H26.3.12 厚生労働委員会
「育児休業と教育訓練について」
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○後藤委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦です。きょうもどうぞよろしくお願いいたします。
今回の雇用保険法の改正法案でありますけれども、非常に重要なテーマの割には、雇用保険という枠組みにとらわれ過ぎて、大局を見失っているような、そんな改正内容になっているんじゃないかな、こういう印象を受けております。
特に、きょうは育児休業とそれから教育訓練について議論をさせていただきたいんですが、そもそも育児休業とは何のための制度かというようなところからだと思うんですね。
私は、今の日本の社会保障、それから今後の中長期的な国家の存立にかかわるのは、やはり少子化対策というのが極めて重要なテーマだと思っておりまして、ですから、今回の育休給付の議論の中で、少子化という観点が極めて薄いということが問題だと思っております。育休給付によって、あるいは育児休業によって、少子化がそう簡単にほいほいと解消されるわけではないということはもちろんなんですが、非常に重要なパーツではあると思っております。
そういう意味で、今回は、趣旨の御説明としては、育休の取得率を、特に男性の取得率を上げていくためにも、給付金の割り増しを、これまでの五〇%から六七%に引き上げるということで、前進だというようなことだと思うんですが、やはりその趣旨が、あるいは目標、効果が曖昧でありますし、これまで、もともと二五%から始まったんだ、そこが四〇%、五〇%、そして今度は六七%、どんどん上げているというような経緯は、それはそれでわかるんですが、これは根本的な話をしますと、今、一般的に、男性の賃金と女性の賃金、全体の所得は、統計によるかもしれませんけれども、女性が男性の六割ぐらいとかいうような数字もあるんじゃないかと思うんです。
そういうふうに差がある限りは、その部分、何%か分の給付が出るというような制度である限り、やはり、経済的な合理性だけを考えれば、女性が休んだ方が得じゃないかというような話になると思うんです。
ですから、この際、思い切って一〇〇%まで上げるとか、そういう議論までした上で、だけれどもということならわかるんですが、やはり小出し小出しにしている、段階的、段階的にやっている、こういうことだと思いますし、それから、今回の制度設計としても、妻が六カ月休んで、そして夫も六カ月、これはおもしろい制度だとは思うんですけれども、ただ、こういうのが育児休業のとり方として理想的なんだ、半分半分が理想的なんだということを、何か非常に誘導的な制度になっていると思います。そういう意味では、やれる範囲でやれることをやっているというふうにしか見受けられないんです。
このあたり、こんなことではなかなか、男性の育児休業取得率を高めるんだ高めるんだといっても、まあ、ゆっくりゆっくりとというような印象を受けているんですが、まず、その点につきまして大臣の御認識をお願いいたします。
○田村国務大臣 今回の雇用保険法の改正の中において、育児休業給付を五〇%から六七%に引き上げる。これは非課税でございますし、社会保険料が免除でございますので、所得でいうと八〇%ぐらいになるということでございますから、一〇〇%まではいきませんけれども、五〇%のころから比べると、かなり所得においては維持がされるという形であります。
半分半分という話で半年半年、それを誘導しているわけじゃありませんが、これは、一〇〇%にいたしましても、いや、六七%を一年間、どちらか片方がとってもとれるようにすればいいじゃないか、いろいろな御議論があるんだと思いますが、そもそも雇用保険でございますので、そういう意味では、国費で入っておるよりかは、労使の保険料でやられる部分の方が多いわけであります。でありますから、労働政策審議会の中において御議論をいただいた、いただく中において、ここら辺が一つの考え方だねというような一致点を見ていただいて、今般法律を出させていただいたわけであります。
もとより、これだけで子供がふえるという話ではないと思います。ただ、とりたい、そして企業も、とってもらっていいよというようなところに関しては、経済的な要因でとれないねと言われている方々からしてみれば、六七%、いろいろな非課税や免除を入れれば八割だから、とれるかな、とってもいいかなというインセンティブは働く話であります。
そもそも、育児休業自体を余り推奨していただかない、そういう会社ではとれないわけでありますし、先ほども申し上げましたけれども、男性のみならず、女性は常勤で大体八割以上、有期雇用の方々でも七一%ぐらいとっておられるという話ですが、そもそも、第一子が生まれたときに六割の方々が会社をやめられているわけでありますから、その残りの四割の中での八十何%という話でありますので、数字的には実際は低いわけです。
それはやはり企業がある程度御理解をいただかなきゃならないということでありまして、育児休業法の周知徹底もやらなきゃいけませんし、もちろん、パパ・ママ育休のみならず、短時間勤務、これを義務づけておりますから、こういうことも御理解をいただかなきゃいけない。両立支援という意味では、代替要員が要るのであるならば、それに対してのいろいろな助成、中小企業に対しては、一つモデルプランのようなものをつくって、助成もしながら支援をしていこうという形もあります。
いろいろな、両立支援でありますとか、またイクメンアワードで表彰したりでありますとか、あらゆることを我々今取り組んでおるわけでございまして、やはり世の中の意識が変わらないことには、なかなか子供を育てる環境というものは整備されてこないわけでありまして、そうならなければ、子供を産み育てようという思いはあってもなかなか実現できないわけでございますので、そのような環境をつくるために、これからもしっかりと取り組んでいくうちの一つということで、今回この六七%というものを提案させていただいたわけでありまして、御理解をいただければありがたいと思います。
○重徳委員 大臣から、雇用保険の枠組みの中での議論だと。ここにやはり限界があると思うんですね。
私は、少子化対策、もう誰が言うまでもなく、この国にとってこれが本当に重要な課題であって、ところが、今回、これは労政審の分科会のもとにあります雇用保険部会の報告書に基づいての法改正なわけなんですけれども、育児休業給付につきましては、育児休業を取得しやすくするとか、職業生活の円滑な継続を支援、促進する、あるいはワーク・ライフ・バランスの実現だ、だから男性も休業を取得するべきだというようなことでほとんど紙面を割かれていまして、ちょこっと、また、第二子以降の出生割合が高くなる傾向があるということが書き添えられていたりする、その程度なんですよね、少子化という位置づけが。
これは、少子化対策というのはそもそも雇用保険の制度の中でやるべきかどうかというところがあるから、こういう議論になるんだと思うんです。ですけれども、同じ報告書の中に、労働者代表委員と使用者代表委員も、この休業給付は、ひいては、ひいてはという言い方ではありますが、少子化対策にも資するものであることから、雇用保険財源によらず、本来は国の責任により一般会計で実施されるべきものである、こういう主張をされているんです。
もちろん、労使にとっては保険料率を下げるべきだということも含みの御意見だとは思いますけれども、やはり、もっと少子化対策というものをきちんと正面から捉えた上で、その対策の重要なパーツとしての育児休業である、こういう位置づけを、国家としてきちんと位置づけるべきだと私は思うんです。その意味で、育児休業給付の位置づけをもっと正面から少子化対策に置くべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○高鳥大臣政務官 重徳委員にお答えをいたします。
育児休業給付につきましては、労働者の育児休業中の所得を保障することにより、出産、育児のために失業することなく雇用を継続できるように設けられたものでありまして、委員御指摘のとおり、平成七年の創設当時は二五%の給付率でございました。
その後、少子化対策の必要性が高まってきたことを踏まえまして、四〇%、五〇%と累次の引き上げを行ってきたところでございます。
先ほど大臣もお答えをしたところでございますけれども、今回の改正につきましては、雇用保険制度の範囲において、最大限の少子化対策として実施をしようとするものでございます。
○重徳委員 雇用保険の範囲において最大限といっても、範囲の中で最大限やっても、全然、本来の最大限じゃないと思うんですね。だから、私はやはり、この国が、日本が、そして政府が、どこまで本気で少子化対策に取り組もうとしているのか、そして、この育児休業というのは一体その中でどの程度の位置づけになっているのか、こういうことをもっと真剣に取り組まないと、やれることをやれる範囲でと言っているだけでは、とても成果なんか望めないと思うんです。
男性の育児休業も、取得率を二〇二〇年までに一三%という目標を掲げていますが、だけれども、今二%弱で、この程度のことで本当に一三%を達成できると思われますか。
○田村国務大臣 まず、国が少子化対策、子育て対策、何もやっていないというわけではないわけでありまして、これはもう委員も御承知のとおり、消費税を上げるということを前提にしておりますけれども、七千億、さらにはあと残り三千億強、何とか一兆円確保する中で、子ども・子育て新制度、これを動かしていきたい。
この中には、保育所、待機児童の四十万人分の受け皿と、それから質の向上、こういうものも入っておりますし、保育所のみならず、小学校一年生の壁なんてよく言われておりますけれども、学童保育といいますか放課後児童クラブ、これの整備もしていかなければならないし、それから、病児、病後児の保育に対しても整備をしていかなきゃいけないし、いろいろなメニューをこの中に入れております。
これは、ただ単に保育所だけではなくて、子供を家で育てておられる親御さんに関しましても、つどいの広場やいろいろなところで、子育てに対するいろいろな支援をするようなメニューも入っておるわけであります。
一方で、この育児休業給付というのは、これは以前からある制度でありますし、雇用保険でもこれを応援していただきたい、つまり子育てをということでございまして、そのような思いの中において私が労働政策審議会の方に、いろいろな御意見はあったんですけれども、この給付の率も上げてくださいというお願いをさせていただきながら、今般、御理解をいただいて法整備をさせていただくわけでございますので、これだけに矮小化するつもりはありません。ほかにもいろいろなツールがある中において、育児休業給付というものも一つ大きなツールとして使っていきたいということでお願いをさせていただいたということであります。
男性の育児休業が本当に二〇二〇年に一三%までいくのか。今は一・八九で、前は二・六三だったんですけれども、下がったじゃないかという話なんですが、トレンドとしては、上がり下がりしながらちょっとずつ上がっていっておるというのが何年かのトレンドであるわけであります。確かに、非常に厳しいと思います。
ただ、これは育児休業給付をふやしただけではやれる話ではございませんので、先ほど来申し上げておりますとおり、企業がそういう意識を持っていただかないことには、今の男性社会、女性も指導的な立場で二〇二〇年に三割というような目標を我々掲げておりますけれども、それもなかなか今厳しい中において、我々、何とか実現に向かって動いておるわけでありまして、両方が相まちながら、実のところ、企業がそれぞれ意識を変えていただく、社会が意識を変えていただく中で実現できるわけでございます。
そのような意味も含めて、今般また、次世代育成法の延長、強化、これも今国会で出させていただいて、いろいろなものを総動員させていただきながら、何とか二〇二〇年、一三%という目標に向かって、我々、努力をしてまいりたいというふうに思っております。
○重徳委員 努力してまいりたいということで、でも、やはり目標は達成できなければ意味がないわけですので、だったら何のためにそういう目標にしたのかということが厳しく問われることだと思いますし、最終的には、厚労大臣を含む内閣の責任ということになってくると思います。ここは本当に重要なテーマですので、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。
それから、今大臣から、少子化、子育てについても雇用保険の世界でも応援してほしいという趣旨で、雇用保険部会の方で議論をいただいたというお話がありましたが、当の雇用保険部会で、育休給付について、いや、むしろ一般会計でやるべきだというようなことも言われているわけですから、一般会計でもというか、一般会計こそ支出をするべきだということを言われているわけですから、ここはやはり一般会計部分についても真剣に受けとめて努力する必要があると思います。
そういう中で、実は地方自治体の取り組みがございます。
委員の皆さんのお手元に配付をさせていただいておりますが、埼玉県の北本市という七万人弱ぐらいの市なんですが、そこにおきまして、育児休業給付を国分と市の助成を合わせて一〇〇%に引き上げる、こういう案を検討したところ、結局は議会によって予算が削除された、つまり、事実上の否決ということでございます。つまり、国がこれまで五〇%、これからは六七%になったとしたら、その一〇〇%の差額分は市が税金で補填をしますよ、こういう仕組みを提案したわけですが、理解が得られなかった。
この資料でいうと、下の方に、予算の削除をした側の委員からは、自営業や非正規で働く人も多く、雇用保険に入れない人にも配慮すべきだ、こういう反対意見が相次いだ。もちろん、専業主婦の方にも適用されませんし、そういう不公平感がどうしてもある。だから、そこに対して、これはむしろ逆の話なんですけれども、雇用保険じゃなくて税金をつぎ込むことが不公平になるんじゃないか、こういうロジックですね。
つまり、今の、現行の育児休業そして育児休業給付は、いずれにしても、政策的に万全になっていないということだと思うんですね。それはやはり雇用保険の適用になる範囲内で、さっき政務官がおっしゃった、やれる範囲で最大限やっているからということなんです。だから、一般会計から投入することになれば、あらゆる人たちが育児休業給付の対象になっていくということになると思うんです。
そういう意味で、これはちょっと逆からの御説明を求めますが、今回、スタートからいくと二五%だったものをどんどんどんどん雇用保険の世界で六七%まで引き上げた、これを一〇〇までいこうとすると、北本市のような、全ての人に行き渡らないじゃないかという反論が出てくる可能性すらあると思うんですけれども、どういうロジックでこれは引き上げていることになるんでしょうか。質問の意味、わかりますか。
○岡崎政府参考人 先生の御指摘を正確に捉えたかどうかはあれなんですが、今回、六七%にしますのは、やはり育児休業をとる場合の経済的な面での、とれない理由というところをどうやって埋めていくかということの中で、現在、二割ぐらいの方が経済面の不安があるから育児休業をとらない、したがいまして、その場合に、今の五〇%をもう少し引き上げるべきだろうと。
そして、何%にするかということで、またこれは先生から御指摘ありました雇用保険の制度の枠内ということになってしまうんですが、雇用保険の、ほかの基本手当等とのかかわりの中でも整理しなきゃいけない。それからもう一つは、雇用保険の手当につきましては非課税である、あるいは育児休業期間中は社会保険料が免除になっている。そういう全体を総合的に判断しまして、今回は六七%にしたということであります。
これは、育児休業制度ができた際に、どういう形で経済的な支援をするかということで、財源論、いろいろある中で、雇用保険制度の中で給付制度をつくろうということになったわけでありますので、どうしても雇用保険制度の中でどうするかという議論にならざるを得ないという、限界と言われればそうですが、そういう議論をしてきているということでございます。
○重徳委員 これは、きょう、これまでも、そして恐らくここからも、一貫して、雇用保険の制度の範囲内でというところに限界がある、そういう御答弁が続くものと思います。
それは、現状の雇用保険制度の中をいじるんだからそれでいいんだという範囲でしか議論しないのであれば、それで終わるのかもしれませんが、問題はもっと大きなテーマなんだということから、一般会計という議論を先ほどからさせていただいているわけです。
今回の雇用保険法の改正案、何か目標が非常にぼんやりしているというのを申し上げ続けているわけなんですが、私は、日本の少子化対策については、やはり明確な目標がないと思うんですね。下がれば下がった、上がったらちょびっと上がった、だけれども、それは単に女性の人口の数の増減によるものだとか、いろいろ、その時々で、結局、数値として、出生率の数値がどうなることが理想なのか、目標なのか、こういう国家的な目標が何ら示されていないので、何となく低いから残念だとか心配だ、少し上がってもまだまだ不十分だとか、そういう議論に終始するだけであります。
ここは一つ、我が国は、この少子化という問題によってこれから本当に苦しんでいく、いよいよ苦しむ時代に入っていくわけですから、これはいろいろな議論があるとは思いますが、国として、これからの出生率の目標を明確に打ち出していくべきではないかと私は思います。
もちろん、個人個人の、個人が産む産まない、そういう自由を制約するとか価値観だとか、あるいは出産が肉体的にできるできない、いろいろな問題があるとは思いますが、でも、やはり国全体としては、子供がこのまま減っていくのをただただ指をくわえて眺めているだけでは、本当に国は滅びます。
ぜひとも、国として、そういう数値目標を持って、そしてその上で政策の効果を検証する、そういうPDCAサイクルが回るような、そういうものを日本の国として設けるべきではないかと思うんです。これは経団連の方からも以前このような議論がありまして、例えばということで、一・七五という数字を目標としてはどうか、こんなような提言が行われたことがあります。そうした数値目標を設けることにつきまして、どのような御所見でしょうか。
○田村国務大臣 よく出す数字で、二・〇八ぐらいですか、七、八ぐらいないと人口が維持できないという議論はさせていただくわけでありますが、明確に我が国がその数字を目指すだとか、二・五を目指すだとかということは我々は言わない。
なぜかといいますと、数字を言うこと自体、言っただけじゃ意味がないわけでありまして、言ったらそれを実現しなければならないわけですね、それに向かって、やれるかどうかは別にして。
では何をするかという話であって、漠然と保育所を整備しますだとか育児休業給付をふやしますだとか言ったところで、それがどう実績値に直接結びついていくかということは、それは我々も立てられないわけであります。
やるとするならば、かなり強制力のある何らかの方策を打って、その数字に向かっていかなければならない。例えば、子供の数が少なければ増税するみたいなですね。しかし、そんなことができるわけがないわけであって、子供の数を、子供を産むか産まないかというのは個人の自由、家庭の自由でありますから、それを束縛するような施策はなかなか自由主義の我が国では難しいわけであります。
あわせて申し上げれば、子供を何人つくってくださいというようなモデルをつくれば、それは逆に言ったら、子供をつくったときには、国として責任がありますから、社会で子供を育てるみたいな話になってくるわけでありまして、やはりそれもちょっと、現体制の我が国としてはとり得べき選択ではないわけであります。
あくまでも漠然とした目標数値を言うことはできないことはないと思いますが、それに対する何ら裏づけがないものでありますから、無責任な数字を申し上げるべきではないであろう。それよりかは、やはり、子供を産みたい、よく言いますけれども、理想の子供の数は何人ですかというようなアンケートをとりますが、それが実現できるような環境整備をしていくのが我々政府の責任であろうということでございますので、委員がおっしゃられるみたいに、目標を立てるということがなかなか我々としてはできづらいということで御理解をいただければありがたいと思います。
○重徳委員 平時であれば、二十世紀の、いつごろまでかわかりませんが、人口が伸び続けた時代ならばともかくとして、実はそのころからもう少子化の見通しも立っていたとは思うんですが、そして、この局面においてもまだ、どういうものを目指していろいろな施策が立てられているのかということなしに、何となしにいろいろな施策を打っては、効果が出ないな出ないなといって、そして年金にしろ何にしろ、先行きが不安だという状況を全く打開できない。それは目標を立てて達成できなかったら責任を問われるとか、そういうレベルの問題ではないと思うんですよ。
私、ちょっと税の話もさせていただきたいと思うんです。
今、大臣は、子供が少ない家庭は増税するということはあり得ないとおっしゃいましたが、しかしながら、家族の人数が多ければ事実上税負担を減らすというような制度につきましては、既に政府・与党などにおいて議論に着手をされている。これは報道ですので、これがどういうものなのかということをお尋ねしたいわけなんですけれども、委員の皆様のお手元にも配付をしております、これは三月六日の日経新聞に取り上げられました、所得税を世帯単位で、世帯課税をするという仕組みであります。
既にフランスなんかでは導入済みであるという仕組みなんですけれども、これは、大人は一人、子供は〇・五人とカウントします。ただし、第三子以降は子供も一人とカウントします。ですから、世帯の人数は、子供が多ければ多いほど多くカウントする。
その上で、例えば、夫、お父さんだけが働いていて、その課税所得が一千万円だったならば、現行、上限税率が三三%かかるということなんですけれども、それを家族の、今申し上げたようなやり方で、人数で割る。例えば、親二人子供二人の家庭ならば三というふうにカウントされますから、三で割る。三で割ると、一人当たり三百三十三万ということで、そこに適用される税率は当然低いわけですから、そっちの課税がされる、こういうような仕組みがあります。
ですから、この新聞に載っている例でいいますと、現行の仕組みだと税額は百八十万円ですが、親子四人であれば七十二万円になり、また、子供が三人、つまり五人家族だったら六十万円というふうに軽減されていく。
こんな仕組みがフランスではあるということでありまして、これについて検討が始まっているんでしょうか。ちょっと今どういう段階なのかわかりませんが、こんなふうな税制につきまして、厚労省としてどのようにお考えか、大臣はどうごらんになっているか、そういったことについて御答弁いただければと思います。
○田村国務大臣 N分N乗方式は、今までも自民党でもいろいろな議論があるわけでありますが、子供に限ったというよりかは、これは世帯で、所得とそれから人数に応じて、その分配みたいな形で所得税を払うという話でございます。子供にフォーカスしたというよりかは、世帯で見るという方式であろうというふうに認識いたしております。
ちょっと詳細は局長から。
○石井政府参考人 安倍政権の成長戦略であります日本再興戦略、これは二十五年六月十四日閣議決定でございますが、その中で、実は、女性の活躍推進の項目で、働き方の選択に対して中立的な税制、社会保障制度のあり方の検討を行うとされておりまして、まさに税制というのは検討を行うテーマとしてなっているわけでございます。
それで、この問題、これはもちろん財務省の方で中心的に議論されていると承知をいたしておりますが、所得税の課税単位をフランスのようなN分のN乗方式、こういった世帯単位に見直すということにつきましては、確かに、世帯の子供の数が多くなるほど所得税の負担が緩和されて、子育てに係る経済的負担を軽減させている、そういう意見がございます。ただ、その一方で、共働き世帯に比べて専業主婦、片稼ぎの世帯、とりわけ高額の場合に有利な仕組みになるということで、安倍政権で定めた成長戦略が目指す女性の活躍促進とはちょっと方向が違うといったような意見があるなど、さまざまな議論、言ってしまいますと、一長一短があるというのが現在の状況でございまして、議論の推移を見守っていきたいというのがスタンスでございます。
ただ、この目的というのが、すなわち、子育て世帯に対する負担軽減をどのような形で図っていくかということだと思いますので、こういう問題につきましては、厚生労働省では、子育て世帯の経済的負担の軽減の観点から、児童手当等の施策も実施しておりますし、実は、ヨーロッパ諸国で少子化対策でかなり先進国とされている国は、現金給付だけではなくて現物給付、これをバランスよく充実させているというお手本がございますので、そういうことを念頭に置きながら、それから、子ども・子育て支援新制度も制度の実施に向けて今一生懸命準備を進めておりますし、待機児童解消加速化プランも推進しておりますので、こういった施策に取り組んでいきたいというのが現在の立場でございます。
○重徳委員 一長一短という言葉に象徴されるように、それは議論していたら、いい面、悪い面もいろいろあって、なかなか前に進んでいかないんだと思います。ですから、今申し上げました数値目標のようなことも含めて、思い切った取り組みを政府が国を挙げてやっていくんだ、そういう姿勢をもっと示すべきだと私は思います。
少子化対策、少子化対策と言っていると、これは、いじめ対策、過疎対策、環境対策、耕作放棄地対策、まあ、対策、対策と言っていると、何か、ネガティブなところをどうやって抑えていこうかという程度にとどまるわけで、私は、子供を増やすと書いて、増子化を目指すんだ、増子化政策だと。こういう言葉一つでやはり全然、何とか対策じゃ元気も出ませんし、方向性が見えないと思うんですよ。だから、小出しに、段階的に少しずつ、ゆっくり、できる範囲でできることをという議論だと思うんです。
そういう意味で、本当に思い切った施策を、これは内閣府が中心にというのも私は気に入らないんですけれども、やはり厚生労働省こそいろいろな施策をほとんど握っているわけでありますので、厚生労働省がリーダーシップをとって、ほかの関係省庁はいろいろいると思いますけれども、そういうものをどんどん引っ張っていく、こういう迫力で増子化に取り組んでいただきたい。これはこういう意見にとどめたいと思います。
さて、次に、今回の法案の中にあります中長期的なキャリア形成支援措置について議論させていただきたいと思います。
二十年近く前ですが、私がアメリカに留学をさせていただいていたときにも、アメリカの社会は労働流動的な市場でありますし、自分がもっとステップアップしたいという人は、たとえ借金をしてでも、プロフェッショナルスクール、MBAとかを取ってさらにステップアップしていく、こういう社会が昔からあると思うんです。
今、日本もそんなような部分ももちろん少しはあるんですが、今の雇用対策でメーンになっているのは、むしろ、非正規雇用に図らずもなってしまった方々を本当は望んでいる正規に移していくとか、そういう意味でのキャリアアップというような意味合いでありまして、政府の救済というような面もあるように思います。だからこそ雇用保険の世界になるわけなんですけれども。
昔はもっと、企業に入ったら企業が育ててくれた、そういう時代があったと思います。このような変化、つまり、昔は企業が育ててくれたよね、でも、今はほっておかれて、しかも、非正規だから政府がいろいろなてこ入れをしてあげなければいけません。こういう時代の変化につきまして、いつ、どのように変化してきたと大臣は捉えておられますか。
○高鳥大臣政務官 お答えを申し上げます。
委員おっしゃるとおり、我が国におきましては、終身雇用や年功賃金といったような雇用、賃金の慣行を背景に、企業における教育訓練が重要な役割を果たしてきたと思います。
その後、私自身も民間企業で転職をした経験がございますが、特に九〇年代のバブル崩壊を経て、企業利益が低下をいたしまして、終身雇用の見直しや成果主義賃金の導入等、また、非正規雇用の増大などの環境の変化が生じてきたと認識いたしております。その結果といたしまして、企業における教育訓練費は低下、横ばい傾向にございます。
このため、個人主導の能力開発の重要性が一層高まっておりまして、今回の改正により、個人の中長期的なキャリア形成を支援してまいりたいと考えております。
○重徳委員 やはりバブル崩壊、つまり九〇年代前半ぐらい以降から世の中が変わったということでありまして、私もバブル崩壊のころの就職世代ですので。今四十三歳で、今、若者の非正規雇用労働者、若者というと四十五歳未満なんですけれども、五年前は四十歳未満、十年前は三十五歳未満で、私はいつまでたっても若者で、死ぬまで若者なんじゃないかという気もするんですけれども。
こういう、弱者救済と言うとちょっと言葉は悪いんですが、本来、やはり若者こそがこの社会を支えて、活性化させる役割があるにもかかわらず、何か就職氷河期以降の若者は、若者といったら弱い人たちであって、その人たちを一生懸命訓練させなきゃいけない、こういうような施策が横行していることも非常に残念な状況だと思います。ただ、現実は現実ですので、やらなければならないことはやらなきゃならない。
しかし一方で、今回の雇用保険法の改正は、労働政策的に、労働者の質をみずからの力も含めて高めていくということがあって、これはいわば必要条件で、やはり産業政策的な、企業側がより非正規から正規の枠をふやすというんですか、この辺は相乗効果だと思うんですけれども、質の高い労働者をふやすとともに、求人側も、よし、こういう人なら正規として雇おうじゃないか、こういう好循環が経済対策とあわせて生まれてくれば、そうすると初めて必要十分条件になっていくんだと思うんですが、なかなか今回も、これは仕方がないことかもしれませんが、雇用保険法の改正の中では必要条件の方しかちょっと見受けられないんです。
そういう中においても、私、今回少し注目しておりますのが、事前にいただいた資料によりますと、中長期的なキャリア形成に資する教育訓練の中身として、資格取得のための訓練、これはイメージしやすいです、これまでもあったものだと思いますが、もう一つ、企業等と連携した実践的なプログラムというものがあります。私、ここにはちょっと注目をしておりまして、一体どういうことをやるのかなと。
つまり、今私が申し上げました必要条件と十分条件でいうと、どうあれ、資格を取ったり、自分を磨くというのが必要条件だとした場合に、企業側がどういうふうに絡んでくるかというのが十分条件。つまり、受け皿たる、就職先である企業側がこのプログラムにかかわってくることによって、より今回の狙いの効果を発揮しやすくなるのではないかなどというようなことを少し期待しているところなんですが、この意味するところ、企業等と連携した実践的なプログラムは、どのように実施されるものなんでしょうか。
○岡崎政府参考人 今回の教育訓練給付で、一つは資格でありますが、もう一つは、今先生から御指摘がありましたように、企業と連携して大学院とか専門学校が開発するプログラム。これは、大学院とか専門学校におきますオフJT的な部分と、それから真に企業で何が必要とされているか、そこを連携して、企業での実習も含めてプログラムを開発する。
現にそういうことをやっている部分もありますし、文科省もこれを推進していくということになっておりますので、そういったものも、安定した仕事に役に立つものについては積極的に指定していきたい、こういうふうに考えているということでございます。
○重徳委員 ぜひ、やるべきことはどんどんやって、効果を上げていただきたいとは思うんですけれども、日本の社会も変化してきたとはいえ、今、企業がなかなか人材を、就職した後、企業の中で育てるという仕組みが、以前と比べて大幅にそういう仕組みがなくなってきている状況の中で、本来は、学校におけるキャリア教育というものこそ、もっと予算もかけて、制度としてももっと充実させるべきではないかと思います。これは別の機会に、文部科学省がメーンとなるお話かもしれないので、文科省とも議論をしてみたいとは思いますけれども。
特に、今回は、キャリアコンサルティングも受けられる仕組みになっています。つまり、これから将来性がある分野というのはどういう分野であって、あなたの適性からするとこういう教育訓練を受けるといいよというようなことを、キャリアコンサルティングをやってくれるわけですから。でも、これは、失業して初めて受けられるなんというのではなくて、本当は、これから初めて社会に出ようという若い学生さん、高校生、そういう人たちにこそ、もっときめ細かに、そして、インターンシップだとか、あるいは社会人の話を聞く機会とか、こういった機会をもっとふやすべきだと思います。
これは文科省の話ではありますが、ただ、連続した話だと思いますので、厚労省としての見解をお願いしたいと思います。
○高鳥大臣政務官 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、中長期的なキャリア形成を支援するに当たり、社会に出る前段階である学校におけるキャリア教育も重要であると考えております。
委員よく御理解をされていると思いますけれども、厚生労働省におきましても、キャリア教育をサポートする専門人材でございますキャリアコンサルタントの養成を行っております。また、職業情報の提供や、職業適性検査、ジョブカード等の活用を進めるなど、キャリア形成に資するようなキャリア教育の推進を進めているところでございます。
学校から社会、職業への移行が円滑に進むよう、学校段階からの支援に努めているところでございますが、一方で、現在、非正規雇用労働者である若者等が正規雇用へ転換できるよう支援を行うことも大変重要であることから、教育訓練給付の拡充により、非正規雇用労働者の中長期的なキャリア形成を推進してまいりたいと考えております。
○重徳委員 現状として、非正規を正規にということを願っている方々を少しでも支えるという思いはわかるんですが、やはり、学校から初めて社会に出ていく人たちへの支援も、これ同様、あるいはそれ以上に大事な部分だと思います。
そうやって見ていくと、また雇用保険の制度の枠組みの話になっちゃうんですが、教育訓練を受けた後、追加給付として、就職を条件として訓練費用の二〇%を追加支給などというのがございます。
勤労というのは、権利でもありますけれども、これは憲法上の義務ですから、それに、当然、みんな仕事をしたい、働きたい、稼ぎたいと思っているわけですので、そこにあめ玉のような措置をするというのは、何か仕組みとして違和感を感じますね。
これも雇用保険の制度の枠組みだからということで、御答弁は何となく予想はつくんですが、このあたり、公式にはどのように御説明されるんでしょうか。
○岡崎政府参考人 基本的には雇用保険制度で考えたということはございますが、その際に、四割足す二割にしてあります。最初から六割にするかどうかという話もあったわけでございますが、やはりきちっと就職に結びつけていくということも制度上組み込む必要があるだろうということでございまして、したがいまして、原則四割にして、ちゃんと資格を取って、それで就職に結びついたり、仕事を続けていたりという場合に、プラスでインセンティブを与える。
したがいまして、そういう受ける中身がきちっと就職に結びついていくということを担保するという意味も含めて、こういう制度になっているということでございます。
○重徳委員 最後に、今の話も含めて一貫する話なんですが、恐らくこれは、一般会計で教育訓練、キャリア形成の訓練を受ける機会を提供したならば、就職したら何割かお金を積み増しますよなんということはしないと思うんですよ。つまり、きょうは、少子化の話から今の教育訓練の話まで一貫して言えるのは、やはり、雇用保険の制度の枠組みの中できょうの非常に重要なテーマに取り組もうと思っても、非常に限界があると思っております。
そして、きょう午前中から議論がありますように、そうはいっても、基金が六兆円積んである、これをどうしても使わなきゃいけないかのようなところから議論がスタートするとすれば、今回の、雇用保険の中からお金をもともと出してくれないかというところから議論がスタートしてしまうと思うんですが、一般会計からもっと支出するべきではないか。きょうの議論の中で申し上げましたことにつきまして、最後に田村大臣から御見解をいただければと思います。
○田村国務大臣 先ほど、残っている分を再就職手当みたいな形で出すのはいかがみたいな話がありました。これは言われるとおり、雇用保険でありますから、自分らが払っている保険料なので、そういうようなことを、一つ考え方として成り立つのであろうというふうに思います。
一般会計でやるべきかというのは、一般会計でやっている部分は少ないのではないかという話がありますが、雇用保険二事業も含めて、こういう制度があるから比較的フレキシブルに、何かあったときには対応できるということも事実でございますし、もちろん、六兆円の積立金があるからやっているわけではなくて、それが必要であるからこれをやろうということであるわけでございまして、なければできないのは事実でありますけれども、決して無駄なことをやっているというわけではございませんので、そこはどうか御理解をいただきますようにお願いをいたしたいと思います。
○重徳委員 これで終わります。ありがとうございました。
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