国民年金のモラルハザード・納付率は60%!
○後藤委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 ありがとうございます。日本維新の会の重徳和彦です。本日もよろしくお願いいたします。
本日は、政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして議論をしてまいりたいと思います。先ほどから足立委員や井坂委員が指摘されておりましたような国民年金の体系、全体につきまして、少し分析を加えながら質疑をして深めていきたいと考えております。
まず、基本的に、この日本の国民皆年金でありますが、保険の世界ですね。税とか、強制的に徴収される世界とかではなくて、保険の世界というふうに整理がされております。ですから、保険である以上は、自主的に保険料を納めて、納めた分に応じて給付が年金として払われるということだと思うんですけれども、そういう意味では、強制されることは余り基本ではないんだけれども、逆に言うと、払いやすい仕組みをつくっていくということはありかなと思います。
ですが、今回の法案におきましては、その使いやすさ、入り口を広げる、間口を広げるというところには非常に気配りがされていると思いますが、その副作用といいますか、やはりモラルハザード、いつ払ってもいいんだとか、そんなようなモラルハザードを及ぼす可能性がある。さらに言うと、それが結局は年金財政に支障を来すようなことになるのではないか。こういう視点からまず質問に入りたいと思います。
初めに、保険料の後納制度につきましてでございます。
平成十六年に年金の大改革が行われてから、もう無年金とか低年金の問題はずっと指摘をされ続けていたわけで、これに対しまして、後納制度というものが平成二十三年の法改正で、徴収時効二年を経過した国民年金保険料について、三年間、二十四年の十月から二十七年の九月までに限り、本人が希望した場合には、徴収権が時効消滅した保険料について、過去十年以内の納付を可能にしたというものなんですが、過去を追っかけてみますと、政府の原案では、もともと三年間に限りじゃなくて恒久的な措置だったとして政府提案がされたんですが、いや、それじゃ本来の期限までに納付する意欲が低下する、したがって、かえって低年金を招くんじゃないかということで、三年間の時限措置に修正が衆議院においてはされたということでございます。
ということで三年に限ったと思っていたら、つまり来年の九月までの措置だと思っていたら、今度、また延ばすということでありますので、真面目にその三年間の期限を守ろうとした人にとっては、何かまた、やはり、いつでもいいのかなというふうに見られちゃうんじゃないかなというふうに思うんです。
こうした過去の議論も踏まえて、それから、先ほど、後納制度によって納付率が上がったというような御答弁もほかの委員の方に対してあったと思うんですが、そのあたり、どのようにごらんになっているんでしょうか。
○樽見政府参考人 お答え申し上げます。
後納制度は、今お話ありましたように、二年の徴収時効が過ぎた過去の未納期間につきまして、特別の時限措置ということで、保険料を事後的に納めることを可能とする制度ということでございます。
後納制度について、まさに、後で納められるということになると、そのときに納めなくてもいいという議論が出るのではないかという議論がございました。そういうことで、先ほども御説明申し上げましたけれども、後で納めるときには、最初に納めるときよりも若干金額を加算して納めるというような仕組みになっているわけでございます。
この二十四年からの納付率、これだけが要素ではないと思いますけれども、状況を見ますと、納付率は回復傾向という形になってきているということでございますので、これによってかえって納付率が下がるというようなことにはなっていないのではないかなというふうに思っております。
したがいまして、今回も、後納制度、さらに三年延ばすということでございますが、ただ、やはり保険の原則からいたしますと、あくまで例外的な考え方ということになりますので、三年の時限ということをやらせていただくということと、本来納めていただくべきときに納めていただくものに比べますと、やはり少しお金を高く払っていただくという仕組みにしたいというふうに考えているというところでございます。
以上でございます。
○重徳委員 今回、もう一つ、若年者猶予制度、これが延長されるというのもございます。
これまでは三十歳未満だったところを、五十歳未満まで猶予措置を広げるということです。時限措置は既にもう延びているんですね。年齢が三十歳から五十歳に延びるということなんですね。
最初、十七年から二十七年までの十年間の措置というのも、一度、二十四年あたりで、これは有意義であるというふうに評価された上で、もう十年延びて、今三十七年までの制度になっているということなんですけれども、このあたり、どのように評価されたのか、ここでお伺いしたいと思います。
○樽見政府参考人 お答えいたします。
若年者の納付猶予の制度でございますけれども、これも、先ほど申し上げましたけれども、誰でも猶予できるというわけではなくて、一定の所得以下の方が対象になるわけでございます。
それで、例えば、世帯主の方、親御さんなんかが一定の所得があるけれども、御本人には所得がない、だけれども、そこで、したがって、親に所得があるということで免除にはならないけれども、御本人が所得がなくて苦しいというときに、いわば出世払いといいますか、後で納めていただくということができる。また、猶予の手続をとっていただきますれば、障害、遺族というような給付の対象、あるいは老齢についての資格期間への算入ができるというようなことでございます。
それが、今までは、二十九歳まで、三十歳未満ということでございまして、三十歳になった途端にその対象から外れてしまうということで、これが不便であるという声もあったわけでございますけれども、いわゆる中高年フリーターというようなものも出てきているというようなことも言われておりますので、そういう中で、こういういわば出世払いの制度を利用しやすくする。もう少し年が上の方まで利用して、年金制度とのかかわりを持って、全く未納というふうになるのでなくて、利用しやすくするということで、今回、この年齢の引き上げということを考えたわけでございます。
したがいまして、こうした制度を利用していただきますと、納付機会の確保、それで、先ほど大臣も申し上げていましたけれども、無年金というのが少しでも減らせる、あるいは低年金というところも、もう少し納付を後からしていただきやすくするというようなことで、将来の年金額をふやす、そういう効果を持っているというふうに考えております。
○重徳委員 無年金、低年金という状態をどこまで心配するのかという議論もあると思うんですね。これは、本人の選択によって払わないということも、保険制度を前提とする限りあるわけですので、そこについても後ほど議論したいと思うんです。
今審議官がおっしゃった、出世払い制度を利用しやすくということなんですが、先ほど申し上げたように、利用のしやすさということと、それに伴う副作用ということについてよく考えなきゃいけないと思うんですね。
人間、やはり、猶予すると言われれば、それは後から払おうかなという気になります。ですから、実際には頑張れば支払えるとか、あるいは家族にちょっと金を融通してくれと言えば払えるような人も、自分自身の所得がないからちょっと猶予してくれと言って、後で払いますと。後で払うときに、払うべきものもあるし、そこに猶予されたものを加えて払うということですから、それもなかなか大変な話であります。ということが一つありますので、ですから、これを後で追納してねといったときに、ちゃんと追納するかどうか、できるかどうかというのは、なかなか、人間、厳しいものがあるんじゃないかなと思います。
それからもう一つは、これもかなり本質的な問題なんですが、結局、後で払うにしろ、いつ払うにしろ、払っておいた方が得だよと思って払うかどうかというのは非常に根本的な問題だと思います。
今、納付率は六〇%、数%上がったといっても六割ですから、六割の方々が、払った方が絶対得だ、たんす預金だとか自分で運用したりとか民間保険の方が得だと思わずに、絶対、国民年金を払っておいた方が本当に得だと思っている方はどれほどいるか、ちょっと疑問もありますね。本来、保険料を払った上に、半分は税金で追加した上で返ってくるんですから、そこだけ考えれば得に決まっているはずなんだけれども、どうもそういう感じがしない。
これはやはり賦課方式ということが原因ですね。今自分が払った分がそのまま戻ってくるんだったら、税金分もつけ加えて戻ってくるなら得に決まっているんですけれども、自分に返ってくるんじゃない、今の高齢者の方に払っているという部分があるものですから、どうしても、払った分だけ返ってこないような気がするというか、そこもちょっと大臣に御説明いただきたいんです。
つまり、よっぽど長生きすればそれは元は取れるだろう、しかし、普通の人生の寿命が来て死ぬと思っていたら、その間に元を取り返せないんじゃないか、こういう感覚があるのではないか。そういう中で、今回、猶予制度を拡充しますとかいうことを言っていくわけですよね、そういう制度ができるわけですから。
この猶予制度、使ってくださいと言うんですか。それとも、制度はできたけれども、でも、余りお勧めばかりしているとどんどん先送りになっちゃうから、どちらかというと、本来は、減免の制度もありますので、ほかの制度を使っていただきたい、猶予制度というのは余り表に出さずに、しかも五十歳まで使えるなんて言っちゃったらもうどこまでも延期されてしまいますので、余り宣伝しない方がいいような気もするし、どういうふうに周知をされるんでしょうか。
それから、もともと、年金保険料を払ってくださいと厚労省あるいは年金機構の方が被保険者の方に説明するときに、必ず後でちゃんと返ってきますからと今胸を張っておっしゃっているんでしょうか。
このあたり、どう周知、説明しているのか、そして、これからしていくのか、大臣から御答弁願います。
○田村国務大臣 猶予制度は、まず、なぜ猶予制度を引き延ばしたか。
今も話がありましたとおり、若年フリーターと言われた方々が年長フリーターになってしまっている。これは、もう二十年近く、ずっと成長しない日本の経済の中において、そのままフリーターというような形で生計をつないでいる、もしくは親と同居しながら生活されておられるという方々がおられます。そういう方々を対象にした場合に、保険料を払う能力が今はない、しかしながら、親がおりますから、世帯で見るとこれは免除にならない。
この場合、この猶予制度に入ると、メリットの一つは、それは、もし何かあったときに、死亡したときに遺族年金が出る、それからもう一つは、障害者になったときに障害基礎年金が出るというのがあります。
しかし、もう一つのメリットというのは、空期間ということでありまして、年金の受給資格期間にはカウントされるということであります。ですから、今は二十五年でありますけれども、二十五年にカウントされる。だから、受給資格期間が足らなくなっちゃって年金を全くもらえないということは防げるわけであります。
ところが、一方で、保険料を納めません。しかも、これは免除でもありませんから、何ももらえないですよね。もらえないということは、私は今猶予を受けていますからこれでいいんですと。それは、もらえないものを猶予を受けたって、老後、何の意味もないわけであります。
ですから、そこは、追納してください。追納すれば、その部分はちゃんと埋まりますから、場合によっては満額ということもあり得るかもわかりません。でありますから、本当に苦しいときにこれを使っていただいて、やはり納めていただくというのが本来でございますので、所得があったら猶予にもならないんですが、なるべくなら、やはり、頑張って所得を取っていただいて、納めていただく。
そのために、我々は、経済をやはり好転させて、そういう方々がしっかりと保険料を納められるだけの所得を持っていただけるような、そういう経済環境をつくっていかなきゃならぬということでございまして、一方では、そういうようなことも我々はやっていかなきゃならぬ、このように考えております。
○重徳委員 もう一度、金曜日にもう少し長い時間をいただけるというふうに聞いておりますので、さらに深めたいと思います。
次に、年金記録の訂正手続についてなんですが、これは、先ほど長妻委員からも御指摘がありましたように、紙台帳とコンピューター記録の照合がことしの一月にほとんど終了したということで、一山越えたという話がございました。
ただ、いわゆる消えた年金記録、安倍総理が最後の一人まで必ずチェックをしますというふうにおっしゃった第一次安倍政権のときの大問題ですね。あれが、実際、五千万件ぐらいあったのが二千万件になりましたと。
よくよく聞けば、これから短期間の間に、二千万件があっという間にゼロに近づいていく、最後の一人までというふうに近づいていくとは思えないんですが、思えないというか、そういう説明を聞けば、なるほど、そんな気もするというふうになるんですが、やはり、今回の法案で、一山越えたということを機に法整備をしていく以上は、消えた年金記録の問題は、結局、現時点でどうなんだということをきちんと説明を、明言する必要があるんじゃないかなと思います。
今回、新しく法手続を整備して、いろいろな行政手続を、法的な位置づけをして、場合によっては訴訟にもつなげられるような法整備をするということなんですが、何か今さらのような感じもしますし、それから、職員の体制、事務局体制もまだまだ急になくすということでもないような印象もあります。
一体、年金記録の訂正手続というものは、いつまで、どのような体制で続けるんでしょうか。そして、そのときの費用対効果もありますね。人員も、これまで、正職員を千五百人体制で置いていた、第三者委員会の事務局にも数百人規模で置いていた、これはこのまま続けるんでしょうか、それともぎゅっと縮小するんでしょうか。そのあたりについて御説明を願います。
○樽見政府参考人 年金記録の訂正手続でございます。
現在総務省の方でやっていただいております年金記録確認第三者委員会の仕組みは、年金記録問題に対応するということで平成十九年に設けられたものでございますけれども、これまでに約二十八・四万件を処理してきている、ことしの三月末まででございますけれども、ということでございますが、現在、月別の受け付け件数を見ますと、ピーク時に比べますと八割減という感じで、一番多かった十九年、二十年ぐらいに比べますとかなり、率直に申して、減ってきているという状況にございます。
しかし、一方で、申し立て事案の内容が変化をしてきておりまして、かつては、過去の国民年金の記録の訂正、国民年金について保険料を払ったはずなのに記録がないということについての訂正を求める事案が中心でありましたが、最近は厚生年金の、特に、厚生年金の適用は事業主から届け出が出ます。事業主と御本人の認識がずれていて、御本人はこういうふうになっているはずであるということについて、事業主の方からの届け出が間違っている、あるいは違っている、漏れがあるというようなことの案件をめぐる議論というものが割合として増加をしているということにございます。
そういうことを考えますと、もちろん、年金記録問題の中でありましたように、日本年金機構の方で、何らかの事務的なミスということ、これも大分減らすように努力をしておりますけれども、まだ出てきておりますけれども、それだけでなくて、やはりやや構造的に、そういう事業主、本人、日本年金機構という三者の間で何らかの形で間違いが起こる可能性というのをこの仕組みははらんでおるということでございます。
第三者委員会の報告書、第三者委員会としても二十三年六月に報告書を出しておりまして、そこでも、司法手続も考慮に入れた年金記録確認の仕組みが必要だということを書かれておりまして、政府において新しい年金記録確認体制の構築について検討をするべしという御意見をいただいております。
そういうことを踏まえましての今回の訂正の手続ということでございますので、考え方といたしましては、臨時というよりは、恒常的というふうに考えております。
体制等につきましては、実態に合わせて、ただ、しっかりと、従来の第三者委員会のときに比べましておくれるとか、利用者の方々に御迷惑をかけるということのないようにしていきたいとは思いますけれども、実態に基づいた形での体制というものを今後検討していきたいというふうに考えてございます。
○重徳委員 これからは厚生年金の事業者の記録の訂正を中心に取り扱っていくというようなお話でございましたが、これとて、先ほど足立委員からありましたが、マイナンバー制度の充実によりまして、かなりの部分、自動化といいましょうか、効率化が図られるんじゃないかと思うんですが、今おっしゃったような観点から、マイナンバー、どういうふうに機能するといいなと思われていらっしゃいますでしょうか。
○樽見政府参考人 マイナンバーの制度、まさに社会保障制度、税制のより公平な運営を実現する、それから行政の効率化、国民の利便性の向上ということで大きな意味があるというふうに思っておりまして、着実に導入を進めたいと考えておるところでございます。
年金制度の運用ということで申しますと、まず、御本人の確認ということで、それがより確実かつ効率的になると思いますので、それによって年金記録の適正な管理ということに役立てたい。
それから、所得あるいは住民票といったような情報について、市町村、関係機関から入手して届けに添付をしていただくというような事務が今までもあるわけでございますけれども、そういったところについて、それをこちらでマイナンバーということで確定をして、直接入手するということがより確実、迅速にできるようになると思いますので、そういう加入者の方々の手続の添付書類の簡略化、あるいは不要にするといったようなことができるのではないかというふうに思っております。
また、ほかの制度に関する情報を私ども日本年金機構の方で入手しやすくなるということがあると思います。入手するときに間違いがなくなるということがあると思いますので、いわゆる給付調整などにおける連携というものを強化するということができるのではないかというふうに考えておりますので、そういうことで、しっかり検討を進めて、使っていきたいというふうに考えております。
○重徳委員 それでは、次に、納付率六〇%という状況において、強制徴収体制を強化するというようなお話が先ほどからございます。この話題に移してまいりたいと思います。
六〇%なんという納付率、非常に低いと思います。でも、これは保険だからしようがないのかな、六割しか保険に加入する希望者がいないんだったら六割だろうと。ただ、これは、法律上は、国民年金法の八十八条で「被保険者は、保険料を納付しなければならない。」という、義務なんですよね。だけれども、この納付義務を定めた法があるにもかかわらず六割というのは、これはもう本当に、法の趣旨に反する、法を損なうような状態に陥っていると思うんですが、このあたりはどのようにごらんになっているんでしょうか。
○樽見政府参考人 御指摘のように、国民年金保険料の納付ということにつきましては、公的年金は世代間の支え合いによって成り立っているものでございますので、それを支える、誰もが守るべき義務であるということでございます。
そういうことで法律にも書いてございますので、納付率の現状について、率直に申し上げまして、そういう観点からすると、大変厳しい状況にあるというふうに認識をしてございますので、法の趣旨を踏まえて、しっかりと納付率を向上させるように取り組んでいかなきゃならないというふうに思います。
今回の法案の内容もそれにつながるものでございますけれども、あわせて、予算措置の方で強制徴収をしっかりやっていくとか、あるいは、年金に関する広報、周知、教育といったようなところについても幅広く取り組んでいかなければならないというふうに認識しております。
○重徳委員 結局、この国民年金の法律で義務とされている、だけれども保険だ、ここが何か中途半端なわけですね。だから、この辺のもやもやとした感覚を先ほどから各委員が指摘されているんだと思います。だって、義務なんですから、義務だからちゃんと守りますというのは当たり前の話で、守っている人から守っていない人を見ると、何か自分がばかを見たような気がしてしまいます。
ですから、義務を徹底するなら、税金並みにしっかりと罰則を設けたり、上乗せというか追徴課税のようなことを行ったり、それから、査察の権限を持ってしっかりと徴収するということが必要だと思います。
でも、逆に言うと、保険だから、法律上義務とは書いてあるけれども、罰則も何もないし、任意なんだ、だから、払わなかったらもらえない、これだけの話なんだよということになると、最初に申し上げましたように、では、そういう判断をして払わない人が低年金になったり無年金になったりすることをどこまで政府が気にかける必要があるんだろうか、こういうことになると思うんですね。
人間、どうしても、若いうちには自分の将来のことを余り考えない人も多いですから。私もそうだと思います。俺は無年金でもいいんだ、自分で金をためて、しっかり働いて、政府なんかに頼らないんだ、こういう判断をして、覚悟を持って年金をもらわないという決断をする人がいても別に、そこまで覚悟のできている、そして責任をとる、こういう人間ばかりであれば、そういう方はもう納めないでもいいですよという世界があってもおかしくはないんじゃないかなと思うんですが、まあ、どうしても人間の覚悟というようなものは、やはり年とともに、時代とともに、環境とともに変わっていってしまうものでありまして、だからこそ、無年金問題とかいうことを政府も気にされているということだと思うんです。
もし本当に覚悟のある方ばかりだったら、例えば、そういう方はもう絶対年金を払わない、支給しないというふうにして、ただ、さすがに長生きのリスクはあるので、例外的に九十歳以上になったら支給を始めるけれどもというような仕組みだってあり得なくはないと思うんですが、ただ、今の法体系、制度体系の中では、やはりこれはあり得ないんですね。
なぜかというと、これはちょっと自分なりに考えてみたんですが、やはり、さっき言いましたように、賦課方式なんですよ。俺はもう将来要らないから年金なんか払わないと宣言する人たちがたくさん出てきちゃって徴収できなくなっちゃったら、今の年金の受給者がまず即座に困ってしまう、こういう問題があります。
それから、基礎年金にも半分税金が入っていますから、保険料を払わなかったことをもって、だから年金を全部支給しないよというのもバランスとしてよくないのかなという感じもあります。
それからもう一つは、実際、無年金、低年金で生活保護になってしまう方が、先ほどの議論の中では、八割以上そういう方だという話もありましたように、何だかんだ言って、最後は結局、政府が生活保護という形でそういう方の生活を保障しなきゃいけない、こういう義務がある以上は、余り、若いうちに俺は年金なんか要らないと言った方の言葉を真に受けて、では結構ですというふうには踏み切れないということで、結局、自己責任方式も貫徹できない。
だけれども、保険という建前を維持しているから税金ほどは強制できないというのは、今の方式だからなのであって、自己責任を完全に貫徹するには、いわゆる積立方式に移行するということしかないのかなというふうに思い至ったりもします。
そういう意味で、そういう大きな議論をし始めると収拾がつかないんですが、田村大臣に、やはり、いろいろと入り口を広げて、できるだけ払いやすいようにという仕組みを今回導入するわけですが、その分、いろいろなモラルハザード、副作用が起こります。
この際、徴収に関しては、もっと税方式に近いような、もっと強制力のある、義務規定がそもそも法律上あるわけですから、その義務を担保するだけの、厳しい取り立てと言ったらあれですが、こういう仕組みである以上はちゃんと取り立てて、税と同じように、これは歳入庁の議論もあります、そういうところにも視野を広げて、きちんとした財源を確保して年金財政も安定させる、こういった考え方についてどのように思われているか、御見解をお願いいたします。
○田村国務大臣 委員がおっしゃられましたとおり、これは保険料を納めて初めて給付につながるわけでありますから、そういう意味では、確かに税とは若干違うところがあるわけであります。ただ、納付は義務でありますので、それは、自主納付とはいいながら義務でありますから、払っていただくという意味では、強制徴収という制度はあるわけであります。
でありますから、納付督励を行う、今回、これは市場化テストをいたしまして、民間にここをやっていただきながら、しっかり、これで浮いた人員と言ったら変でありますけれども、その方々に、強制徴収に向かって、最終催告状でありますとか、それから督促状でありますとか、場合によっては財産差し押さえという話になってくるわけでありまして、こちらの方をやっていただこうということで、所得がある方々で一定程度保険料を納めていない方にはそのような対応をしようと。これはかなり今回力を入れていく話であります。
しからば、全員やればいいじゃないかというお話なんですが、全員やれないことはないんですけれども、問題は、やはりそれだけの人員というもの、これはかなりの人員がいないとできないと思います。かなりの方々に対して対応する、これは多分歳入庁とかいうレベルじゃなくて、本当に、人を集めて、地域を、ぐるっとそういう方々を回って強制徴収までつなげていく。すぐにはできませんから。そういうことをやっていかなきゃならぬわけであります。
そう考えたときに、なかなか現実的には、今やっておるようなことをやりながら、やはり払ってもらうことが前提ですよ、そうじゃないと老後の生活に困りますよということを周知していく。また、今般のような、払えない方々に対しては、しっかりと、免除でありますとか、さらに申し上げれば、猶予というような形の中で、将来に向かって保険料を納めていただくチャンスを持っていただく等々をしながら納付につなげていくということが重要であろうということで、今般法律を出させていただいたということであります。
○重徳委員 また次回、引き続き議論させていただきます。よろしくお願いします。ありがとうございました。