H26.6.13 厚生労働委員会
―労働者の健康を守るために―
========================================
○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦です。
きょうは、参考人の皆様方、お忙しい中をお越しいただきまして、また、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。
私からは、ストレスチェックの制度を中心にお伺いしていきたいと思っております。
既に、この労働安全衛生法の改正案につきまして審議を進めているところですので、田村大臣初め厚生労働省のさまざまな答弁もいただいている段階なものですから、それと少し照らし合わせるような形で、参考人の皆さんの御意見を伺ってまいりたいと考えております。
まず、圓藤参考人にお伺いしたいと思います。
圓藤参考人が理事長を務められております日本産業衛生学会、こちらの方で、これまで、今回の労働安全衛生法の改正案も三年前に一旦国会に提出されたという経緯もありまして、それに対してどういう意見をお持ちかというところからずっと議論を進めてこられたと思うんですけれども、一貫して言われているのが、ストレスチェックがメンタルヘルス不調の早期発見、つまり二次予防に利用されるなら多くの問題点があるという指摘をされています。
これはどういった問題点があるかということをお伺いしたいんですが、というのは、ストレスチェックを行うことによっていろいろな労働者の状況が実際には把握できるわけですので、一次予防が目的であって二次予防は目的でないとしても、主目的は一次予防だけれども、結果的に、そのストレスの状況によっては、精神疾患が明らかになる、判明するということだって当然出てくると思いますので。
おとといの田村大臣に対する私の質問で、これは一次予防が目的だよと言うと、建前として言うのはもちろんいいんだけれども、それだけではないというか、非常に微妙な言い方なんですが、一次予防のためだけじゃないですよねということに対しまして、主な目的は一次予防です、ただ、決して二次予防は関係ないということを言っているわけではない、だから、まずは一次予防をして、その結果、二次予防につながっていけば、それは、働く方々にとっても、健康を守るために有用なことであろうというふうに田村大臣はおっしゃっています。
この捉え方は基本的に私は妥当だと思っているんですが、ともすると、運用上いろいろな使われ方がされて、学会の方で懸念されているようなことにつながり得るのかなとも思うんですが、まず、どういったことを懸念されているかということについてお伺いします。
○圓藤参考人 ストレスチェックを行うことによって二次予防できると考えてしまうと、大きな間違いがありますよということで指摘いたしました。
主たる目的は一次予防です。その目的を果たしている中で、副次的に二次予防につながるということは十分あり得る。したがいまして、大臣のお答え、私は聞いておりませんが、今の御説明どおりでしたら、そのとおりであろうかというふうに思っております。
○重徳委員 わかりました。
それで、次に三柴参考人にお伺いしたいんです。
このストレスチェックなんですけれども、本来的には心理的な負担の程度、状況はどうかということに用いられて、正しい使われ方をすればもちろんそれがいいわけなんですけれども、これはちょっと邪推も入るんですが、使用者側、事業者側から見れば、この社員はストレスに強いんだろうか弱いんだろうかとか、つまり、言い方は悪いですけれども、使い勝手がいい社員なのかどうかということを判定したり。
あるいは、直接、社長さんは職場の現場まではわからない可能性もありますので、そこでパワハラを受けているのかどうかとか、上司との関係がうまくいっているのかどうかとか、そういった適切な配慮という意味での人事的配慮ならともかく、職場環境の改善という意味ならいいんですけれども、法律が想定していることとちょっと違う人事に使われるような懸念があるのではないかなというふうに私は思うんですが、この辺、どう考えたらよろしいものでしょうか。
また、それを防ぐために、どういう使われ方ができるように配慮すべきか。このあたりについて見解をお願いします。
○三柴参考人 冒頭でも申し上げたことなんですけれども、このストレスチェックというのは、使う人間次第という面がどうしてもあることは否めません。
ですので、事業者の側にもその他関係者の側にも十分、偏見や、一般に言う悪意に基づく使用がなされないように啓発がされなければならないわけですけれども、実際、ストレスがかかった状況だからといって、それを悪く受けとめるだけではなくて、適材適所に活用するとか、本来の人事労務管理の質の向上のために使うというのはダイバーシティーの観点でも重要なことですので、そういった方向にいざなうのが妥当ではないかと考えます。
○重徳委員 ありがとうございます。
それでは次に、寺西参考人にお伺いしたいんですが、きょうの御意見の中でも、労災認定されているのは過労死の氷山の一角であるということをおっしゃいました。ここに御提言されているとおり、産業医等が第三者的にストレスチェックの結果を評価し、適切な対応を事業者にアドバイスできなければ、せっかくのストレスチェックも意味がありません、このようにおっしゃっています。
こういった仕組みについては国の方でしっかりと考えていく必要があると思うんですが、実際に、非常に難しいことだとは思うんですが、これまで本当に悲しいことに起こってしまった過労死ということについて、もっと、どのようなタイミングで、産業医などの方がどのように事業者側に物を言っていけば救われた命があったはずだと。このあたりについて、思いを少し述べていただければと思います。
○寺西参考人 先ほど意見陳述でも述べさせていただきましたが、やはり、大企業であっても、西垣さんの息子さんのような事例というのが本当に多いです。大企業であっても、メンタルで休職をしていても会社都合で引っ張り出される、それも、産業医の判断ではなくて本人任せになっている。そこが、やはり産業医であっても専門的な知識がなければ、そういった本当にお粗末な形で、形ばかりの健康管理になってしまっているというのが御紹介した西垣さんの事例であります。
ですから、そういった意味では、メンタルというのは体の故障ではございませんので、専門医でもわかりにくいところはあろうかと思いますが、そこは働いている人の立場に立って、会社もメンタルというそのものの意識を高めていただいて、本当に心の病を治していただける、このような休職中の人をまた職場の会社都合で引っ張り出すようなことがあってはならないと考えております。
こうした仕組みが真面目で仕事熱心で優秀な人を死に至らしめる原因だと考えておりますので、こうしたことは、本当に、一企業だけではなくて国の方針として定めていただきますように切にお願いしたいと思います。
○重徳委員 ありがとうございます。
それでは次に、圓藤参考人と三柴参考人に同じ質問にお答えいただきたいんです。
産業医がいる事業所においては、当然、産業医がかかわることが望ましいわけなんですけれども、そして、これは前回、田村大臣に私が質問を申し上げたときも、産業医が望ましいということは大臣もおっしゃっているんですが、一方で大臣が言われたのが、産業医の数がやはり限られております、これからストレスチェックを五十人以上の全事業所に義務づけるということになれば、なかなか対応するのも大変だろうということなんですね。
ですが、一方で、ストレスチェックの取り扱い方として、個人名も含めて全部事業者にぽんと渡すだけでは、なかなか適切な運用にならない可能性がある。したがって、学会の方からの御提言にあるように、やはり産業医が適切に情報を加工して、加工といっても変に加工するんじゃなくて適切に加工して、事業者側に対応を求める、伝えるということが理想的なんですが、なかなか大変は大変だと思います。
国に対して、こういうことに対してどのような指針を示すべきとお考えでしょうか。現場の実情なんかも含めてお答えいただけるとありがたいです。
○圓藤参考人 まず、メンタルヘルスだけを切り離して考えるのではなく、心と体全てにおいて産業保健活動というものが必要であるということを御理解いただきたいと思います。
次に、産業保健活動のサービスを提供するのは五十人以上の事業場に限定するというのが問題であろうかと思っております。確かに、月一回職場に行くということは五十人未満の事業場では難しいかもわかりませんが、それに準ずる形で産業医が執務するということは十分可能であります。
現在、日本医師会の認定産業医は九万人在籍しております。まだまだ産業保健を提供する能力は備えております。供給は可能であります。したがいまして、その先生方を活用していただきたいと思っております。そうすることによって、メンタルヘルスも含めて、産業保健についてサービス提供できるものというふうに思っております。
○三柴参考人 まず、最初に行われるストレスチェックの結果というのは事業者には渡らない前提なので、労働者の同意があれば別ですけれども、そこを踏まえた上でですけれども、産業医は、認定の数だけでいうと既にたしか七万人ぐらいに達しているはずで、相当多いんですね。ですので、今回の法案でも、ストレスチェックに関する医師への研修、私の記憶違いがなければそういったオーダーになっていると思うので、そういった方への研修が鍵になってくるだろうというふうには思います。
あとは、企業の外部に産業医のチームをつくるということが厚労省から提案されておりますので、そういったところをうまく活用して、今までと違ったスタイルを築いていくという方法はあるだろうと思っております。
以上です。
○圓藤参考人 先ほど言いました、五十人以上の事業場には産業医を選任する、五十人未満の事業場にはどのようにして産業医を選任するかという方策は、幾つかあろうと思います。
一つは、大きな企業で分散事業場で分かれている場合、それは企業として対応できるであろう。それから、グループで活動している場合、グループとして産業医を選任することも可能であろう。それから、個別の事業場の場合、それは地域ごとに一つのチームをつくるということが考えられるであろうと思っております。例えば、地域産業保健センターという支援センターがございます。その中に産業医はたくさん在籍しております。その者がその地域全体の事業場を担当するということは十分可能であろうと思いますので、その仕組みを発展させていただければいいのではないかと考えております。
○重徳委員 ありがとうございました。
また来週もこの法案の審議がありますので、引き続き、きょうの先生方の御意見を参考にさせていただきまして、真摯な審議を行ってまいりたいと思います。
どうもありがとうございました。