H26.3.26 厚生労働委員会
「パートタイム労働者と通常の労働者の待遇について」
======○後藤委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦でございます。
きょうは、二つの法案がありますが、私は、短時間労働者の雇用管理、いわゆるパートタイム労働者に関する法案について質問をさせていただきたいと思います。
このパートタイムというのは、これはもう直観的にやはり女性が多いなということが、数字上のことを知ろうと知るまいと、女性の働き方だというイメージが世の中にも定着しているのではないかと考えております。
そういう中で、今、安倍総理、本当に熱心に女性の活躍する社会ということを訴えておられます。これは、別に安倍総理に言われるまでもなく、これまでも今の日本社会において極めて重要なテーマであったことは皆さんの総意だと思いますし、そのための環境が、そうは言ってもなかなか整ってこないという歴史を数十年にわたりまして続けているのが今の日本でありまして、女性にとっての環境というのはまだまだよくなっていない。
それから、私は、女性が活躍する社会というのは、もっともっと根本的な、本質的な労働市場の改革を行わない限り、これはいつになっても実現できないんじゃないかな、このように、決して悲観的というよりは、もっと大胆な改革が必要ではないか、こういう観点を持っております。
実際の人材としては、例えば新卒の大学や高校を出た若い子たちを見ると、これはもう人事の採用担当者だって、最近は女性の方が優秀だとかいうことを、半分冗談ぽく言っていますが、ほとんど本気じゃないかと思う、そういう言い方でされています。
にもかかわらず、実際には、きょうお手元に皆さんには資料をお配りしておりますが、一枚目にありますとおり、女性労働の質的変化ということで、これはちょっと書き足りないんですけれども、緑色の部分は管理職の方の数、右側の目盛りではかっていただけるんですけれども、この資料のような現状にあります。二〇〇一年から二〇一一年までの十年間において、女性の正規社員というのはそんなにふえてもいない、それから、非正規社員はふえている、そして、管理職に至ってはほとんど変わらないという状況でございます。
実際の女性の能力として人事担当者が感じている感覚とやはり実際の現場というのは、その認識と実態の間にこのような差があるのではないかと思いますが、政府としての認識をまずお尋ねしたいと思います。
○赤石大臣政務官 お答えいたします。
私も、会社で人事の採用を毎年百人以上やって決めて、大体六割ぐらい女性の採用をしてきたんですけれども、やはり、女性がまずやめるのは、結婚による退職で大半の人がやめてしまう。それで、残ってキャリアアップするというのはかなり難しいということだろう、それが第一義的に一番大きな要因ではないかなというふうに思っております。
そのまま、子育てが一段落した時点で、パート等の非正規雇用として再就職する女性は多くあります。このため、女性の雇用者数はふえているものの、正規の雇用者数は必ずしもふえていないということで、私の会社でも、一旦退職して、もう一回リカバーできるんですけれども、やはり働き方は、以前のような総合職でなくていい、現場の働き方でいいということで、なかなかキャリアアップにはつながっていないというのが現状だと思います。
一方でまた、女性の継続就業が困難であることもありまして、民間企業の課長級以上に占める女性割合は現在七・五%となっておりまして、長期的には増加してきているものの、改善のペースは緩やかとなっております。
女性の登用が進まない要因としては、もちろん、知識、経験、判断力の不足、こういったものとか、勤続年数が短いこと等が指摘されておりますけれども、女性の登用を初めとする女性の活躍を推進していくためには、まず、女性の継続就業に向け、働き方の見直しを含めた両立支援策を着実に推進するとともに、企業のポジティブアクションの取り組みをより一層推進し、女性の意欲と能力を育てていくことが必要であるというふうに思います。
私も、自分の経験から思いますと、やはり、女性のキャリアアップをするために、就業時間等の工夫も考えるとか、そういうことに対して国が助成するとか、そういう何かやはり政府としてもある程度の施策を講じないと、企業任せで全てそれを登用しろというのはなかなか難しいのではないかなというふうな印象を持っております。
○重徳委員 ありがとうございます。
恐らく、女性を大別すると、本当に男性と同じように、男並みに、場合によっては夜中まで働くとか朝方まで働くとか、体力の限りばりばりとやる、こういう方と、今おっしゃったように、どこかで、自分はもう限界というか、パートで働けばいい、男性と女性はやはり違うんだというようなところで割り切って働く。これは、いずれもどこかに問題はあるなというふうに思っております。
特に、今、赤石政務官、就業時間のこと、あるいは両立支援策といったことをおっしゃいましたけれども、やはり、これまでの日本の長時間労働という雇用慣行といいましょうか、そういったものが非常に大きいと思っております。
それで、日本人男子は何でそんなに長く働くのか、ちょっと考えてみましたけれども、やはり、会社のためであれば、どんな仕事だろうと、どれだけの長時間だろうと、あるいは、場合によってはどこに転勤させられようと、とにかく会社のために一生懸命やるんだ、それが正社員というものなんだ、自分が昇進するためにもそういう働き方をするしかないんだ、こういうマインドがあって、効率よくきょうもぱっぱと仕事を終えて、実績をちゃんと出してさっさと帰ろう、こういうマインドになかなか至っていない、こういうことだと思っております。
そうなると、女性は、いいか悪いかは別として、やはり家事があったり、夕方になると保育所に子供を迎えに行くのも女性の方がいまだに多いと思いますし、そういう意味で、ちゃっちゃかちゃっちゃか昼間に仕事をして、ある意味効率よく仕事もできて、でも、そのかわり五時になるとさっと帰ります、こういう女性が目の前にいたとしたら、やはり夜中まで一緒に働く男仲間の方が何か戦友のような感じがして、男の社会の仲間意識みたいなものもそういう中で自然に醸成されていってしまうのではないか。
まして、育児休業で何年間も職場を離れ、その間は男たちはみんな戦ってきたんだ。女も本当は戦いなんですけれども、育児も戦いの部分はあると思う、本当に大変なことでありますが、そういうことは会社の中ではなかなか理解されない。
こういう、なかなか、男性からすると受け入れづらいというような環境にさらされているのではないかというようなことを思うんです。
きょう、この後、職能給という言葉も少し定義した上で議論させていただきますが、要は、終身雇用の正社員を中心とする職場では、会社のために、とにかく忠誠心を尽くして一生懸命働く。一生懸命働くことはいいことなんですが、そうしているうちに、内輪意識というか男性同士の仲間意識が育って、その結果、女性の進出、活躍を阻害しているという面があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○赤石大臣政務官 委員御指摘のように、やはり、ある程度の年齢までいって結婚して子供を産んで、その次にまた職場復帰できる環境のよさを、これはイクメンも含めてこれからやっていくわけでありますけれども、そこがまず一つのポイントであるということ。それから、管理職に登用するためには、それなりの本人の、やはりキャリアアップする努力が必要なわけでありまして、そういうことに対する意欲をどのようにして持たせるか。
それでまた、会社でそういう能力給の仕組みを、今ほとんど、男女雇用均等法になってから、男も女も全部同じ条件にしているというところがありまして、それは、例えば管理職に登用するときに、男性は十年で係長になる、十五年で課長になるといったら、女性はそこのスタンスをもう少し弱くして、十五年で係長で、二十年で課長になるとか、そういう人事のマネジメントシステムを変えていくというのが会社にとっては必要なことで、また、それを支援するような施策を、政府としてやはりある程度援助していく。
そういうことでもない限り、なかなか、口では言えますけれども、私も会社の経営者をやっていて、実際につくった管理職は三人しかいませんでした、千人ぐらいのうちに。それでも、三人で、部長までいったのは一人しかおりませんでした。そのぐらい、やはり今の普通の企業の環境は厳しいものだろうと思うんです。
そういうことを企業だけに任せるのではなくて、政府として、これからもいろいろな施策を講じて、働きやすい環境、そして女性がキャリアアップできる環境を支援してまいりたい、このように思っております。
○重徳委員 少しかみ合っていないんですけれども。
つまり、組織を中心として働く、会社のために働く。これは役所でも一緒です。役所のために一生懸命働く。これは、これ自体を否定するものではないんですが、その結果として排他性のようなものが生まれがちなのが日本の職場ではないかということなんです。
私も総務省という役所で働いておりましたので、霞が関での経験からいうと、私は、前の民主党政権のときに、かなり外部から、例えば内閣府参与とかいろいろな形で登用された、その民主党政権に対して非常に期待もいたしましたし、なかなかうまくいっている部分といかなかった部分はありますけれども、やはり日本は、役所であろうと何だろうと、外からの人材に対する寛容性というか受け入れというものをもっとしていかなければ、組織としての強さがなくなってくるんじゃないかなと思っております。
官僚には官僚で、すごく組織立った強さもあるんですけれども、それでも、私の見る限りでは、内閣府参与の方何人かと仲よくさせていただいておりましたけれども、やはり全然役所の人間が言うことを聞かないんだということで、これは言うことを聞かせられなかった方も問題だったかもしれませんが、しかし、やはりそれを受け入れがたい、排他的である、これは間違いなくあると思うんですよ。これは、仕事の仕方が違うとか常識が違うとか。
だけれども、常識が違うとか言い始めたら、自分のところの会社で一生やっている人だけが同じ常識なのであって、やはり、いろいろなものをどんどんと受け入れながら、組織は、会社は変わっていかなければならない、役所も変わっていかなければならないと思っております。
そういう意味で、多様性とか、女性の場合でいうと、女性の視点をもっと企業にも導入するべきだとか、いろいろな言われ方をされますが、そういったところに対する寛容な姿勢が必要ではないかと思います。
さて、職能給と職務給という話題に行きたいと思うんです。
今申し上げましたような、終身雇用とか、一つの組織、会社に対する忠誠心を持ってずっと働くというのは、よく、職務に対する給料という言葉に対して、職能、能力を磨いていく、長期間にわたって一つの職場で磨くという意味で職能給と言われることがあるんですけれども、日本の仕組み、二十世紀、高度成長期の成功システムだと思いますが、職能給という形で、終身雇用を前提とした、正規社員が仕事をするというこの仕組み。
私がちょうどバブル崩壊のころに就職をした人間ですので、今四十代半ばより上の人たちは、もう当然の前提として、終身雇用だとか右肩上がりだとか、そして職能給を前提として仕事をし、今でもそういう前提で仕事をされていると思うんです。その一方で、四十代半ば以下の人たちは、前回の雇用保険法の改正でも問題提起がなされていた、いわゆる若者ということで、非正規雇用を長らくさまよっている方が多いということであります。
非正規社員は、言うまでもなく、今回の法改正によりまして少しでもその処遇をよくしていこうということではあると思いますが、一般的に言って、どれだけ年数を重ねてもなかなか賃金も上がっていかないとか、福利厚生とか教育訓練でも、いわゆるフリンジベネフィットというものは、総じて正規社員よりも劣るということですね。
最近、日本総研の山田久さんはこうおっしゃっています。問題は職能システムと職務システムの分離である、こうした日本型雇用システムの二重構造が賃金デフレの背景にあるとともに、ミスマッチを初めとした雇用問題を生み出すことになっていると言っております。
つまり、簡単に二分法で言ってしまうと、正社員というのは職能給。すなわち、主に男性が中心で、長期継続雇用、年功能力賃金、昇進昇給もある、ただし、仕事内容、労働時間、勤務地というのは選べない、これが職能給。それに対して、非正規社員は職務給と言われ、女性のパート、高齢者の再雇用、若者のアルバイトが中心で、有期雇用であり、昇進昇給は余りない、そのかわり、仕事内容、労働時間、勤務地を自分で決めることができるということであります。
これは明らかに、本当に古きよき、男性は仕事、女性は家事といったような、こういう家族モデルを想定していまして、完全に真っ二つですから、非常にイメージもしやすいと思うんですね。ですが、こういうシステムというのは、日本でも、もはやむしろ問題になっているわけでありまして、二十世紀の成功モデルなのであって、このシステム自体、そもそも世界の主流ではないのではないかと思います。
日本の場合は、今申し上げました、正社員は職能給、パート労働者は職務給という形なんですが、EU諸国では、どちらについても、正規も非正規も職務給と言われる。つまり、ずっと同じところで働いてステップアップをしていくんじゃなくて、自分でもっと仕事を選んで、その仕事に対する労働であり、その対価である賃金という仕組みが一般だと言われるんですが、そういうことだとして、その歴史的あるいは制度的な違い、日本とEU諸国の違いというものはどのように認識されていますでしょうか。
○石井政府参考人 大変大きな問題提起をいただいていると思います。
欧州諸国でございますが、職務概念が非常に明確でございまして、産業別労働協約がほぼ全ての労働者を網羅していて、職務と格付を媒介として賃金を企業横断的に比較することが容易という社会的な基盤ができていることから、そういう構造、基盤を背景として職務給が一般的になっているというふうに考えております。
それに対して、我が国でございますが、相対的に見て、やはり職務概念が希薄というのが一つ特徴だと思います。比較的限られた職務に従事することが多いパートさんにつきましては、職務給的な賃金決定が行われることが多い。その一方で、長期的な人材育成を前提として、職務を限定しない働き方、これはいろいろな変動に対して強い、強さを発揮する面があるわけでございますけれども、そうした正社員については、能力、責任や配置転換の範囲などさまざまな要素が考慮されて、賃金が決定されていることが多くなっているというふうに考えております。
○重徳委員 そもそも歴史といいましょうか、さまざまな積み重ねの上に今の労働市場があると思いますので、今の時点で比較をするとそういう違いがあるということだと思います。
一方で、今、日本におけますパート労働と通常の労働者といいましょうか、その比較をした場合に、やはり、職務給、職務に着目した仕事をしている人は、イメージどおりで、終身ではないし、仕事も比較的軽い方の仕事をしていることが多いとかいうこともあります。
一般的に言えば、そんなパートの労働者の方に対して、正社員と同等の教育訓練、教育投資を施すなどということは、なかなか会社の側としても考えられないというふうに考えますと、女性がなかなか正規社員として働けずにいるままの状態で、女性が活躍してほしい、活躍してほしいと言っても、企業がそれだけの期待をし、教育的な投資を行わないという状態で、活躍、活躍と言っても、これは夢のまた夢なのではないかと思います。
そこで、今回の法案にもあることをちょっと確認したいんです。
いわゆる正社員は、終身雇用だからこそ正社員なのでありまして、今回の法案で、通常の労働者と同視すべきパート労働者との間での差別的な取り扱いをしちゃいけないというふうにうたわれております。
これは、有期か無期かということの区別なくパート労働者を扱うという建前ではありますけれども、やはり、終身雇用でない以上、例えば年功的な賃金とか、あるいは昇進とか、そういうところで明らかに違うわけですから、同一労働同一賃金ということは、田村大臣はそういう言葉を大臣の言葉として言われたことがあるかどうかわかりませんけれども、そういう同一労働同一賃金を目指す法案ではあるものの、そこの差というものはどうしても出てきちゃうんじゃないか。
出てほしいわけじゃないんですけれども、今回の改正によってどこまでそれを封じることができるのか、差別的な取り扱いを。してはならないといったって、出てくるんじゃないかと思うんですが、どのように認識をされていますでしょうか。
○田村国務大臣 職務それから人材活用の仕組みが同じでないというか、それに均衡をしなきゃいけない、つまり、合理的に認められなければならないというような場合においては、これは、今言われたとおり、経験年数でありますとか、言うなれば年功的な部分の賃金の決め方等々を含めてでありますけれども、こういうものは、当然、職務給、職能給という言い方をすれば職務給でありますから、違ってくるわけであります。よく、ジョブ型、メンバーシップ型なんという言い方をしますけれども。
一方で、要は、職務それから人材活用の仕組み、これが同じであるということである場合のパートタイム労働者、もちろん時間はパートタイムでありますから、そういう部分はあるのでありましょうけれども、そういうものに関しては、当然これは均等ということになりますから、今言われたような経験年数等々に合わせた年功的な部分も同じように扱わなければならないというのがこの法律の原則であります。
ただ、さっき言いました人材活用の仕組みというものは、なかなか、いろいろな見方があるわけでありまして、パートタイム労働者の方々は、ある意味ワーク・ライフ・バランスというものを考えながら働かれるというものがあります。一方で、それこそ正規雇用的に、自分自身が会社に入っていろいろな使われ方を許容する方々にしてみれば、残業を突然言われても、それに対して、ある程度それに理解を示して働くということになれば、当然、そこは人材活用の仕組み等々の中において違いも出てくる部分もあるわけであります。
そういういろいろなところを勘案しながら、全く同じであるならば、今言われたように、もちろん時間は違いますよ、時間はフルタイムと短時間というところはありますけれども、しかし、時間に見合った中において同じように均等に扱っていかなければならないというのがこの法律の趣旨でございます。
○重徳委員 なかなか理解しづらい御答弁なんですけれども、職能と職務という概念が、前提が違っちゃっているものですから、幾ら同じような、均衡を考慮するとか差別的取り扱いをしてはならないといったって、前提がやはり違うものだから、何かお題目になってしまうような気がするんですよ。根本的に職能と職務で違うわけだから、どこかで違いますよね。違えば、それは不合理ではないよとか差別ではないよと幾らでも言えてしまうように思うんです。
通告では終わりの方で質問しようと思っていたんですが、今回の改正後の八条から十条のところ、なかなか難しいんですよ、読み方が。それから、言葉も少しずつ違っているんですよね。
八条は、パート労働者と通常の労働者の待遇について、「待遇の相違は、」云々かんぬん、「不合理と認められるものであってはならない。」といって、全体的に、パート労働者と通常の労働者の待遇について不合理と認められるものであってはならない、このように規定した上で、九条と十条で書き分けていますね。
九条は、通常の労働者と同視すべきパート労働者、これについては、「待遇について、差別的取扱いをしてはならない。」差別的取り扱いという言葉になっていますね。
それから、十条は、通常の労働者と同視すべきとは言えないパート労働者、つまり九条以外のパート労働者については、「通常の労働者との均衡を考慮しつつ、」何々を勘案し、賃金についてですけれども、「賃金を決定するように努めるものとする。」
努力義務になっている上に、先ほどからの不合理とか差別的という言葉に対しては、均衡を考慮しつつという言葉になっていて、この不合理という言葉と差別的取り扱いという言葉と均衡を考慮しなきゃならぬと、何か違いがよくわからないですよね。わからないというか、ぱっと見わからないんですけれども、政府の方では、役所の方ではどのようにこの条文を理解して説明をされるのでしょうか。
○石井政府参考人 お答え申し上げます。
まず、議員がまず最初にお取り上げになった新八条でございますが、これは短時間労働者の待遇の原則を示すものでございまして、全てのパートタイム労働者を対象としてお考えいただくものでございます。通常の労働者の待遇との相違については、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない、不合理のようなそういう決め方をしてはならないという考え方のもとで処遇などを決めてくださいという、まず、行為原則というんでしょうか、そういうものを定めているものでございます。
その原則を具体化して書き下しているのが新九条、十条でございまして、まず、新九条におきましては、通常の労働者と同視すべき短時間労働者、具体的には、職務の内容が同じ、人材活用の仕組みや運用が同じ、そういう短時間労働者については、その待遇について通常の労働者との間で違いを持たせてはならない、差別的取り扱いをしてはならない、一切の違いを持たせてはいけない、もちろん労働時間の長さに応じたものはあるわけでございますが、違いを持たせてはならないという意味での差別的取り扱いの禁止規定でございます。
さらに、通常の労働者、そこまで要件を絞った、対象がある程度限定をされたパートタイム労働者以外にも、それで終わりではなくて、通常の労働者と同視すべき短時間労働者以外の短時間労働者につきましても、これは通常の労働者と同視すべきというほどではないけれども、働きとか貢献を一定程度考慮して賃金を決定することが望ましいことから、これを努力義務として、新十条で規定をしているわけでございます。
この十条の対象とするケース、そういう意味では、対象を広げていますから相当さまざまであります。これは、事業主に対して行政指導にも入る、そういう規定でございますので、一律に賃金の決定をどのようにすべきと決めつけはなかなか難しいということもございまして、努力義務にとどめているものでございます。
これは、審議会での議論の中でそういうものが適当であるというふうにコンセンサスが得られて、そういう内容にさせていただいているものでございます。これは前回の改正のときに規定されているものでございます。
○重徳委員 ちょっと、必ずしもわかりやすくなかったんですが。
十条はまず努力義務なんですね。だから、言ってしまえば、守らなくてもいいと言ったらなんですけれども、守れなくても違法ではないという状況ですね。つまり、均衡を考慮したものとなっていなくても、努力義務だからいいだろうというところなんです。
しかし、そこに対しては、八条という全体の、不合理であってはならないという規定がかかっていまして、ここは努力義務じゃありませんから、だから、各論というか、非常にケース・バイ・ケースかもしれませんが、読み方としては、均衡を考慮したものになっていなくても、少なくとも不合理と認められるものであってはならないというふうに、そこで最低限制約がかかる、こういう読み方でよろしいですか。
○石井政府参考人 処遇の決定をしていただくときに、まさに職務の内容とか人材活用の仕組みとか、そういうものを一つ一つ勘案して定めていただく、そういう形でまず設定をしてくださいというのが八条でございます。
その上で、設定していただいたものに対して、バランスというものを加味して、ちゃんとその決定がなされているか、そこについて私ども行政指導には入る、その規定として置いているのが新十条になるわけでございます。
先ほど先生は、努力義務規定だから何もしなくてもよろしいとおっしゃったわけですが、実際そういうものではございませんで、やはりきちっと、どういう根拠でやっているのか、努力をして、それができない事情があるのかどうか、そこも、私ども、実際指導に入る際には見させていただくということになるものでございます。
○重徳委員 これをやっていてもなかなからちが明かないので、では、次に、やはり日本の場合は、ちょっとこれは言いにくいんですけれども、つまり、どこまでいっても正規労働者と非正規労働者は差が出てきてしまうんですね。
さっき大臣の御答弁の中でも、いや絶対一緒だということではなくて、やはりいろいろな違いが出てくることを容認するようなケースもあり得ると聞こえるような答弁をいただきましたが、だとすると、今、若者も女性も非正規の働き方をしている。その待遇が正規労働者よりも悪くても、それが不合理でさえなければ一応オーケーだというようなことだとすれば、やはり、翻って、非正規の方々は正規にしていくというのが本来の道であろうというふうに思うんです。
ところが、これはいろいろなところで指摘もあるんですが、ミドルクラスというか、もうちょっと言うと四十代半ば以上の方々ですね。その世代、昔のいい時代のシステムで採用されてきた、そして会社で活躍されている方々なんですけれども、やはり問題は、会社の経営状況だとか、あるいはその分野が少し変化していったとしても、その労働者を、当たり前ですけれども簡単に首は切れないわけですし、そもそもその会社が存続している限り永久にそこで働き続ける、その会社の質的な変化がどうなろうと。
そういう働き方を前提としているわけですから、どうしても、潰しのきく仕事に恵まれてきた人は、ではよその会社に転職しますというふうに、手に職を持っている人はいいかもしれないんですが、なかなかそういう方ばかりではありませんので。
ですから、会社としても、もちろんありがたいんですけれどもね。会社にとっては、忠誠心を持って、一生懸命、先ほど言いましたように、長時間労働だって何だってしてくれる、こういう労働者なわけですから、当然ながら大事にしなきゃいけない。だけれども、よその会社に転職するとかいうことは当然想定だにしないわけですから、キャリアチェンジのための機会だって与えられていないわけですし、そういう意味では、会社がどうなろうと、よっぽどのことがない限り、そういう中高年の労働者の方々を会社の中で抱えざるを得ない。しかも、給料は、一般的には非常に高い方々ですよね。そういう状況があります。
それがきょうお配りした二枚目の資料なんですけれども、国際比較をいたしますと、イギリスやドイツと比べますと、四十代、五十代の男性労働者の賃金は、相対的に高い水準になっております。それでも企業はこういう方々を、よくも悪くもですけれども、抱えていなければならないし、社員の方は当然それを期待する。よもや途中で首になったり、よそに行ってくれなんということは言われるはずがない、これだけ一生懸命やっているんだからというようなことだと思うんです。
このあたりの中高年の方々が、これは場合によってはですけれども、会社にとっては、経営に関して言えば余剰人員、言いたくはないですけれども余剰人員的な人材になってしまったり、あるいはミスマッチが生じていたり、こういうような状況、そういうケースもあると思いますが、大臣の問題意識をお願いいたします。
○田村国務大臣 その前に、先ほどのをもう一度だけ説明させてください、短目に。
要するに、職務が同じで人材活用の方法が同じならば、均等になるわけであります。パートタイム労働者で、仮に有期だといたしますけれども、そういう方々が人材活用の仕組みまで一緒ならば、それは同じように、年功がもし正規社員にあるならば、年功をつけなきゃいけないわけですね。全く一緒ではありません、違うのは時間だけですから。
ただ、先ほど言ったみたいに、こちらは残業を受けるのをある程度容認している。一方、パートタイム労働者は、私は、パートタイム労働というのは本来ワーク・ライフ・バランスを大切にしたいからやっているので、残業は勘弁してくださいというのは、これは人材活用の仕組みが、さっき言った二つ目が違うわけですから、均等待遇にならないわけでございますので、そこで違ってくることはあるということをお話しさせていただいたので、その場合は、パートタイム労働者と正規労働者が全く一緒じゃないという認識のもとで御理解をいただければありがたい、均等ではないということで御理解いただければありがたいということであります。
今のお話でございますが、確かに日本の国は、今まで長期雇用、そして、その間に人材育成、社内で人材育成する中において、雇用を守りながら会社でスキルアップして、そして職能を上げていって、ある程度の年齢になって退職される、こういうような状況であったわけであります。
今もそうかというと、なかなかそうではございませんでして、なかなか厳しい経済状況、また産業においても、いろいろな産業の中で、成熟産業、斜陽産業、いろいろなものがあります。すると、当然のごとくリストラということが起こるわけでございますから、必ずいられるわけではないわけであります。
ただ、その中においても、今もなお、例えば認定職業訓練、これは社内で働きながら受けるものでありますし、それから、キャリアアップ助成金でありますとかキャリア形成促進制度、こういうものを使いながら、社内でスキルアップをしていただいて働くということはあるわけであります。
一方で、もうそうではなくなってきたために、労働移動支援というようなことを昨今我々も力を入れてきているわけでありまして、失業後、失業期間が短い中において、次の産業、つまり成長産業の方にスキルを身につけていただきながら労働移動していただく、こういうことも含めて、現在いろいろと施策を講じてきておるという状況でございます。
○重徳委員 なかなかストレートにはお答えが来ないんですけれども。
やはり正規労働者の方々は、終身雇用は当然の前提ないし権利だという意識が非常に強いですので、それは別に悪いことではないんですけれども、でも、例えば労働組合も、これまでデフレ下において、賃金アップよりも、やはり何よりも雇用を守るんだということを最優先にしてきたわけであります。
それから、企業側だって、先ほど言いましたように、大切にしなきゃいけないことになっている、そういう位置づけの労働者ですから、どうしてもその人たちを全く働けない状態にはするわけにいかないという意味で、これはいろいろな見方があると思いますが、部門の統廃合とか、あるいは全く新しい分野に進出するとか、産業の再編、こういったことに対しても、消極的というか最小限にならざるを得ない。思い切った構造改革というものが、なかなか民間においても進まない。
政府においても、今、労働力の流動化に対して少しずつ踏み出してはいるとおっしゃいましたけれども、そうはいっても既存産業も大事だということで、政府は守りに入りがちだ。
しかし、そういうことをやっているから、やはり若者たちが非正規のままで、若者たちにしわ寄せが行き、また女性の活躍の場というものもふえてこない。やはり守るべきものを守るというのは、言い方としては大事なことなんですけれども、ただ、そうはいっても、新陳代謝といいましょうか、世の中全体がもっとアクティブに次の社会を目指して動いていかなきゃいけないときに、どうしてもそこは守りに入ってしまう、こういうことだと思います。
かといって、私は、流動性を高めて、何か時々浮かんでは消える首が切りやすくなる制度の提案みたいなものが出るたびに、やはりちょっと過激に、こんなの企業の論理じゃないかということにすぐ根負けして、労働者にとっても本来はハッピーなはずの話も、なかなか世の中が受け入れられないことがよくあるかと思います。
その意味で、私は、雇用保険制度の中でだけやる仕組みというようなことに対して、前回の法案のときにも批判をさせていただきましたけれども、やはり、もっと社会全体をキャリアアップ、そして流動化というものに労働者自身が前向きに考えられるような仕組みを、政府を挙げて、国を挙げて取り組むべきだと考えております。
ちょっと雇用保険の基金が何兆円あるから使っちゃえとかそういう話ではなくて、あるいは少子化対策にしたって、前回申し上げましたとおり、小出し小出しの話じゃなくて、非正規労働者の問題は若者の結婚を阻む要因にもなっておりますし、また、子供をたくさん産み育てることを阻むことにもなっておりますので、非常に重要なことだと思います。
その意味で、日本の産業構造の転換、そして非正規労働者がもっと夢を持って社会で仕事ができるようにするためにも、政府はもっともっと巨大なセーフティーネットといいましょうか、転職を促進するとか、企業の再編というものがしやすくするとか、こういう後押しをもっと国を挙げてやっていくんだ、こういうメッセージを出していかないと。
小出しでやるものだから、そんなんじゃ労働者が首を切られるだけでおしまいじゃないかと言われるのであって、そういうところを見るんじゃなくて、誰もがもっといい仕事の仕方ができるんだ、こういう大きな構想を持つべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。これまでこういうことをやっていましたということよりも、むしろ、こういう社会をつくるんだというような、大臣の大きな思いをお聞かせ願いたいんです。
○田村国務大臣 厚生労働大臣なものですから、産業再生とか再編だとかというのはなかなか言いづらい、それは担当の大臣にお聞きをいただいた方がいいのかもわかりませんが。
非正規がふえてきているという理由の一つには、委員が言われたみたいに、日本の終身雇用、年功制度みたいなものがあるのと同時に、やはりこの十数年間、もう二十年近くデフレーションという状況の中で、賃金が上がらない、いや上げられない、こういう環境があったことは事実であります。
転職する方々も、次に自分の待遇が悪くなったら、それは何とかこの会社でとしがみつくのは当たり前で、しかし、次に行ったところが今よりもいい待遇であるということがある程度予測できれば、それはそちらの方に移ろうかという気持ちにもなるわけであります。少なくとも、全ての企業、全ての産業とは言いませんけれども、全般的に見て、やはりここ十数年間、そういう環境ではなかったというのが実態であろうと思います。
そのために我々は、今現在、デフレをとにかく是正して、アベノミクスというもとにおいて、経済の活性化、もう一度成長を取り戻そう、賃金が上がる社会を取り戻そうということをいろいろと政策として打っておるわけでありまして、その中において、労働の移動を支援するというような施策を組んでいきたいと。
ですから、先ほど職能給という話と職務給という話が出ました。
例えば、柔軟に、社員という形態も多様な社員というようなものになってくれば、そこはまさに職務に着目した、そういう部分での評価を受ける社員が出てくる可能性もあるわけでありまして、そうすると、少しずつ今の職能という考え方から、同じ社員でも職務というものもふえてくるわけであります。
あわせて、評価の物差しをつくらなきゃいけませんから、そのような物差しづくり、職業能力評価制度みたいなものもしっかりつくっていく中において、それがあって初めて、職務給というものがある程度しっかりとした土台ができ上がってくるわけでありますから、厚生労働省という立場から、今言われた大きな流れの中で、資するような施策もしっかりと充実をさせてまいりたい、このように考えております。
○重徳委員 最後に、資料三枚目を皆様にお配りしておりますので、少しだけ御紹介させていただきたいと思うんです。
各国の社会保障構造の比較なんですが、ここで今の話の中に関連して言いますと、積極的労働政策という紫色の歳出が、やはり、右からスウェーデン、フランス、ドイツという国は、それなりの金額というか割合で、対GDP比で支出されているわけですね。こういうことによって、労働力が移動することがあってもちゃんと保障されるという、現役世代に対するセーフティーネットができているということだと思っております。
ついでに言いますと、一番上のグレーのところ、教育というところも日本は薄いですし、それから、黄色い、子育てというところもかなり薄いですね。
だから、現役世代や若い世代に対する投資というか支出、社会保障というものが、まだまだ欠けているんだと思っております。こういうところにもっと光を当てていかなければ、ひいては国の活力が損なわれて、お年寄りの年金とか社会保障に対しても影響が出てくるわけですから、そういった長期的視点、バランスを持って、これからの日本のデザインをぜひ田村大臣にリードしていっていただきたいというふうに私は思っておりますし、いろいろな提案をこれからもさせていただきますので、ぜひ真摯な御答弁をこれからもよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
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