置を含め、御指摘の内容も含めて、同センターが計画策定に必要な助言を行えるような体制をしっかり確保していきたいというふうに考えております。
○重徳委員 ごめんなさい、今、私が質問したのは、生活困窮者自立支援制度を位置づけるかということも含めて質問させていただいたものですから、それについてはいかがですか。自殺対策計画の中に生活困窮者自立支援制度を位置づけるかどうか。
○塩崎国務大臣 両者の関係は大変深いというのが先生の御指摘でありまして、そのとおりだと思いますので、どういうような形で織り込めるか、よく考えてまいりたいというふうに思います。
○重徳委員 あらゆる制度の乗り入れ、ネットワーク化、これが本当に肝だと思いますので、ぜひとも前向きに取り組んでいただきたいと思います。
この後も追いかけていきますので、よろしくお願いします。